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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第31話『七不思議?:小休止と大富豪』

 夕焼けが、部室の窓をほんのりオレンジ色に染めていた。


 テーブルの上には、よれたトランプの束と飲みかけの紅茶。

 久しぶりの平和な時間に、俺達はそれぞれの席で少し気を抜いていた。


「はいっ、革命っ!」


 愛菜がニッと笑ってカードを場に叩きつける。


「マジかよ……また革命?」


 俺の手札は、強かったはずなのに一気にゴミクズと化した。


「ふふん、ボクの読みは完璧だったね〜」


 愛菜が得意げに胸を張ると、肩に乗ったノクスがしっぽで俺の方をピシリと叩く。


 ノクスが勝ち誇ったように愛菜の肩に乗る。

 俺はその尻尾をじと目で睨んだ。


「……なあノクス、お前、今どっち応援してんだよ……」


 ノクスは「にゃう」と一言だけ鳴くと、満足げに目を細めた。

 意味は分からない。でも、その態度で大体察する。


「こういうの、久しぶりだね」


 結先輩が紅茶を口に運びながら、ぽつりと呟いた。


「七不思議の調査でバタバタしてばっかだったから……なんか、こういう静かな時間が変に落ち着かないっていうか」


「確かに。毎回事件じみてるから、ボクもう体力ないよ……」


「にゃう(おまえ、遊んでただけだろ)」


 ノクスがすぐにツッコミを入れるが、もちろんそれを聞き取れるのは愛菜だけ。

 愛菜はむっとして肩をすくめた。


「ノクス!ボク頑張ったんだよ!走ったりとか!」


 笑い声がこぼれて、部室にぬるい安心感が広がる。


 けれど、その空気は次の言葉で少しだけ変わった。


「そういえば……次が、七つ目だったよな?」


 俺の言葉に、二人が静かに頷く。


「“花子さんの集会場”よ。場所は旧校舎の女子トイレ」


 結先輩が取り出したメモ帳には、これまで調査した七不思議のリストが整然と並んでいた。


「花子さんって……あの、“3番目のトイレに”って奴か?」


「そうなんだけど、ちょっと違う。集会場って呼ばれてるのは、複数の“花子さん”が集まるからなの」


「複数……?」


「夜になると、誰もいないはずの個室から笑い声が聞こえたり、鏡に別の誰かが映ったり。人によって体験談が違うけど、どれも“一人”じゃないって言うのよ」


「にゃう(妙だな……)」


 ノクスがぽつりと呟くと、愛菜が一瞬だけ表情をこわばらせる。


「どうした?」


「ううん、なんでもない。……でも、気をつけた方が良いかも。今までの七不思議とはちょっと……違う感じがする」


「違うって?」


「理由はわかんない。でも、こう……空気が変わってるっていうか」


「……まぁ、最後だしな。何かあってもおかしくないか」


 俺は思わず腕を組んでマップを見た。

 赤ペンで印された七つの×印。

 全て、今まで調査した場所と一致している。

 そしてそれを囲むように、中心にぽっかりと空白があった。


「ここって、何かあるのか?」


 ぼんやりとそう呟くと、ノクスが前足で中央をちょんと叩いた。


「にゃう(行き着く場所だ)」


 それが何を意味するのかはわからない。

 でも、妙な既視感だけが胸に残った。


「ま、考えすぎだよな。まずは七つ目を片付けてからだ」


 俺はそう言って、片付けられたトランプを箱にしまった。


「気を引き締めて、いこう」


 結先輩も紅茶を飲み干して立ち上がる。


 愛菜も、少しだけ緊張した顔で頷いた。


「ね、しゅーくん」


「ん?」


「……なんか、全部終わった後って、何か変わってそうだよね」


「……かもな」


 ただの怪談。でも、どこか違う。

 そんな曖昧な不安を残したまま、俺達は次の七不思議へ向かう事にした。

 次回予告


 第32話『七不思議⑦:花子さんの集会場』


 旧校舎の奥、使われなくなった女子トイレ。

夜な夜な、誰かの笑い声が聞こえるという。

一人じゃない足音。映るはずのない姿。

七つ目の不思議が、静かに扉を開く――。


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