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【ハイファンタジー】命がけの聖女

2017年 12月09日

2,845文字


聖女「勇者様しっかり!私の最後の力ですぐに回復して差し上げますじゃ!死して悔いなし!」

勇者「……き、却下……その手にある食い物をくれ……自分で回復でき……腹へった……」


 お気に入りユーザーさまの活動報告でのお題から書き出した話。




―――10年前、国王が不治の病に侵された。


何人もの医師の治療も、国中の教会での祈りも効かず、日に日に弱っていく国王のそばで王妃は、代わりに政務をこなしながら泣き暮らしていた。


日に日に王妃も痩せて化粧でも疲れが隠せなくなり、そして国王の息がいよいよ弱まった頃。

王妃の遠い日の友人、田舎領地のさらに端っこにある村の教会のシスターがそっと王妃を訪れた。


普段ならば、王妃の友人であろうと手続きをしたとしても国王夫妻の寝室に入ることはできない。しかし家臣たちも弱っていく国王夫妻の気晴らしになればと、すぐに国王の寝室であり王妃の仕事部屋にシスターを通した。

せめて王妃の気分だけでも。


その姿を認めた王妃は駆け寄ってシスターに抱きつき、シスターもまた王妃を抱きしめた。


次の瞬間、国王は全快していた。


「……あれ?」


と、息も絶え絶えだったはずの国王はその痩せ細った体をあっさりと起こした。





それが、この国の聖女誕生の日。





しかしなぜか、聖女の姿をほとんどの人は知らない―――






◆◇◆





魔王が現れた。らしい。


その姿は確認されていないが、ここ数年、国の内外で異形の生物、魔物が多数確認されている。

今までもいなかったわけではない。

ただ、いつからそうなのか人の生活圏とは分けられていて、魔物が人里に現れる事は年に一度あるかどうか。人もまた、魔物の生活圏に自ら近寄らなければ危険は少なかった。


それが、あちらこちらの村が襲われ、村として生活できない被害が増えてきた。


古くからある文献には、魔物の活発化が魔王が現れる予兆だと記されている。


近くの自治体が自警団を作り、王都騎士団からも騎士が派遣され、国内外の傭兵も集められた。


それで被害が収まっても、今度は外国で被害がおき、傭兵たちは金払いのいいそちらに流れる。

そうすると、守りが薄くなったのが分かるのか、魔物がまた活発化する。


いたちごっこである。





「くそったれ! こんな情報無かったぞ!」


ある傭兵団が人型豚顔(オーク)の魔物の大群と遭遇してしまった。

所属していた傭兵団が2つに別れて依頼をこなしていた時、今まで確認されなかった多数の魔物群に遭遇してしまった。情報が足りないと文句を言ってももう遅い。逃げるにも戦うしかなかった。


腕利きが多い傭兵団だったが魔法使いはおらず、いつもなら組合から何人か来てもらって依頼にあたるのだが、今やどこもかしこも人手不足。

そして数に押されて劣勢に。


その時すでに深手を負っていた副団長が、残った魔物と動ける部下を一瞬で数え、奥歯を噛みしめると、()()()()叫んだ。


「牛一頭!」


「ごっつぁんです!」


魔物と一対一で戦っていた傭兵が1人だけ応え、それからすぐ、残り30体と思われたオークは首から血飛沫をあげて全てが倒れた。


「副長剣折れましたすんませんごちそうさまですぅ…………」


そう言うとその傭兵は倒れた。ネジが切れたおもちゃのようにうつ伏せになってピクリとも動かない。


ひゅうと吹いた風が、その戦いの終わりを告げた。


副団長は大きなため息をつき、何とか動ける団員とともに他の団員の手当てをし、何とか今回の依頼主である領地に間借りしている野営地へと全員で戻った。


先に依頼を終えて戻っていた団長の部隊が、慌てて副団長の部隊の看護をする。


副団長は傷のせいで青い顔をしながらも、足取りはしっかりと団長がいるだろう本部テントに入った。


「何だその傷!?」


地図を見ていた団長が簡易椅子から立ち上がった。


「想定以上の数のオークに遭遇した。負傷者多数だ。重傷者は5人。それ以外の損失はまだ計上していない」

「お前までそんな傷を負わされるとは……、よく死者を出さなかったな」

「牛一頭と引き換えだ」

「はあ!?お前今牛がどれだけ高価なモンか分かって言ったのかよ!」

「豚顔の魔物相手の時に豚一頭分の肉を食わせてやるって言われても俺だってやる気にならんわ!」

「確かに!」


だがしかし!ああくそ!と大きく呟きながら頭を抱えた団長は椅子に腰を下ろした。そして地図の上にぐったりと顔を乗せる。


「何だってあの野郎はこんなに燃費が悪いんだかなぁ」

「だが、そのおかげで俺たちは怪我人のまま帰って来られた」

「それな。お前もさっさと治療に行け。牛は手配しておく」

「すまない」

「生きて帰って来たんだ。次の依頼にも行ける。休む暇なんか無い」


顔を起こしてニヤリとする団長に、副団長はやれやれと小さなため息を吐いて治療師の元へ向かった。





◆◇◆





うららかな日。


のどかな田舎道を一人の老シスターが歩いていた。その手のかごには、隣街にお使いにいったおまけの食材が溢れんばかりに入っていた。


「は~、皆さんがこうして恵んでくださるのは嬉しいのじゃが、重たい……」


いつもならもう家に帰り着いている時間ではあったが、かごを置いては休んでいたので今までかかってしまった。

まだ夕方ではないし、今日は他の仕事はないので、帰りに時間がかかっても問題はない。


「とは言え、あまり遅いと皆に心配をかけさせてしまうしの……どれ!もうひとふんばり!」


よっこいしょおっ!とかけ声をあげ、老シスターは進んだ。


そして、村の手前で行き倒れを見つけたのだった。


「もし? もし!旅のお方? しっかり!」


慌てて近寄り、様子をうかがう。

ホコリまみれのマントに服、一振りの剣、どう見ても男性、失礼とマントをめくり背中を確認、怪我は無し。

成人男性ならば老シスターには担げない。一度村に帰らねば。


そう、判断した時に、行き倒れが呻いた。


「うぅ……」


「あぁ意識が! もし!旅のお方! 今、回復魔法をかけますのじゃ、お待ちなされ!」


老シスターが魔力集中のために手を合わせると、行き倒れはシスター側の手をノロノロと動かし、シスターの持っていたかごを指した。


「……魔法は、いらない……食い物を、くれ……」


こんなよれよれなのにどうやって食べるのかと思ったが、シスターはかごの中から、野菜よりはとリンゴを取り出し自分の服で少々拭いてから行き倒れの手に乗せた。


案の定、地面に横たわったままリンゴをかじり出したのだが、行き倒れの咀嚼が早くなり、スッと上体を起こし胡座をかいた。


空いている手がシスターに差し出された。シスターはもうひとつあったリンゴを乗せる。

そして結局。

右手左手と交互に出される手に次々と野菜を乗せ、そして行き倒れはカボチャ以外の全てを食べてしまった。さすがにカボチャは生では無理なようだった。

まさかの大食いにシスターはカボチャが残った事を神に感謝した。

しかし、行き倒れが元気になったのでホッとする。


「ひとごこちつかれましたか?」


老シスターが行き倒れを窺うと、行き倒れは胡座のまま両手を地面について深々と頭を下げた。


「食べ物を恵んで下さり感謝いたします。申し訳なくも路銀も底をついてしまい、すぐにお礼をすることができないです。何か、俺が手伝える事はありませんか?」


思ったより礼儀正しい行き倒れであった。


「できれば、食事を大量に出してもらえる所がいいのですが……」


思ったよりも図々しい行き倒れであった。










聖女

。。。見た目は80才くらいのヨボヨボ婆ちゃんだけど、実は20才。

自分の生命力を魔力に変えて絶対治癒を行う、世界に一人の特殊な人。孤児なので、教会への恩返しになるように治癒術を使えるようになったが、ある意味失敗。でも明るい。


勇者

。。。25才。

燃費の悪い人。とにかく食べないと、歩くだけで倒れる。よく行き倒れているが、強い。一生食いっぱぐれないように世話を焼いてもらう為に魔王討伐に出た。



ネタ的にはハイファンタジーだけど、途中で異世界恋愛に流れるだろうなぁ…

どうやって聖女を若返らせるかで頓挫…

勇者の燃費の悪さの原因も思いつかず…




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