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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第六章:妖魔界激震編
133/139

第133話『巫女の痕』

 放課後、オカルト研究同好会の部室。

 机の上には、図書館から借りてきた古社の記録が山のように積まれていた。


「……うぅ……全然読めない……」


 結先輩が古文書と格闘していた。

 毛筆で書かれたくずし字は、まるで暗号のように並んでいる。


「“神籬”……“楔”……えっと……これは……?」


「先輩。顔色悪いですよ。お茶どうぞ」


 修がそっと湯気の立つ湯のみを差し出した。

 結先輩は「ありがとう……」と受け取りつつも、視線を紙から外さない。

 その集中力に、修は少し呆れたように肩をすくめた。


「にゃーん(どう見ても解読じゃなくて、にらめっこだな)」


「ノクス、うるさい」


 ページを繰ったその時、挟まれていた一枚の写真がひらりと落ちた。

 セピア色に褪せた古い集合写真。

 中央には白装束の少女が立っており、ぎこちない笑みを浮かべている。

 その顔立ちは――君鳥愛菜に、あまりにも似ていた。


「……これ……」


 修は思わず息をのむ。

 結先輩も写真に目を落とし、驚きに声を詰まらせた。


「“人柱の巫女”……古文書に出てくる言葉だわ。

 境界を鎮める楔として、代々“選ばれた者”が……」


「境界を鎮める楔……」


 修は呟き、ちらりとソファで漫画を読んでいる愛菜を見る。

 彼女は何も知らない顔でページをめくっていた。


「ボク?なに?しゅーくん、そんなにジロジロ見ると気になるんだけど」


「い、いや……なんでもないです」


 修は慌てて写真を隠した。

 しかし、その瞬間――窓の外で風鈴がちりんと鳴った。

 音もなく夜風が差し込み、カーテンが揺れる。

 その隙間に、“女の影”が立っていた。


 痩せすぎの体、異様に長い黒髪、そして笑みだけが浮かんでいる。

 声はない。

 だがその視線は、確かに愛菜に注がれていた。


「……っ!」


 修が立ち上がった時には、影はもう消えていた。

 残されたのは、ぞわりと肌を撫でる冷気だけ。


「雨城君……?」


「……いや。なんでもないです」


 だが修は確信していた。

 ――あれは妖魔の王の手の者。

 そして狙いは、愛菜だ。



 ソファの上。


「にゃーん(お茶は俺にも淹れろよ)」


「ノクス、猫に熱いのは無理ですよ」


「にゃああん!(せめてアイスミルク!)」


 部室には、緊張と笑いが入り混じった空気が流れていた。

次回予告


 第134話『黒い誘い』


 吸血鬼陣営が示す“王の儀”の一端が明らかになる。

 その不穏な気配に、ノクスは珍しく動揺し距離を取る。

 そして初めて明かされる、妖魔の王の名。

 「彼女は奪う、すべてを」――その言葉が意味するものとは。


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