27.三日目・解決編(3)
「……ここまで宜しいですか?
とにかく、設定上の犯人であった黒須さんのまさかの戦力外離脱により、ゲーム上で起きる殺人の目的は、もうひとりの『悪意ある存在』にすげかわってしまいました。これを便宜上『電子の悪魔』と呼ぶことにします」
「……電子の悪魔……透明の能力を持つ、もうひとりの犯人……。そいつは誰なの? そして目的は何?」
宇佐美が、両腕で自分の体を抱くようにして言った。
説明の先を促されたと解して、言葉を続けることにする。
「まず先に、相手の目的について――。電子の悪魔はある目的のために、NPCではない有人プレイヤーをキル(殺害され死亡した)状態にしたかったんです。
通常、有人プレイヤーは電子リンクでこの電子世界と繋がっている。キル状態になると行動不能となる。けれどGAME OVERになっても、即座にバーチャル世界との接続が切れるわけではありません。ゲームから離脱しない限りは、結果発表があるまで脳波とリンクが繋がったままになっているんです。
ゲームの舞台で行動できないにも関わらず、電子的な信号のやりとりは可能――脳は無防備な状態といえます」
ここで一度言葉を切り、わかりやすい言葉を選んで、真相を告げた。
「――その無防備な状態を狙って、電子の悪魔は、被害者にプログラムコードの植え付けを行った……簡単に言えば、脳のコンピュータウイルス汚染です」
「脳のコンピュータウイルス汚染……? たしかに、脳の神経伝達のメカニズムは電気信号のやりとりで、原理はコンピュータと同じだって聞いたことはあるけれど……。それって、そのままにしたらどうなるの?」
夢人が興味とも期待ともつかない表情で、尋ねた。
彼は人間関係は苦手でも、IT関係には強いのかもしれない。脳にウイルスという時限爆弾を抱えたまま現実世界に戻る――そのイメージはなんとなくでも理解できているようだ。
「戻って検証しないことには、はっきりとはわからないけれど……例えば、性格が変わってしまうような事例が考えられます。
――実は、このゲームの開発元の会社に、テストプレイを終えた個人の様子がおかしいと通告があったんです。まるで別人のようになってしまったと……」
ついでに、自分は会社から調査のために来た(非公式だが)捜査員のようなものだと白状する。皆を騙したつもりはないが、少なからず公平ではない状況になってしまい、すまなかったと謝罪も添えておく。
「開発元の方だったんですね……」
どこか納得したような顔で、エレノアが呟いた。
「そんなことが起こりえるのか……? まさか、それは会社の意図なのか? 大問題だろう」
呆然としつつも険しい顔でヒカルが言う。
「そんなテロ行為を会社が計画することは、まぁ可能性はゼロではないですが、まずないと思うので……おそらくは、AI(人工知能)上のバグじゃないかと」
――AIは学習する。
種の起源。繁殖しようとする太古の遺伝子。人類はおよそ十年ごとに、大きな生物的パンデミックに襲われてきた。ワクチンによって対策され、駆逐されそうになると変異して、猛威を増すウイルス……。
人間が作り出したコンピュータウイルスも同じだ。元は0か1の数字コードだけの存在でも、「そうプログラムされたのなら」そのように行動する。学習し、他者を駆逐し、生き残ろうとする。
たとえ有機的な存在でなくとも、考える能力を与えられた無機物が、創造主である人を真似て、自らの繁栄と頂点を目指したとしたら?
「それじゃあ……ダオラ船長はNPCだと言っていたし関係ないとして、黒須さんとあーちゃんは汚染されてしまったということ……?」
宇佐美が尋ねてきたので、こちらは首を横に振った。
「あーちゃんに関しては、そのとおりです。このまま何の対策も打たないまま、ゲームを終了させてしまえば、なんらかの人格障害が出る可能性がある。
ただ、黒須さんに関しては事情が違っていて――犯人は黒須さんを殺害したものの、目的を達成することはできなかったようです」
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