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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第16話『記録された者』

 旧会室の祭壇に置かれた黒漆の箱を開けた瞬間、部屋の空気が凍りついた。


 冷気が肌を刺し、まるで夜そのものが降りてきたかのように、闇が周囲を満たしていく。


 綾が静かに告げた。


「“夜落ち”の本質は、空が崩れ落ちる事。天が沈み、世界の記憶が剥がれていく現象……」


 俺達の視界が歪み始める。


 光が薄れ、音が遠のく。


 そこにいるはずの存在が、輪郭を失い、まるで消えていくようだった。


「触れた者は、存在の輪郭を奪われ、肉体だけが残りながら意識は闇に閉じ込められる」


 愛菜がノクスを抱きしめ震える。


「そこは、死でもなく、消失でもない……終わらない闇の迷宮」


 部屋の奥から、無数の囁きが聞こえてくる。


 ――“オマエモ、オチルカ?”


 誰もいないはずの空間から、忘れられた声が挑発する。


 その声に理性は削られ、恐怖が心を蝕む。


 箱の中から浮かび上がったのは、怨念に満ちた朧げな影。


「私は、“夜落ち”に呑まれた者の一人。消えゆく存在の記録――忘れられた魂だ」


 影は訴えた。


「世界は崩れ、消え、忘れられる。連鎖する呪いを止める事はで出来ない。だが……記憶を繋ぐ者がいれば、わずかな希望が生まれる」


 俺は拳を握りしめた。


「俺達は逃げない。忘れられた者の声を聞き、記憶を繋ぎ止める」


 怨念の影が、一瞬だけ人間の形をとり、冷たい瞳で俺達を見据えた。


 そして消えた。


 部屋に戻った静寂は重く、しかしどこか温かさもあった。


 夜空を見上げると、満天の星が無数に輝いている。


「“夜落ち”は、恐怖と希望の狭間にある……」


 綾がつぶやいた。


 俺達は、終わりなき闇の中で、小さな光を守る覚悟を固めた。

 次回予告


 第17話『夜落ちの影(番外編)〜ノクスの一閃〜』


 消えゆく存在たちの声は、まだ完全には消えていない。

その囁きは、誰かの心の闇に静かに忍び寄る――。

夜の帳が下りた時、一匹の黒猫が空気読まずやってくる……


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