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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第17話『夜落ちの影(番外編)〜ノクスの一閃〜』

 深い夜の帳が町を包み込む。


 誰もいないはずの路地裏で、冷たい風が不気味にざわめいた。


 空気が重く淀み、視界の端が歪み始める。


 それはまるで、闇が生き物のように(うごめ)いているかのようだった。


 “夜落ち”――それはこの世界の理を破壊する異常現象。


 夜そのものが、塊となって空から落ちてくる。


 塊は見えない糸で引き裂かれるかのように、ゆっくりと確実に広がり、触れたものの存在を浸食していく。


 触れた者は輪郭を失い、やがて存在の記憶すらも消えてしまう。


 


 町の片隅にある廃屋。


 そこに差し込む月明かりは、どこかぼんやりと揺らめいていた。


 中に踏み込んだ足音はもう戻らない。


 “夜落ち”に捕まった者は、そこから姿を消す。


 誰かの叫び声が、深い闇の中でかすかに響いた。


 「助けて……誰か……」


 だがその声も、徐々に掻き消されていく。


 重苦しい闇は息を潜め、まるで次の獲物を狙うようにじっと待っている。


 


 “夜落ち”はただの闇ではない。


 それは忘れられた魂の怨念と、存在の断片が集まった化け物。


 怨嗟が渦巻き、時間と空間の境界を崩し、あらゆる生き物を呑み込もうとする。


 


 突然、空気が張り詰めた。


 黒い塊が地面に向かって落ち始める。


 闇が拡がり、世界の色が吸い取られていく。


 呼吸は重くなり、心臓の鼓動が耳をつんざく。


 すべてが消える――そんな絶望の瞬間。


 


 しかし、その時だった。


 鋭い影が夜の闇を切り裂く。


 ――「にゃう!」


 ノクスが闇の中から飛び出した。


 その瞳は漆黒の闇を貫き、爪は光の刃となって闇を斬り裂く。


 一閃。


 “夜落ち”の闇は切り裂かれ、怨念の叫びは断ち切られた。


 闇は粉々に砕け散り、世界は静けさを取り戻した。


 ノクスは静かに地面に降り立ち、深く息をついた。


 


 ――これで終わりだ。


 夜は再び、静かに、優しく降りてきた。


 次回予告


 第18話『夜明け』


 綾から「夜落ち」について衝撃の結果を聞く俺達。

普段の生活の中、静かに新たな物語が動き出す――。


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