20.まさかの外部犯行説(1)
夢人は早口に自分の考えを主張し――まるでクイズの正解を閃いた子どものような態度だ。
宇佐美はカッとして叫んだ。
「そんなわけないでしょう? 私が彼女を殺すなんて……だいたい、私は先に犯人に襲われて、気絶させられたと言ってるじゃない! 急になんなの? 黒須さんのときに、私があなたのことを疑ったから、その仕返しのつもり?」
「自分で棚の角かなんかにぶつけて、気絶したふりをしただけかもしれないよ」
「そんなバレバレなこと、しないわよ!」
「でなかったら、気絶させるなんて面倒くさいことをせずに、先に図書室に入った方を殺ればいいじゃないですか。わざわざ後から来たあーちゃんさんをターゲットにした意味は?」
夢人の中では確信を持っているのか、宇佐美への攻撃は止まらない。
「それは私を犯人に仕立て上げるために……」
「いやいや、そんなの意味が分からない。このゲーム、難易度初級じゃないですか。そこまでメチャクチャにする意味あります?」
「そんなの……犯人がゲームの指示に従わずに動いているとしたら、どうかしら。そう、きっとそうだわ。犯人は愉快犯的な思考の持ち主なのよ。ゲームの枠を超えて、私たちを混乱させようとしている。あなたみたいに子どもっぽくて、下品な人間ならやりかねないわね」
「なんだって!?」
夢人が気色ばんだ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って……落ち着いて、ふたりとも」
罵り合いになりそうだったので、いちど口を挟む。皆がこちらへと視線を移した。
「あーちゃんが狙われた理由だけど……それなら少し、心当たりがあるよ。彼女は昨夜、犯人の手がかりについて、なにか掴んだと言っていたんだ。犯人にもそれが伝わってしまい、彼女の口を封じたんじゃないかって……」
あーちゃんは主に、宇佐美と行動を共にしていた。
今朝も、あーちゃんと宇佐美が食堂へ向かう様子を、犯人は監視していたに違いない。
宇佐美が図書室に向かうだろうことは、昨夜、本人が「本を借りた」と言っていたことから、周知の事実だった。本を借りたなら、読み終わったら返却する。図書室に寄るとしたら、食堂に行くときが最も効率的だ。
宇佐美が図書室に向かえば、あーちゃんも一緒についてくるだろう。図書室には大抵、誰もいない。犯人はそこを犯行現場と決めて、ついでに宇佐美に罪を着せようとした――。
……と、考えうる限りのことを説明したが、思ったような反応は得られなかった。皆、困惑したような顔色を浮かべている。全て憶測上のことだから、すんなり頷くには至らないのだろう。
夢人が言った。
「宇佐美さんをフォローしたいのはわかるけど……そういう線もあるってだけのことでしょ?」
「どうしても私を犯人にしたいみたいね!」と宇佐美。どちらも感情的になっている。
「だってもう、それしか考えられない。そうに決まってる! ね、ヒカルさん。エレノアさんも。ライさんだって、本当はそう思うでしょう?」
「ま、まぁまぁ……どうしたんだ、夢人くん。ちょっと落ち着けって」
なだめようと、夢人の肩を掴もうとした。すると、
「わっ、触らないで!」
激しく振り払われた。瞬発的な動きに驚いて、バンザイの姿勢をとる。思わず言葉をなくしていると、
「あっ……ご、ごめんなさい。僕、潔癖症なんだ……。人に接近するのも苦手で……。ゲームの中なら平気かと思ったけど、やっぱり生理的に無理で……」
夢人は潔癖症……。そして接近恐怖症? 人付き合いは苦手そうだと思ってはいたが……。
すると、宇佐美が鼻で笑った。
「潔癖症ですって? それでわかったわ。
――今朝、食堂に来る前に、あーちゃんと一緒に黒須さんの部屋の前の廊下を見にいったのよ。現場百ぺんというでしょう? もういちど、見逃しているものはないかと思って……。そうしたら、わずかだけど、昨夜とは様相が違っていたの。――床の血溜まりが、拭き取られていたのよ」
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