表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第四章:心スポ探訪編
107/138

第107話『笑う地蔵と喰われる夜』

第四章:心スポ探訪編ラスト!!

 地蔵の口が、音もなく開いた……


 その奥には、空洞のようで、空洞ではない――“何か”の眼。


 それは人の目ではない。感情を持たず、ただ見ている存在。


 修達の視界が、そいつに乗っ取られた。


 異様な視界が流れ込んでくる。

 黒い森、朽ちた神社。そして――“見ている誰か”の視点。


「……く、る……」


 愛菜が、目を見開いたまま声を漏らす。


「ヤツの視界の中に、ボク達がいる……逆に見られてる!」


「うわ、これ完全に逆ハックされた感じじゃねぇか……!」


 修が悪態をつくも、体は動かない。

 硬直したように、皆、そこに“立たされている”。


 赤子の泣き声が、遠くから響く。


 最初はひとつ。

 次第にふたつ、みっつ……増えていく。


「七つの地蔵、それぞれに一人ずつ宿ってるの……?」


 結がつぶやく。


「違う……一体が全部を呼んでる。あれが、口の開き手」


 祭壇の下――土がぬるりと動いた。


 ズルズルと這い出してきたのは、腕。

 長く、関節が異様にねじれていて、まるで土中で作り直されたような不自然な形。


 続いて、首のない胴体。

 そして、地蔵のように“口だけ”の顔。


 その“それ”が、ニィ……と、口だけで笑った。


「やばいやばいやばい、動けねぇ……!」


 修が呻いたその瞬間――


 空が割れた。


 バチィィィィン!!!


 閃光と共に、上空から落ちてくる影。


 「生体エネルギー反応探知完了!指定対象三名、全員ピンチと判断――!」


 ズガアアアアアアンッ!!


 空から降ってきた人影が、七体目の地蔵の口に向けて拳を叩き込む。


 「《メテオナックル》!!」


 直後、衝撃波が山全体を揺らした。


 地蔵の頭が粉々に砕け、背後の祭壇もろとも崩れ落ちる。

 あの口だけの顔も、黒煙を残して消滅した。


 硬直が、解けた。


「……せ、先生!?」


 修達の目の前に立っていたのは、光る片目と蒸気を上げる義手を持つ、浜野京介だった。


「ふぅ……ぎりぎりセーフって所か?」


「先生、なんでここが……!」


 愛菜が叫ぶ。


「ふっふっふ……我が義体に搭載された最新型エネルギー探知センサーがな――この辺り一帯の“異常霊的バースト”をキャッチしたのだよ!」


「それ……もはや生徒にストーキングしてるレベルじゃ……」


 修が呆れ顔を向けるが、結は小声でつぶやく。


「でも……先生が来なかったら、私達……」


「ま、間に合って良かったって事にしとけ」


 先生は、爆心地になった地蔵の台座を見て、ぽりぽりと頭をかいた。


 風が吹いた。


 夕闇に虫の声が戻り、世界はほんの少し“正常”に戻ったように見えた。


「これで、七体目の地蔵は……」


 結がつぶやく。


「喋らなかったな……むしろ喋る暇もなく、メテオされて終了って感じだが」


 修が苦笑した。


「これで、終わり?」


 そう言いながら、修がふと足元にあった紙切れを拾った。


 例のチラシだった。


 《七体開眼法要》――あなたも、目撃者になれます。


 その下に、小さく、こう続いていた。


 “八体目、ただいま準備中”


「……は?八体?」


 「七体で終わらせてよ……」と愛菜が震えながら言いかけたその時。


「もう、関わるのやめよう、めんどい」


 全員賛成、満場一致した。


「……ていうか……」


 ふいに結が、あたりを見回す。


「ノクスは?」


 沈黙。


 全員、顔を見合わせる。


「……あれ? 今日、いたっけ?」


 「え……」


 「オイ、まさか……」


 皆が心配する中、突然闇の中から現れるノクス。


「にゃ〜(どうしたお前ら?)」


「どうしたってノクス心配したんだよ!」


「さっきまで忘れてたけどな」


「にゃー(集会に行ってたんだよ、妖怪達の、な、そこで、面白い事聞いてきたぞ!)」


 呑気なノクスに半笑いの愛菜。

 和む結、それらを見ながら修と浜野は

 長い夏休みの夜空を眺めていた。


 ーーこの時の事が後の大事件に繋がるとは、この時のオカ研の面々は、まだ知らない……。

 次回予告


 新章突入!

 第五章:そうだ、きさらぎ駅に行こう!編


 第108話『きさらぎ駅に行こう!』


 修達が夜のローカル線に乗り、きさらぎ駅への“行き方”を検証!

 ネットの怪談をネタに笑いながらも、ひよりだけは無言で外を見つめる。


 車窓の景色が急に変わり、トンネルを抜けると無人のホームに到着。


「ここが……きさらぎ駅?」


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

 評価(★★★★★)やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

 続きの執筆の原動力になります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ