休職1日目
昨夜中断した映画の続きを布団のうえで流す。煙草を吸おうと思って起きると、カーテンの隙間から春の陽気がこちらを見ている。窓から見えるそれは、雲ひとつないあっけらかんとしたブルーで、鳥の声がもう昼間であることを私に伝えた。気持ち良さそうだから外で吸おう。今の家にはベランダがないので、AirPodsを着けて、いそいそとサンダルを履いて、玄関を開ける。強すぎないくらいの日差しを、心地よい風が横断する。滑空する大きめのカラスが魔女に見えたから、「やさしさに包まれたなら」を流しながら日陰を探した。
ちょうどいい木陰に落ち着いて、火を点ける。煙と一緒にセロトニンが肺に入り込んでくるみたい。ため息ばかりだったこれまでの日々を溶かすように、深い深い息をゆっくり吐いた。おとなになっても奇跡は起こるって荒井由実が耳打ちしてるから、あまり期待せず、今週もとりあえず生きていこうと思う。