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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第15話『旧会室の封印』

 俺達は、綾に連れられ、大学の旧講義棟の奥深くへと足を踏み入れた。

 照明は落ち、薄暗い廊下に、時折どこかのパイプから響く水音が響く。


 そこは、かつてこの大学に存在した“旧オカルト会”の本拠地だったという。


「空気が……重い」


 結先輩がつぶやいた。

 まるで、ここだけ“過去”が生きているようだった。


 奥の一室に辿り着くと、分厚い木扉に、黒ずんだ和紙が何重にも貼られていた。

 その全てに、朱で同じ文字が書かれている。


「封」

「供養不備につき開帳厳禁」


「マジで……開けていいのかこれ」


 俺がそう言うと、綾は静かにうなずいた。


「“夜落ち”に呑まれた“記録された者”は、この奥に縛られています。……ここが、最後の供養地です」


 綾が一枚一枚、札を剥がしていく。

 その度に、空気が鋭くなる。

 まるで、目に見えない“何か”がこちらを睨んでいるようだった。


 扉がきしみを上げて開かれる。


 部屋の中央にあったのは、木製の低い祭壇。

 その上に置かれた、黒漆の箱――

 無数の封蝋と、古びた数珠、焦げかけた写経の断片に囲まれて、箱は鎮座していた。


「……あれが、“夜落ち”の痕跡?」


 愛菜が呆然と呟く。


「正確には、夜落ちに“触れた者”の記録の一部。……彼らの“存在の影”が、この箱の中に封じられています」


 綾がそう言った瞬間――

 箱が、“カタ……”と音を立てた。


 誰も触れていないのに、わずかに揺れたのだ。


 ノクスが毛を逆立てて唸った。


「にゃう……(しゅー、これ開けたら絶対後悔するぞ……!)」


「開けないって! 誰も開けるって言ってねえからな!」


 俺が本気で言い返すと、結先輩も真剣な顔で頷いた。


「……これは、魂の牢だわ。何かが……まだ、生きてる」


 綾が慎重に近づき、箱の前に跪いた。


「この箱は“観応位相供養”と呼ばれる封術で保たれています。ですが……今、内部から干渉が始まっている」


「……つまり、開くって事ですか?」


「はい。外部からの力がなくても、“中の者”が自力で戻ろうとしている」


 その時だった。

 部屋の空気がぐにゃりと歪む。


 誰も声を発していないのに、耳元で囁くような声がした。


 ――“みつけて”

 ――“わすれないで”

 ――“ここに……いる”


 愛菜が青ざめて、ノクスをぎゅっと抱きしめる。


「だめ……しゅーくん……誰かが、こっちに来ようとしてる……!」


 俺は足元を踏みしめて前に出る。


「……何が来ても、受け止めてやるよ。幽霊だろうが、夜だろうが」


 祭壇の上の箱が、もう一度揺れた。

 次回予告


 第16話『記録された者』


 封じられた箱の中に残されていたのは、夜に呑まれ、存在を消された“声”――。

それは怨念か、未練か、それともただの記録か。

だがひとつ確かなのは、

それが“何かを伝えようとしている”ということだった。


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

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