第一話 「魔法使い崩れのクロノス」
遠い昔、北欧の現代のオランダあたりのお話しです。
まだ、魔法がそんなに珍しくない時代、クロノスという魔法使い崩れの小悪党がいました。
クロノスという名前から想像出来るように、彼は時間を止めることが出来ます。と、言っても1~2秒だけですが。
ここで当時の魔法の話を少しだけ。
魔法には火、水、土、雷等多くの属性があります。
その中でも時空系の属性は大変難易度が高くマスター出来るのは100年に一人と言われています。
どの属性を学ぶかは最初の診断で決定されるのですが、一度属性を決めると原則他の属性は使用出来なくなります。もし、使用すると二度と魔法が使えなくなるだけではなく、運が悪ければ反動で廃人になってしまうのです。
魔法は心身のエネルギーを凄まじい集中力で凝縮し一方向に一気に放出する行為です。例えば猛スピードで走ってるスポーツカーを想像してください。その車がいきなりバックギアに切り替えたらどうなるか?
大惨事になりますよね。
属性とは方向のようなものです。水と氷のような近い属性ならこのような惨事は免れるかもしれませんが、水と火のような正反対の属性、また光、闇、時のようにどの属性とも方向が全く違う属性では大惨事になる可能性大です。
クロノスの話に戻ります。
クロノスは将来を有望された100年に一人の逸材でした。どの属性とも相性がよく何を学ぶかは自分次第でした。
しかし、クロノスは火や水のような実用的な属性ではなく、ほんのわずかな時間を止めるだけの魔法「時」の属性を選びます。
当時の魔法使いは俗世とは交流を絶ちひたすら技を磨く、いわば修行僧のようなもので、完全な縦社会でした。実用性は無くとも「時」の属性を使う魔法使いは、その難易度から他の魔法使いからの尊敬を欲しいままに、代々最高位である大魔導師の位に就くことができました。野心家であるクロノスはそういった理由で迷わす「時」の属性を選んだのです。
しかし、クロノスはとても素行の悪い青年でした。もともと由緒ある家柄に生まれたのですが、家宝を売り飛ばして飲み歩いたり、ギャンブルで負け借金を作ったり、そういった行いを両親が見兼ねて、魔法使いの養成所に厄介払いしたのです。そんな素行の悪さはちょっとばかり修行したからといって直るわけではなく、むしろ覚えた魔法を悪用する毎日でした。
例えば時間を止めて、その隙に大魔導師のラム酒を盗み飲んだり、大事な巻物を売り飛ばしたり、1日1回は何かしらの悪さをしていました。ちなみに1日1回には理由があり、時を止める魔法は膨大なエネルギーを使用するため、1日1回しか使用出来ないからです。
こういった素行の悪さによりクロノスは魔法界からも追放されてしまうのでした。
続く