15.エレノア(2)
「し、信じてください!」
本当なんだ。なんとかできるなら力になりたいと思っている。
助けたい助けたい力になりたい。自分にも言い聞かせるように、全力で訴えかけた。
「わかりました。変なところ触らないでくださいね」
「ありがとうございます。じゃあ、失礼しますね……」
エレノアの腕と肩に軽く触れる。その瞬間、心の中で呪文を呟くように、強く意思を込めた。
(――デバッグ)
その瞬間、エレノアの頭上にパッと電子モニターが浮かび上がった。
もちろん、エレノアからは見えていない。
特別権限で付与されている、プログラムされた構成物に触るとその部分のコードを開くことができる能力。
この能力が通用したということは――。
(彼女は、NPCだ。そして案の定、構成プログラムがバグっている。誰だ、こんな適当なプログラム組んだやつは)
時を止めているわけではないから、もたもたしていては怪しまれる。
プログラム内でエラーを検索して、ぱぱっと直してやらねば。
ここをこうして、こう……。
「ちょっとライさん、どこ触って……く、くすぐったい! それ、ダメ……!」
「我慢してください、すぐ終わりますから」
くるしゅうない、くるしゅうない。適当に肩をぐりぐりやりながら、モニター上を視線によるタッチ入力で修復していく。
「……はい! 終わりましたよ」
後ろめたいことはないとばかりに、パッと手を放し、声をかけた。
「え、もう? 一体、何をしてたんです?」
「ちょっと指圧的な……どうです? 肩。楽になってません?」
「え? あっ、本当。腕も上がる。それに、なんだか体が軽いような……?」
エレノアが自らの肩を回しながら、切れ長の目を丸くしている。
「良かったです」
にっこりと笑った俺に、エレノアは完全に戸惑った表情で、首を傾げた。不安げな面持ちでこちらを探るように見つめている。急な体の変化を不審に思わないはずはない。
「ライさん……あなた、何者なんです?」
さすがに怪しまれてしまったようだが、ここはもうごまかすしかない。
「ただの参加者ですよ。ただ純粋にゲームを楽しめたらいいと願う、ね」
「……」
きっとエレノアは納得はしていないと思うが、それ以上問い詰めてくることもなかった。
「そろそろ部屋に戻りましょうか。明日に影響するのは、よくない」
ボロが出る前に切り上げようと、こちらから提案した。
「え、ええ……そう、ですね」
エレノアも頷き、立ち上がった。
物寂しそうな表情を浮かべているのは気のせいだろうか……?
この時間が途切れてしまうことが、こちらも少し、名残惜しくはあったが――。
願わくば、体の不調と一緒に、彼女の「人間嫌い」も解消されていったらいいと願いながら、その場を後にした。
***
エレノアと共に、宿泊ルーム区画の十字路に来たところで――。
「待って、ライさん。何か聞こえませんか?」
エレノアが足を止めた。
耳を澄ますと、右翼の廊下の奥から、音が聞こえてくる――ドスンバタンと激しく暴れるような音。
『は、放せっ! 誰かっ……がっ、かはっ』
男の絞り出すような悲鳴。
そして静寂が――。
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