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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第11話『ノクス、夜を駆ける』

 深夜0時。


 大学の裏手に広がる静かな住宅街。

 細い路地を、ふわりと浮かぶ黒い猫影が音もなく駆け抜けていく。


 それは、俺達の知る猫型妖怪、ノクスだった。


「……ニャ」


 ノクスが足を止め、夜空を見上げる。


 満月だが、雲に隠れて光は乏しい。人の気配がまばらな深夜の街に、濃い“霊の匂い”が漂っていた。


 ノクスの瞳が細くなった。


「にゃう(出たな……面倒な奴)」



 数時間前、オカルト研究同好会の部室。


「んー……今日は特に怪異もないし、ゆっくりしようか」


「ふふ、ちょっとだけノクスちゃんをモフってもいい?」


「しゃー!(今日はダメだ)」


「えぇっ!?怒られたー!」


「ノクス……? 何か今日は様子が違う」


 俺が言いかけた瞬間、ノクスが愛菜のリュックから跳び出した。


「ノクス!?」


「どこ行くのっ!?」


 ノクスはドアを爪で開けてひと鳴き。


「にゃう(おれに任せろ)」


 そう言い残し、夜の街へ飛び出していった。


「……珍しく真面目スイッチが入ったみたい?」


「うん。あれは、妖怪としての使命かも」


「使命……?」


「夜にしか現れない、ノクスの一族が代々追っている、ちょっとヤバい奴がいるんだ」



 一方、住宅街の朽ちた公園。


 そこには人の形をしているが、顔のない真っ白な仮面のような“何か”が、ブランコに揺られていた。


 霊でも妖でもない、その正体は……。


「にゃ……にゃあ(化け損ないめ……お前の時間はここまでだ)」


 ノクスがゆっくり前に出る。


『…………ノスフェラトゥ……』


 風が鳴り、無音の声がノクスに対してそうささやいた。


 瞬間、地面を這う影が牙をむく。


 “影喰らい”。人間の影に潜み、意識を削り取って消してしまう、邪悪な妖魔。


「にゃあああ!(誰の街だと思ってんだ!)」


 ノクスの目が光り、影が弾けた。


 公園の空気が反転し、光のない夜に一条の月光が差し込む。



 戦いを終えたノクスがふらりと足を止める。


 背に、小さな影が飛びついた。


「ノクスぅぅぅう!!」


 愛菜だった。


「心配したよぉおお!! 急に飛び出してどこ行ってたの!?」


「にゃ、にゃあ……(ちょっと仕事してただけ)」


「しゅーくんと結先輩も探し回ったんだよ!? 変な空気になってて、先生まで来たし!!」


「にゃあっ!?(それはマジでごめん!!)」


「でも……おかえり、ノクス」


「……にゃ(ただいま)」


 愛菜の腕の中で、ノクスは目を細めた。


 街は静かだ。


 今夜も、俺達の知らない所で、“誰か”が戦っていた。

 次回予告


 第12話『先生、遭遇する?』


 UFOを信じる大人は、案外かっこいい――かもしれない?

真夜中の大学屋上で、先生が“何か”と出会う。

信じる心が、空に届く。


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