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19.二日目・朝 三人目の犠牲者

 親しくなった友人の首吊り死体を目の前で見ることとなった宇佐美は、ひどく動揺し、歯がカチカチと鳴るほど身を震わせていた。


「大丈夫、これはゲームです……。あーちゃんはゲームオーバーになっただけです。今ごろ現実世界に意識が浮上して、途中リタイアを残念がっていますよ、きっと」


「そ、そう……そうよ、ね……。ちょっと、びっくり、してしまって……」


 過呼吸のような症状を起こしていたので、ひとまず食堂に連れ戻し、介抱した。


 すると、朝食をとるために、ヒカル、エレノア、そして夢人が、続々と食堂へ集まってくる。待ち合わせて来たわけではなく、たまたまエレベーターで一緒になったらしい。


「みんな、ちょっと集まってほしい」


 なんとなく凶報と察したのだろう、一瞬で表情を固くした面々に、事情を説明した。

 まさか朝っぱらから、あーちゃんが殺害されたことを報告するはめになるとは思わなかったが……。

 プレイヤーたちはそれぞれ驚愕の表情で、言葉を無くしている。


「昨日の今日で、また殺られたのか……」と言ったのはヒカル。

「今度は、あーちゃんさんが……」とエレノア。

「三人目じゃないか、やりすぎだよ……」と声を裏返らせているのは、夢人。


 ――だが、言葉通りに受け取ることはできない。この中で、誰かが嘘をついている。犯行を行いながら、そしらぬ顔で、演技をしているのだ。

 今生存しているメンバーの中に、あーちゃんを手にかけた「犯人」が必ずいるはずなのだから……。


 それから全員で図書室に移動し、現場検証を済ませて――男たちに手伝ってもらい、宙に足が浮いているあーちゃんを床に下ろし、横たえる。

 首にくいこんだ縄も解いてやったが、非常に精神的苦痛をともなう作業だった……。

(正直、こんな自由度はいらない。戻ったら運営に文句言ってやる……)


 ゲームの不満点は置いておいて、調査過程でわかったことは、以下のとおりだ。


・死因は絞殺による窒息死。

・犯人の痕跡はなく部屋に乱れがないことから、被害者の背後から忍び寄り、吊り下げに使ったロープで襲ったと思われる。

・あーちゃんの鼻に引っ掻き傷あり。また、彼女の爪に血液が付着していた。


 三つ目については、もしや犯人の痕跡? という線もあったが、あーちゃんが後ろから襲われていることや、手がかりを残さない狡猾な犯人の性格からして、直接的に犯人に繋がるものではないという意見が有力だった。要は、首を絞められたあーちゃんが、自ら暴れて自分の鼻を引っ掻いた、というものだ。


(ゲームだから苦痛は感じないはずだけど……首を掴まれて、やばいと感じて掻きむしったのかな……)

 ふと、食堂で最後に会話したときの、あーちゃんの言葉がよみがえった。


『あとで意見交換でもする? 個人の能力のこととか、知られないほうがいいと思っていたけど、やっぱりライちゃんになら教えてもいいかなって」』


 へへっと鼻を擦りながら、笑顔を浮かべていたっけ。

 俺になら、能力について明かしてもいいと言ってくれて……。


(傷……鼻……もしかしたら、こちらに何かを伝えようとした可能性も――?)


「このくらいでいいだろう。……はぁ……いったん座って話し合わないか。食堂に戻ろう」


 ヒカルが提案し、全員疲れた顔で、図書室をあとにした。

 朝食を食べ損ねた者たちが数名いたが、新たに注文する者はいなかった。


***


「宇佐美さん、辛いと思いますが、発見当初、何があったのか詳しく話してもらえますか」


 食堂の椅子に浅く腰かけた宇佐美は、揺らぐ目を閉じ、大きく深呼吸をひとつした。

 少しは気持ちが落ち着いてきたのだろうか。ぽつりぽつりと話しはじめた彼女の話によれば……。


【宇佐美の行動】

・あーちゃんと待ち合わせて朝食をとり、本を返すために食堂を先に出て、図書室に向かった。

・図書室内に人はおらず(カウンターも無人)、本の返却したのち、新しい本を選ぼうと書架の前に立った。

・直後、首の後ろに衝撃を受けて、意識を失った。

・目が覚めて室内を見回すと、天井から下がった、あーちゃんの体が……。


 最後は光景を思い出したのか、うっと吐き気をこらえるように口元を押さえた。


「気絶させられ、そのあとのことはわからないわけですね?」

「ええ、そうよ……」


 やはり犯人の姿は見ていない、か……。

 落胆と、やっぱりなという気持ちで考え込んでいると、


「聞いてもいいですか?」

 エレノアが手を上げて、発言した。


「図書室に向かうには食堂前の廊下を必ず通らなければならないですよね。ライさんが食堂であーちゃんさんと別れたあと、誰か食堂の前を通った人物は?」


「俺は、そこの廊下を見通せる席でコーヒーを飲んでいたけれど、図書室に向かう人影は見なかったな……」


 その点については、念のためマーリンさんにも裏付けをお願いした。


「ワタシも見ていないわね。お兄さんがずっと食堂にいたことも証言できる。ちなみに厨房にいても蠅一匹見逃さない自信があるわ」


 次に、ヒカルが発言した。

「宇佐美さんが気絶していたというのは、そもそも本当なんですか?」


 宇佐美が口の端を歪めて答える。

「そう言われると思ってたけど……首の裏を見て。痕になっているんじゃないかしら」


 宇佐美が髪をかき上げた首の後ろには、たしかに手刀をくらったような痣があった。


「え、でも……、やっぱり犯人は、宇佐美さんしか、いないですよね……?」


 それまで積極的に話には加わらず、黙って聞いていた夢人が、ぽんと石を投げ入れるように、呟いた。

 全員の、強めの視線がそちらに集まる。中でも特に反応を見せたのは、名指しにされた宇佐美だ。


「なんですって?」


「だって図書室には、他に誰もいなかったんでしょ?

 宇佐美さんが先に図書室に向かって、そのあとあーちゃんさんが追いかけた。食堂には、こっちのお兄さんとマーリンさんがいて、あとからそっちへ向かう人は見ていないと言ってる。現場にはあなたと被害者のふたりきり。そうですよね?」

お読みくださり大変ありがとうございました!

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続きのほうも何卒よろしくお願いいたします(*ᴗˬᴗ))ペコリ

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