第24話『七不思議④:消えた図書室の椅子』
大学の図書室は、昼間は学生達の静かなざわめきに包まれている。
けれど、夜の図書室はまるで別の世界のように、ひっそりとした空気が満ちていた。
俺達は地図に示された四つ目の「×」の場所――図書室にやってきていた。
「……ここが次の不思議の現場か」
結先輩が重い扉をゆっくり開ける。
半分だけ灯る照明が、薄暗い室内をぼんやりと照らしている。
静けさの中、紙のページをめくるかすかな音だけが響いていた。
「ここで椅子が突然消えるって話なんだよな」
愛菜が小さな声でつぶやきながら、手元のメモ帳に書き込む。
「ボク、実際に椅子が消えるのを見たって人がいるって聞いた事があるんだ」
「椅子が消えたら、その場に座ってた人はどうなるんだろう?」
俺がそう言うと、結先輩は腕を組みながら天井を見上げた。
「それが一番気になる所よね。転んじゃうのか、それとも“どこかに椅子ごと連れて行かれる”のか」
ノクスは机の上を静かに歩き回りながら、辺りを警戒している。
「にゃう(静かすぎる。何かが待っている気配だ)」
俺達は椅子の周りをじっくり観察し、怪しい場所を探した。
けれど椅子はそこにあった。
古びてはいるけど、いつも通りの姿だった。
「まだ動き出してないみたい……」
愛菜が少しだけ肩をすくめて、小声で言った。
そんな時、背後からふっと冷たい風が吹き抜けた。
「……?」
俺達は一斉に振り返る。
すると、椅子の一脚が誰にも触れられていないのに、ゆっくりと床から浮かび上がっていた。
「えっ……?」
椅子はまるで見えない糸で操られているかのように、ふわりふわりと宙に漂い始めた。
「やっぱり……!」
結先輩が驚きの声を上げた。
椅子はゆっくりと図書室の奥の暗がりへ向かって進み、そのまま消えていった。
「座っていた学生は、椅子と一緒にどこかへ連れて行かれるのか……?」
俺は眉をひそめ、辺りを見回した。
「にゃう(見つかるとややこしくなる。さっさとここを離れようぜ)」
ノクスがぴりぴりとした緊張感を漂わせていた。
その時、図書室の隅からかすかな声が聞こえた。
「……助けて……」
だが、そこに人の姿はなかった。
俺達は顔を見合わせ、この七不思議の連鎖がどこまで続くのか、身震いしながら思った。
次回予告
第25話『七不思議④:消えた椅子の謎』
椅子と共に消えた学生はどこへ?
図書室の秘密が、少しずつ明らかになる。
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