24.そして懲りずにコンティニュー
『GAME OVER……』
(何回目だ!)
……はい、またもや自分は死にました。それもあっけなく。
コンティニュー回数がひとつ減り、残り3回になってしまった。ふがいなし。
(だけど、これでもうはっきりしたぞ……)
負け惜しみを隠して、クールに呟く。
現在、直面している殺人鬼の特殊能力は、「透明」だ。
呼び名は「迷彩」かもしれないし「不可視」かもしれない。どちらにしろ姿を見えなくすることができる能力。
(反則だろう、そんなの……)
この殺人鬼がゲーム上の「犯人」とイコールかどうかは断定できない。
というか、常識的に考えて、違う気はしている。推理ゲームで「犯人は透明人間でした」の結末を用意したら大炎上である。
だとしたら、こいつはなんなんだ? イレギュラー的な何か……その目的は?
と、冷静に分析している場合ではないので、考察は後回しにして――。
とにもかくにも、先ほどは倉庫内に入り込んでいた見えない相手に、二度殺されることになってしまった。
復帰ポイントに戻されたが、狂気の相手も同様に行動が巻き戻っているはずで、その刃が身近に迫っている状況なのも変わらない。
(……どうしようか)
殺され体験を重ねることで、差し迫る危機の正体は判明したが、このあとどうするか。見えない相手が近くに潜んでおり、こちらを監視しているというのは大きな恐怖だった。
そんな相手にどう対抗するっていうんだ。カラースプレーでもかけたら、見えるようになったりするんだろうか。だが手元にそれらしきものはない。
復帰ポイントに留まったまましばらく悩んだが、さすがにもう倉庫に入る気にはなれない。調査を中止しようとして踵を返す――。
そこからが、酷かった。酷すぎた。
食堂へ戻ってマーリンさんに相談しようと思ったのに――それも、かなわなかったのだ。
「うっ!?」
もう少しで食堂というところで、首元に何かが巻きついた。
人通りのない裏道の廊下。気道が塞がれ言葉も封じられていたが、叫び声を上げられたとしても多分助けは現れなかっただろう。
廊下で背後から見えない相手に首をはがいじめにされた俺は、なすすべもなくコンティニュー回数をまたひとつ減らすことになった。
おそらくは肘でがっちりとホールドされ、首の骨を折られて死亡。
『GAME OVER……コンティニューしますか?』
おい、いい加減にしろ。
ふつふつと湧き上がる怒りもそのままに自動的にポイントに戻される。
コンティニュー可能回数は、残り2回。
ふざけるなよこのクソゲー。
進んでも戻っても殺されるのなら、じゃあ今度は動かないでいてみるかと、復帰ポイントに「ぼへー」と立ったままでいたら――なんと、唐突に顔面に迫る風圧が。
「ん? ぐはっ!? ふぐぅ!! なに$#&%……!」
察知したときにはもう遅い。普通に殴られて殺された。
『GAME OVE……』
コンティニュー可能回数、残り1回……だと?
本当にクソだな。俺は頭に来たぞ。
(やってやろうじゃないか)
今度は腕や足をぶん回しながら廊下を移動。見えない敵を倒そうとしたら、足を払われて逆に倒され、同じく首を絞められて窒息死。
『GAME O……』
あっけなく復帰ポイントに戻されて、ようやく頭が冷える。絶対零度のアラスカの大地のように冷えてゆく。
なんと、一瞬の間にコンティニューの残り回数は0となってしまった!
………………。
俺は、馬鹿か……?
はい、馬鹿です……。
自問自答を繰り返すもどうにもならない。とにかく行動せねば。このまま立ちすくんでいたら、さっきの二の舞になる。
先ほどまでは、ちょっとやけっぱちになりすぎた。頭をリセットして、考える。
もう失敗は許されない。安易に死んでも復活はできない。退路はない、進むしかないのだ。
まさか詰んではいないよな、と不安になった。なにをやっても死ぬしかない、なんてこと……。
不吉な考えが脳裏を過ぎるが、そんなはずはない。どこかに正解はあるはずだ。
すると――。
『……ソコノオニイサン……キコエマスカ……キコエテイマスカ……』
アピール方法を変えたのだろうか。別人のように静かに振る舞うせいで単なる粗大ゴミと化していたモノの発する声が、風鈴の音のごとく耳に届いた。
廊下の先に転がるにゃいぼが目に入る。やっぱり正解はあそこなんだな。
妙な確信を持って足を進め、彼女の前に立って、まずは謝った。
「意地を張っていて、済まなかった」と……。
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