【短編】手紙
「あなた達は親さんにいろいろな協力をしてもらうことで、今生活できているんですよ。明日は父の日です。日頃の感謝を伝えましょうね。」
帰りの会で、担任の先生が延々と話し続ける中、父の日というワードに耳が反応する。
私はそれを聞き、改めて日々の生活を思い返す。
私には父しかいない。いわゆる父子家庭というやつだ。
正確に言うと、母は私が小さい頃に事故に遭って亡くなってしまったそうだ。
そのためか、私の家庭は友達が話す"普通の家庭"とは少し違い、"普通"なら2人でやっているようなことを全て父1人でやっている。
料理から掃除、風呂洗いから洗濯物まで、家事は全て父に任せっきりになっている。
しかも仕事は朝の8:00から夜の18:00まである。
その上、私はクラブにも入っているため、その送り迎えなどもしてもらっている。
時間があって手伝える時には私もできる限りやるが、やはりクラブがあったり学校の課題があったりすると家事をする時間がなく任せっきりにしてしまっている。
だから相当忙しいはずなのに、家事の合間には私と話をしてくれたり勉強を教えてくれたりしている。
そう思うと自分だったらできないようなことを、愚痴の1つもこぼさずにこなしている父は尊敬する。
なのにそんな父の苦労を知らず、普段はありがとうと感謝の言葉を伝えることがあまりできていないことに気づく。
普段伝えられていない分、その気持ちがが伝わるように……。
そんな思いを込めて、紙にペンを走らせた。
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今日も仕事から帰ってきて、夕飯を急いで作り、片手間に娘と話したり趣味であるスマホゲームをする。
妻がいなくなってすぐは慣れない作業ばかりで時間もかかってしまい、もっと家事を手伝っておけばよかったと後悔したのを覚えている。
しかし今では無意識下でも動けるのではと思えるほど、スムーズに家事をこなすことができるようになった。
手慣れた動きで、今日の夕食であるハンバーグのタネをこねていると、娘がキッチンに近づいてくる。
そして手に持っていた1枚の封筒をダイニングにあるテーブルの上に置くと、すぐに2階へと上がっていってしまった。
娘の表情が固かったことから、今すぐ読んだ方がいいものだと察し、タネを一通り作り終えてから封筒を開く。
そこには1通の手紙が入っていた。
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お父さんへ
いつもありがとう。
普段からお母さんの分まで家事をしてくれていてありがとう。
いつも何も言わずにたくさんの家事をこなしているけど、土日くらいしっかり休んでほしい。
体を大切にしてね。
クラブがない時はできるだけ手伝うようにするね。
改めて、いつも本当に助かっているよ。
ありがとう。
これからもよろしくね。
大好き。
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