第十二話 「小悪党のクロノス」
魔法界から追放されたクロノスは最北の港町にたどり着きました。
最北なので田舎と思いきや、貿易の要所として栄えており、住んでいる人達も裕福でした。
また、船乗り達の憩いの町にもなっており、酒場やギャンブルが盛んでした。もちろん裕福な商人もたくさん訪れます。
素行の悪いクロノスは魔法を悪用し、盗みや詐欺などで生計を立てます。
中でも力を入れていたのが、カードゲームでのイカサマです。
筋書きはこうです。
まず、白い髭を生やした裕福そうな老人に変装します。そして普通に勝負します。勝てばそのままで良いのですが、負ければとことんまで負け続けます。相手が散々油断したところで、最後にもう一勝負ということで、一気にレートを10倍に増やします。相手は「いいカモが来た」と思い承諾したところで、時を一二秒止めて堂々とイカサマをするという段取りです。
この時代魔法は珍しくないのですが、時を止める魔法は一流の魔導師しか使えませんので、普通の人は時を止める魔法があることすら知りません。
そういった感じで、クロノスは魔法を悪用し、財を蓄えました。但し魔法が使えるのは1日1回なので、イカサマも盗みも詐欺も1日1回と決めていました。
クロノスはそういう意味では熱心でした。数週間前など、町の上空をよく分からない物が通過した時も、「魔導師の誰かが訓練してるのだろう」と斜にかまえて、町の人達が野次馬と化した隙に「魔法を使わずに済む」と、空き巣を何件も働いたのでした。
また、クロノスはとても用心深く、町にいる時は決して「裕福な老人」の変装を解きませんでしたし、特定の家を持たずに宿を渡り歩いてました。持ちきれない宝は町の北にある草原に隠れ家を作り、そこに隠していました。もちろん食糧等も持ち込んでいたので、いざという時は何日もそこに隠れることが出来ました。
冬がもう始まるであろうある日のこと、クロノスのカモの一人である富豪が、商談で大儲けしたため上機嫌でクロノスにカード勝負を挑んできました。
いつもどおりクロノスは「時を止めて」堂々とイカサマをし、大勝します。ただ勝った金貨があまりにも多く、クロノスもすっかり上機嫌となります。
気持ちも大きくなり、酒場にいる人全員に酒を振る舞います。クロノス自身も酒を浴びるほど飲み、すっかり泥酔してしまいました。
気持ちよく飲んでいると、先ほどの富豪が倍の金貨を持って現れます。そして、クロノスに再度勝負を挑みました。
「いいカモだ。身ぐるみ剥いでやる」そう思い、「時を止める魔法」を使います。素早く懐からイカサマ用のカードを取り出したところ、富豪の用心棒に腕を捕まれます。そのまま腕を捻り上げられ、隠していた他のイカサマ用のカードをすべて取られてしまいました。
続く




