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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第27話『七不思議⑤:体育館に鳴り響く笛の音(前編)』

 夕暮れの大学構内に、乾いた笛の音が響いた。


 “ピー”


 それは、確かに誰かが吹いたような、はっきりとした音だった。


「……今の、聞こえた?」


 俺がそう呟くと、隣で愛菜が小さく跳ねる。


「や、やっぱり!? ボクの空耳じゃなかったんだ……! 絶対誰か吹いてたよ、しゅーくん!」


 彼女のリュックがもぞもぞと動き、中からノクスの声が漏れた。


「にゃう(悪霊の呼び声だ。音で引き寄せてる)」


 視線を音の方へ向けると、夕暮れに沈んだ体育館の姿があった。

 古びた屋根に覆われたその建物は、周囲と違う時間を生きているような不気味さを漂わせていた。


「結先輩まだ来てないよね? まさか、先に突っ込んだとか……」


「や、やめて! それ死亡フラグってやつだよぉ!」


 俺はポケットからスマホを取り出し、あらかじめ保存しておいた七不思議マップを開いた。


 画面の中。

 大学構内の簡易地図には、いくつかのマークが記されている。


 ――その内の一つ、体育館の中央に真っ赤な✕印が刻まれていた。

 今回で五か所目になる。


「……わかりやすっ。ホラー映画だったら真っ先に避けるべきポイントだな、ここ」


 画面をスクロールしながら、七不思議の記述を読む。


 『誰もいないはずの体育館で、放課後になると笛の音が響く。音に誘われて入った者は、“コーチ”に選ばれ、最後の練習を繰り返す事になる』


「……“最後の練習”ってなんだよ。定年後か?」


「しゅーくん、そういうボケいらないからね!? 空元気だよね!? ボク知ってるよ!?」


「にゃう(コーチに選ばれるってのが、すでにフラグだな)」


 ノクスがリュックの口からひょこっと顔を出す。


「にゃう(音に反応した者の中から、霊が“適応者”を選ぶ。そして、“練習”を始める)」


「選ばれたら……どうなるの?」


「にゃう(終わるまで、出られない)」


 愛菜がガクガクと震えた。


「ううう、帰ろう!? 今からでも間に合うって! ね、しゅーくん、ラーメン食べに行こっ!」


「いや、先に終わらせてからにしよう。あとで怒鳴られるの嫌だからな」


「誰に怒鳴られるの!?」


「……たぶん、幽霊部長」


 ふと見ると、体育館の扉が半開きになっていた。

 鍵はかかっていない。

 誘われているようにさえ思える。


「行くぞ。選ばれたら選ばれたで、煽って帰ってくるだけだ」


「そんなノリで行かないでえええええ!!」


 愛菜が泣きそうな顔でついてくる。

 ノクスはしっぽを立て、すでに戦闘態勢だ。


 体育館の中に入ると、冷たい空気が肌を撫でた。

 広いコートには誰の姿もない。


 ――と、思ったその時。


 “ピー”


 もう一度、あの音が鳴った。


 それと同時に、体育館中央に、白いジャージ姿の“何か”が立っていた。


 まっすぐに前を向いたまま動かないその背中は、まるで生徒達を待つ“コーチ”のようだった。


「にゃう(始まったぞ。あれがコーチだ)」


 笛を口に咥えるように、顔の中央には黒い穴が空いていた。

 目鼻のない顔。

 そこに“音を出すための器官”だけが存在していた。


「……ホイッスルヘッドかよ。なかなかセンスないか?」


「しゅーくん、今そんな事言ってる場合じゃないからあああ!」


「にゃう(ルールに従え。従わなければ、怒るぞ)」


 体育館の扉がバン!と閉じた。


「うわああああ!? 閉じ込められたああああ!」


「ふふっ……練習開始の時間か。体育の成績、2だった男の本気を見せてやる」


 俺はジャージのポケットから、シャトルランのテスト表を取り出す。


「今日の俺は、全力でサボるぜ」


 次回予告


 第28話『七不思議⑤:体育館に鳴り響く笛の音(後編)』


 招かれざる“選手”となった修達に課せられた、終わらない練習。

鳴り響く笛の音、立ち尽くす“コーチ”、動き出す亡霊の部員達。

最後の一人を求める声が、静かに忍び寄る――。

これは逃げられない授業。出席すれば、最期まで。


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