【現実恋愛】ストーカーさせてください!
2015年 05月16日
3,128文字
ストーカーさせてくださいと告白した女子高生と、挨拶程度ならいいよとOKした男子高校生の話。
女主人公(一人称視点)
「佐藤君、好きです。ストーカーさせてください!」
「は?」
朝の教室。
始業15分前、少なくない生徒のなか、席について友達とくつろいでいた彼に告白した。
「ぶはっ!ボサ子、いろいろ考えろよ!そんな告白あるか!」
「ストーカーって、なんでだよ!ギャハハハハ!」
「しかも皆いるのに教室って、どんな罰ゲーム!」
ギャラリーのそんな反応想定済みよ!
周りが騒がしくても、佐藤君はまだポカンとしている。
ああ!こんな至近距離でこんな表情を拝めるなんて!告った甲斐があった!
でも、さっさと説明しなければ朝礼が始まってしまう。
「私は好きだから佐藤君のことをいくらか知ってるけど、佐藤君は私を全然知らない。お友達からお願いしますでもいいけど、私に下心が有りすぎる。明らかに追いかけ回しそうだからストーカーって言ったの。そう言っておけば私が暴走した時に誰かが佐藤君を助けてくれるでしょ? ぜひとも助けてあげて。 もちろん生理的に受け付けないなら、すごく残念だけど今から近寄らない。でも許されるなら私は!毎日!佐藤君と!挨拶をし合いたいの!!」
拳を握りしめ、教室で高らかに宣言した。
「低っ!目標が低い!」
「挨拶なんて適当にできるでしょ~」
ギャラリーは失笑。
「私もそう思ってたよ! でも片想いの人にするにはハードルが高いのよ! こんなに挙動不審になるのに爽やかにおはようなんて言えるか! それだけで告白してるようなものじゃない。だったら先に告白してしまえと思ったの。でも、少しでも長く佐藤君と関わりたいから不快な思いはさせたくない! これでも色々考えたのよ。結果、とりあえず1ヶ月、ストーカー行為は学校敷地内のみ、校外では絶対近寄りません。授業、部活、あらゆる時間の邪魔をしません。なので、会ったら挨拶しても良い権利を下さい」
ストッパーになってもらう為にクラスメイトに説明をした後に、佐藤君にガバッと頭を下げる。
正直さっきから緊張で震えが止まらない。校内ですれ違うことはあっても、この距離で向かい合うことなんてなかった。
佐藤君に近過ぎる~!心臓どころか体も破裂しそう!
「……その、1ヶ月ってのは?」
佐藤君からの声掛け!今日は記念日だ!姿勢を正して目を合わせる。こんなに長く目が合うなんて、し、幸せ~っ!
「フラれるとして、そのくらいの期間は何かの言葉を交わしたいです! もちろん無視されても文句は言いません。少しでも私の事を知って欲しいです。1ヶ月後にまた改めて告白するので、返事はその時にお願いします。……どうでしょうか?」
勢いに任せてみたけど、普通はこんな告白されたら引く。
けど。
きっと。
「いいよ。挨拶くらい」
佐藤君がほろっと微笑んだ。
ギャラリーが呆気にとられる。
「ストーカーだってよ?」
佐藤君と仲のいい男子が問いかける。
「しつこくしないって言うし、俺としては特に問題ないかな?」
「お前優しいな~」
そうなの。知ってる。優しいひと。
「あ、ありがとう、佐藤君……あ、私の名前は泉雅子です。あだ名はボサ子です。髪がいつも跳ねてるからボサ子になりました。えーと、4組です。あ、」
チャイムがなる。もう体は震えていない。
「1ヶ月、よろしくお願いします!」
「うん、お手柔らかにお願いします、泉さん」
「っ!、肝に命じております!では!お邪魔しました~!」
敬礼する勢いで返事をして1組の教室を出る。
嬉しい。
「泉さん」だって。
ありがとう。私の好きなひと。
***
昼休み。生徒会のプリントを学級委員に配る仕事を会長直々に任命され、役得とばかりに佐藤君の1組に向かう。佐藤君のルーティンとして昼休みは校庭で遊んでいるから教室にはいないだろう。でも好きな人の教室ってだけでドキドキする。
朝のドキドキ再び。
私、告白したんだな…………やれば出来る子!
「こんにちはー。生徒会からのプリントでーす。江島ちゃんか渡部君いるー?」
「はーい、いるよ!ちょっと待って」
机の上にあったお弁当箱を鞄にしまってから、1組のクラス委員、江島ちゃんがこっちまで来てくれた。
「聞いたよボサ子、佐藤君に告ったんだって?やるじゃん」
「そうなの!体が飛び散るかと思うくらいドキドキしたよ!」
「……お昼食べたばかりだからその表現はやめて……」
「あ、ごめん! 犯罪宣言したのに、さらっといいよと言ってくれる良い男だよ。惚れ直したわ~。江島ちゃんも惚れていいよ!」
「何馬鹿言ってんの。そこは普通逆でしょうよ」
「だって、佐藤君の好みなんて知らないもん。知ってたら私、もうちょっと可愛くなってるはず。佐藤君にはちゃんと好きな人と付き合って幸せになって欲しいよ。まあ、今すぐは応援も祝福もできないけど……」
佐藤君の幸せを願うストーカーでありたいけど、さすがに今すぐ佐藤君に彼女ができても祝福はできない。……あ、落ち込んできた……
「ハイハイ自分で言って落ち込まない。プリント見せて」
江島ちゃんの言葉に我にかえる。仕事だった!
「はい。来週の木曜までにクラス集計して欲しいんだ。よろしくね」
「あれ?もう行くの?」
「うん?これを渡すだけだもん。なにかあったっけ?」
「だって、話しかけに来たんじゃないの?」
と、江島ちゃんは体を少しずらして、私からは死角になっていた方向を指差す。
何も考えずにその先を見たら、佐藤君がいた。
「さ!え!?な!ええええ!?こ、ここここんにちは!」
佐藤君だ!何でいるの?!
パニックになりながらも挨拶をすると、1組爆笑。
口許を片手で覆って、こっちを見てくれる佐藤君。
「こんちは。5限の宿題写しに付き合わされてるんだ」
「感謝しろよボサ子! 俺が宿題を忘れたから佐藤と会えたんだからな」
「佐藤君に手間をかけさせた野郎に感謝などするか」
「その返し!冷たい!」
「はっ!私も邪魔してるよね! じゃあ佐藤君頑張って! 江島ちゃん、ありがと!あとよろしく」
佐藤君に会わせてくれて、ありがとう!
「頑張るのは俺だっつの!」
「グダグダしながら写す宿題忘れの友人に付き合うのを、頑張って」
「ボサ子容赦なし!」
「ははっ! わかった」
佐藤君が笑ってくれた。
1組から帰る途中で鼻血が出るかと思った。
「ははっ」だって。「わかった」だって。あまりの嬉しさに目眩がする。
告白して、良かった。
***
ああ、間に合わなかった!
放課後。昇降口から、グラウンドの向こうに並ぶ部室棟の前を歩く佐藤君プラスその他が見えた。
部活前にすれ違えなかった~。でも、我慢! しつこくしない!
今日は佐藤君とたくさん喋れたから良し。明日も挨拶出来たらいいな。
バイバイ佐藤君、今日はありがとう。部活頑張ってね。
佐藤君がサッカー部の部室に入ったところで、私も校門へ向かう。
さて。夕飯は何にしようかな~?
***
「おおおおはよう!佐藤君!」
昇降口。上靴に履き替えている佐藤君に朝の挨拶。気合いが空回って派手に噛んでしまった。公認初めての「おはよう」だったのに……もっとなめらかに挨拶したかった……
「ふっ……おはよう泉さん。今日も元気だね」
噛んで良かった!笑顔が見られた!そしてまさかの一言付きですよ!?
今日は最高の1日だーーっ!!
「おい、喜びを噛みしめているところ悪いが俺らもいるのだが?」
「あまりに綺麗に無視されて逆に感動したわ」
「芸能人と一般人の差、みたいな」
佐藤君といつも一緒にいる3人がそんな事を言ってきた。
「毎日毎日佐藤君と一緒に登校しやがって、お前らいつも一緒で仲良くて羨ましいわ。誰か代われ。おはようサッカー部」
「心駄々漏れ過ぎだろ!」
「まとめられた!」
「格差が露骨!」
「好きな人とその他に差がない方が問題」
「なにこのフラれた感!」
「その他って言われた!」
「俺らの人権を認めよ!」
お前らの人権なんて同級生以上のものはない。ザ・その他だ!
まだ出ていないけどボサ子の設定が結構ハードだからか、思ったよりも進まなかった話。
脳内なら、高校生のうちはつかず離れずなラブコメな感じで(笑)、卒業式に付き合いはじめてその後遠恋になる予定だった。長い…