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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第14話『神代綾の秘密』

 翌日。


 俺達は大学図書館の一角、人気のない閲覧室に集まっていた。

 向かいに座る神代 綾は、昨日と同じ無表情のまま、静かに頭を下げる。


「昨日は……突然、失礼しました」


 彼女が差し出したのは、一冊の古びた手帳だった。くすんだ表紙に、手書きの文字が薄れて残っている。


《記録番号:T-13/観測対象“夜落ち(よおち)”》


「……なんですか、これ?」


 俺がそう尋ねると、綾は手帳を開き、淡々と口を開いた。


「これは、私が所属している“霊界観測機関”が数十年にわたって追っている異常現象の記録です。昨夜、皆さんが見たあの光……あれは、“夜落ち”の前兆です」


「“夜落ち”? 夜が……落ちるの?」


 愛菜がノクスを抱いたまま、小首をかしげる。


「文字通り、空から“夜”が落ちてくるとされる現象です。一時的に、空間全体が闇に包まれ、その中で“存在の記録”が失われる」


「存在の記録……?」


「消えるんです。痕跡ごと、まるごと」


 その場の空気が、一気に冷えた。


 結先輩が、静かに問いかける。


「……それが、最近の霊障や事故に関係していると?」


「はい。“夜落ち”の発生域では霊障が活性化し、記憶の混乱、視界の歪み、現実の再構成までが観測されています。私はその兆候を察知して、この大学に来ました」


 俺達は、無言で顔を見合わせた。


 ――やっぱり、ただ事じゃない。


「でも……それ、放っておいたら、私達も……消えちゃうの?」


 愛菜の声が、震える。


「可能性はあります。でも、対処法が存在します」


 そう言って綾が取り出したのは、一枚の紙片だった。

 見慣れた図柄が目に飛び込んでくる。


「これって……うちの部の古いエンブレム?」


「正確には、“旧オカルト会”のものです。数十年前、この大学にあった先代組織。あなた達は、その後継団体」


「つまり……俺達が、関係してるって事?」


「関係どころか、最も深く接続されています。“夜落ち”は、この地に何かを残している。貴方達の部室の、更に奥に」


 ノクスが、膝の上で低く唸る。


「にゃう(しゅー、これはガチでヤバいやつだぞ……)」


 ――まあ、ノクスの声が分かるのは、いつものように愛菜だけ。


 俺は深呼吸してから、椅子に背筋を伸ばした。


「……幽霊だろうが異常現象だろうが、上等だ。慣れてる。相手が誰でも、やる事は変わらない」


 綾がわずかに目を見開く。

 結先輩が、そんな俺を見て、小さく頷いた。

 愛菜も、ノクスの耳をくりくりしながら笑っている。


 そう。

俺達は逃げない。


 どんな異常でも、目を逸らさず、正面からぶつかる。

 この手で、真実を掴む為に。

 次回予告

 第15話『旧会室の封印』


 “夜落ち”の真実に迫る鍵は、大学の奥にある“旧オカルト会室”に眠っていた。

その封印が解かれる時、忘れ去られた記憶が呼び起こされる――。


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