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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜【累計10000PV達成!】  作者: 兎深みどり
第二章:七不思議編

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第21話『七不思議①:踊る階段』

 旧校舎の北端にある、螺旋状のコンクリート階段。

 俺達は、地図に記された最初の「×」印の場所に立っていた。


 午後三時五十五分。


 窓から差し込む光は弱く、廊下の空気はどこか重たい。


「……ここだな。“踊る階段”って奴」


 俺が呟くと、愛菜がさっとメモ帳を開く。


「午後四時になると階段が勝手に動き出す!上っても下っても、元の場所に戻ってくるってやつだね」


「にゃう(そんな造り、物理的におかしいだろ)」


 ノクスが階段を睨みながら、愛菜の肩で尻尾を揺らした。


「そんなの、本当にあり得るのかしら……?」


 結先輩が、階段を一歩離れて見上げる。

 段差は均一で、古い以外は特に変わった様子もない。


 それでも、どこか“見られている”ような感覚が離れない。


 俺達は階段の下段に腰を下ろし、時計の針が四時を指すのを待った。


 静けさが、不気味なくらい耳に染みる。


「……緊張してきたかも」


 結が小声でつぶやいた。


「にゃう(ビビるなら、今のうちに帰っとけよ)」


「……今、なんかノクスが悪口言ったような気がするのは私だけ?」


 結先輩がノクスに目を細める。


「にゃう(……感じる力、意外とあるのかもな)」


「ノクス。顔がもう悪さしてるよ」


 愛菜が苦笑して、ノクスの額を小突く。


 そんなやり取りも束の間だった。


 午後四時。時計の針が、真上を指した瞬間。


 コツ……コツ……


 誰もいないはずの階段下から、足音が響いた。


 乾いた、妙に軽い音。


 それは、誰かが階段を一段ずつ上ってくるような音だった。


「……!」


 俺は反射的に立ち上がる。


 階段の下に視線を向ける。

 だが、そこには何もいない。


 足音だけが、確かに響いていた。


「しゅーくん、今の……」


「聞こえた。来てる……」


 ノクスが、愛菜の肩の上で背を丸める。


「にゃう(視るな。姿を捉えたら、持っていかれる)」


 その言葉と同時に、ギィ……ッと一段が沈む音が響いた。


 目に見える異常はない。

 けれど、空間の“中身”がずれたような感覚が襲ってくる。


 そして、何かが俺のすぐ横を――通り過ぎた。


「っ……!」


 心臓が跳ねる。


 ポケットに手を突っ込む。


 ……ない。


 いつも持ち歩いていた、ばあちゃんからもらったお守りが、消えていた。


「っ、消えた……」


「え?」


「ばあちゃんのお守りが……どんな形だったかも、思い出せない」


「にゃう(“取られた”な。あいつはそういう仕組みなんだ)」


 何をどう説明すればいいかわからない。

 でも確かに、何かが俺の一部を“持っていった”。


 結先輩が不安そうに問いかける。


「雨城君……さっき、何が起きたんです?」


 俺は言葉に詰まる。


 説明出来るはずなのに、口にすると全部曖昧になりそうで――怖かった。


「……通り過ぎたんだ。何かが。“何か”ってしか言えないけど、間違いなくいた」


 愛菜がメモ帳をそっと閉じる。


「階段の音、確かに聞こえた。けど、何もいなかった……」


 静かに、階段が沈黙を取り戻していく。


 最初から、何もなかったかのように。


 けれど――俺達は、もう戻れない。


「結局、踊る階段とか、勝手に動くとか無かったな、人の噂なんてそんなもんなのかもな……期待してたのに!」


 残念過ぎる!


 本気で残念がる修をジト目で見る結と愛菜であった。


「にゃう(これで一つ目。次は……どこだ)」

 次回予告 


 第22話『七不思議②:深夜の放送室』


 深夜零時、校内に鳴るはずのない“放送”が流れる。

だがスピーカーから聞こえるのは、音ではなく――“声の気配”。

誰が、誰に向かって、何を伝えているのか?


 次なる印は、放送室に記されていた。


 誰もいないはずの階段に、聞こえる足音。

上っても、下っても、元の場所に戻ってくる――

それが最初の“噂”だった。


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