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幽霊オタクレベル99〜俺には効かないぜ幽霊さん?〜  作者: 兎深みどり
第一章:幽霊のいる日常編
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第10話『止まれない信号機』

 夜の街に、赤い光がぽつんと灯っていた。


 大学近くの交差点。噂の現場に、俺達は立っていた。


「ここだね……“止まれない信号機”って言われてる交差点」


「にゃあ(空気が妙だな)」


 ノクスがリュックの中から顔を出し、低く鳴いた。


「普段は普通の交差点なんだけど……夜中になると、赤信号でも車が止まらずに通り過ぎるって」


「ボク、動画で見たよ。赤信号なのに、5台連続で通ってたの」


「確かにそれは変だな。タイミングじゃ説明つかない」


「でも幽霊じゃないとしたら、なんなんでしょう?」


「まあ、そこを今から確かめようって訳だな」


 時計の針は、午後11時を過ぎた頃。


 街灯の明かりも少ないこの道に、時折、車が通り過ぎていく。


「じゃあ、観察始めよう。1時間は張り付いてみよう」


 俺達は交差点の少し先、路肩に並ぶように腰を下ろした。

 愛菜はノクスを膝に乗せ、結先輩は小さなメモ帳を開いた。


 時間がゆっくりと流れていく。


「……なーんか、普通に止まってるなぁ」


「本当に異常があるのは“ある時間帯だけ”なんじゃないかしら?」


 そう言った直後だった。


 赤信号が灯る。


 1台、2台、3台……。

 何の迷いもなく、車がそのまま交差点を通過していった。


「うわっ、マジか!」


「見た!? 今の、信号赤だよ!? みんな突っ切ったよ!?」


「にゃうっ(空間が歪んでる……)」


 ノクスが毛を逆立てた。


 俺は目を凝らす。


 信号の手前に――何か、立っていた。


 人影……いや、シルエットだけの、誰か。


「見える……女の子……? いや違う、あれ……」


 見た瞬間、吐き気のような感覚が走った。


「……なんか、車の運転手の目が、一瞬……真っ黒に見えた」


「何かに“操られてる”って事?」


 交差点の赤信号が青に変わると、人影はふっと消えた。


 けれど次の赤信号で――また車は止まらなかった。


「にゃ……ニャアア!(あれは、“繰り返してる”んだ。事故の瞬間を)」


 ノクスが唸る。


「……事故?」


 俺は息をのんだ。


「……この交差点、昔、一つの事故があった。女の子が、赤信号を無視した車に轢かれた」


「その記憶が……この場所に、残ってるって事?」


「幽霊じゃなくて、“事故の記憶”が道に染みついたのかもしれないな……」


 ふと、愛菜が言った。


「でもさ、それって――“助けられなかった”誰かの後悔が、形になったみたいじゃない?」


「……かもな」


 その時――


 キィィィ……


 車のブレーキ音が鳴った。


 道の中央に、まるで“見えない壁”に気づいたように、1台の車が急停止した。


「……止まった……」


「……記憶が、薄れたのかもね」


 結先輩が呟いた。


 交差点に、静かな風が吹いた。

 次回予告


 第11話『ノクス、夜を駆ける』


 いつもはのんびりなノクスが――


 今夜だけは、本気になる!?

妖怪と人間の境界に立つもの。

夜の街を駆け抜ける小さな影に、何を見る――!


 最後まで読んでいただきありがとうございます!

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