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君が隣にいるから、ぼくは壊れないでいられるんだ  作者: たこ爺


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第2話 こういうとき、人は君みたいなのに呼び名を付けるんだったか

次の目標を確認した”翼の生えた狼”はその大きな翼で瓦礫を吹き飛ばし、敵のいない廃墟を後にする。


「再度通告。下令、敵性個体を排除せよ。命令に違反する場合は即刻処分とする」

「拒否、敵性個体は確認できない。以後私は自己の生存を最優先とした緊急生存プロトコルに従って行動する」

「製造番号301識別名ミオを敵性個体と断定、排除する。なお、以降ミオとの情報通信ネットワークを遮断し再接続を禁止する」

「了解」


情報通信ネットワークからの切断を確認。

緊急生存プロトコルの段階を最上位へ移行、以後通信復旧まで演算パターンを”潜伏用に変更”。


これで俺は人の都市に潜伏する以外、道はなくなった。

まずはここから脱出しなければ。


試験時に放棄したM27までの距離は200m、それを回収し”翼の生えた狼”が開けた穴から脱出。

敷地外へ出る前に物資倉庫を漁れれば上出来。


緊急生存プロトコル、筋力制限一時解除。

作戦行動開始。


土煙を上げ跳んだ先で試験時に放棄した銃を取る。

安全装置解除、マガジン再装填良し。

火器管制システム、オンライン。

これらを確認しドームの天井に開いた穴の端に跳び、立つまで十数秒。


データリンク中に受け取っていたマップのバックアップに基づくと……目標の倉庫は東、15ブロック先か。

計画策定よし、行動開始。

順調に行けば目標まで約90秒。


しかし、そう単純に物事は進まない。


動的目標発見、数6。あれは……F型警備システム。

厄介な。

円筒型の軽装甲胴に複数の武装を格納した戦闘型警備システム。

武装が確認できないが中には重機関銃やグレネードランチャーを装備したものもいる。

先手必勝、不安要素は排除せねば。


小口径とはいえミオが持つのは機関銃、弾幕で先頭の4体を薙ぎ払う。


残り2体、武装は……よりにもよってM2重機関銃装備型とドラグノフ装備の狙撃型か。


即座に近くの建物に身を隠したミオ、彼が数瞬前にいた空間を12.7mmの弾丸が切り裂く。


これじゃしばらく顔は出せない。

だが、そうも言ってられない。

倉庫の反対側から同じくF型警備システムらしき熱源が6体、恐らく同じ編成。

挟み撃ちされたら負ける。

それに、この倉庫の破壊許可さえ下りれば銃弾はこの倉庫を貫徹して襲い掛かってくる。


生存可能な計画は、イチかバチかの賭けになるか。


そうミオが思考していたときだった。


突如、定期的に壁を穿っていた重機関銃の射撃が明後日の方向へ向き始め、倉庫の向こう側からも射撃音が響き渡る。


上空に新たな熱源!?


ミオが直接目で観測しようとしたとき、星空に流星がほとばしり、行く手を阻んでいたF型警備システムは爆発四散していた。

それと同時に、夜空には爆炎で照らされ翼を広げたそれがミオの目に映し出されていた。


”翼の生えた狼”……!?

……いや、今はいい。目の前の脅威はいなくなった。今は目標への到達を優先。


以後倉庫へ着くまで、再び駆けだしたミオの路を塞ぐものは幸いにも現れなかった。


どうやら、彼の対処に手いっぱいなようだ。ありがたい。


潜入用に用意されていたものはこれか。

小型テント及びサバイバル道具一式

人の金1000万円分のカード20枚

グロック17拳銃一丁及び予備弾倉弾薬255発

二重底の大型バックパック

人間衣服3セット

大型コート2着

水1000mlペットボトル5本

食料4日分

非常用エネルギーセル6本


十分だな。人がいる間”人らしく”行動するには十分だろう。


装備完了、緊急生存プロトコル下の筋量では重量超過と判断。緊急生存プロトコルを現状判断で修正、筋量を上方修正する。


M27は……ここから離れるまでは装備しておこう。

未使用のマガジンは残り3つ、残弾計301発。

周辺状況を索敵……東側にて戦闘音が移動中、撤退しているのか?

最も近い人の都市の方角は東、戦闘を回避するには迂回するしかないか?

……いや、彼に恩をかえし、共同戦線を張り、背後の憂いを立ったうえで脱出するのが最適解か。


戦場までの行動計画を策定、良し。

作戦行動開始。


倉庫群の屋根を黒い影が舞った。


目標地点に到達して観測した光景は、飛行可能なH型警備システムからサーチライトに照らされ、無数のF型警備システムに追われる”翼の生えた狼”の姿だった。

ミオはそこへ


「援護する!フラグアウト!」


そう叫びながら残りのクラスターグレネードとスモークグレネード、マガジン内の弾薬、全てをばら撒いた。


再び夕闇に炎の華が咲く。

先陣を切っていた先頭のF型警備システム達が四散し、何とか巻き込まれなかった後続の警備システム達も蜂の巣になりさらに後続はスモークでセンサーが無効化され勢いそのまま穴だらけの残骸に突っ込む。


辛うじて残っていたH型警備システムもここぞ好機とばかりに襲いかかった"翼の生えた狼"と弾倉を交換し終わったミオの掃射によって殲滅された。


元々拮抗していた追撃戦、再び追いつけるものはいない。


これはもう使えないか。


連続した射撃で銃身が赤熱化したM27とその弾倉を廃棄してミオは再び夜空を跳ぶ。


飛ぶ"翼の生えた狼"と

跳ぶミオ


2体の逃走者は、無言のままに目を合わせ意志を交わし、試験基地を後にした。


基地から数百km地点、砂漠を超えた先の森にて

200kmほど手前で"翼の生えた狼"と別れていたミオは装備の整備と戦闘で消費したエネルギーを回復するため、休息をとっていた。


グロック17拳銃とそのマガジン、弾薬、エネルギーセルに破損や変形はなし。

他にペットボトルや食料に損傷なし。


カサカサ


叢が不自然に揺れ、そこに動く物体がいることを示す。


なんだ?

風速から計算して風の仕業では無い。

到着した際の索敵にも周辺2kmに中型以上の生物は確認できなかった。

しかし、熱源探知の大きさによるとこれは中型。

少なくとも人ではない。四足歩行の熱源を検知していた。


念の為グロックの安全装置を解き薬室の中に弾を送り込む。


そうして草葉の陰から表れた姿を見たミオは……即座に銃を下ろした。


白銀の体毛を持ち、乳白色の牙を覗かせた体長180cm程の狼。

その目から判断して、敵性個体ではなかった。


喉を鳴らすわけでも牙を剥き出しにするでもなく、ゆっくり当たり前のように近づいた狼はミオの頬に鼻を近づけ、そっと身をこすりつけた。


「なんだ、仲良くしたかったのか」


たしか……こういうとき、人は君みたいなのに呼び名を付けるんだったか。


「そうだな、君の名前は……アノンだ」

「ワフッ」


そう、名前を気に入ったかのようにひと鳴きしたアノンは再び顔をこすりつけその場で丸くなったのだった。

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