【異世界恋愛】成金令嬢を馬鹿にしたらボコられました。
2014年 09月14日
1,702文字
プレデビューの会で出会った成金商会の娘と三番目の王子の話。
男主人公??(王子視点)
じゃじゃ馬ヒロイン
魔法なし(たぶん)
噂の成金貴族の娘が出席しているというので、供をつれて近くまでよってみたら、豪快に食事をしていた。
淑女の定義を超えた食べっぷりに、彼女の周囲の人々とともに唖然としていると、
「皆さまも、いただいたら?とても美味しいわよ」
頬に食べ物を詰め込んだまま、器用に発音した彼女は、手元の空いた皿にどんどん取り分けていく。
深いブラウンの髪を結い上げ、明るいオレンジ色のドレスを身に纏うことから、子供らしく活発そうな印象がある。清楚さを学ぶはずの貴族子女にはなかなかない雰囲気を醸し出している。
所詮、金で爵位を買った家だ。たまたま、年頃の子が居たから、呼ばれただけ。社交辞令にのこのこと出席してきた恥知らず。
グランディアス公爵夫人主催のプチデビューの会には、10歳の貴族の子が招待される。本デビューは16歳だが、その前に顔見知りになっておいて損はないとの理由だ。
単に、夫人が子供好きということもあるが。
瞬時に彼女を見下し、思ったことを口に出してしまった。
「家畜の方が、お前よりキレイに食事をするんじゃないのか?」
周りがハッとする。何人かは僕と同じことを思ったのだろう、ニヤニヤとしている。
成金令嬢は咀嚼しながら、僕の方を見る。少しも動じず、ゆっくり飲み込んだ。
「美味しい物を美味しく食べるのは、生きる上で大事なことよ。味も解らない人間なら、服の趣味が悪いのも仕様がないわね」
更に周りで息を飲む音がした。
「なに?!」
「ワタクシは今、食事中よ。邪魔をなさらないでくれます?」
「き、貴様!無礼だろう!」
僕のお付きが怒鳴っても彼女は平然としている。
「はあ?私が今日、礼を尽くすのは公爵夫人と、私とお友達になってくれる人だけよ。貴方たちみたいに食事中に嫌味を言ってくるような失礼な輩には、非礼を返す性分なんですの~。それに、忘れているようですけど、今日、私たちは、対等な立場である、と、夫人はおっしゃいましたのよ?それを無視するのならば、さっさとお帰り遊ばせ?」
お付きのサントウスは僕より一つ上なのだが、沸点が低い。今も怒りで顔色がどす赤くなっている。僕も腹が立ったが、彼を見ると、ほんの少しだけ冷静になれる。
「無礼だと言っているだろう!こちらの方はーーー」
夫人の言葉を忘れ、サントウスが僕の身分を明かそうとすると、僕の顔に手袋が当たった。
周りがシンとする。
目の前の令嬢の左手だけ手袋がない。今その手には盛りだくさんの皿が乗ってなかったか?何もこぼすことなくテーブルの上にそれはあった。
「喧嘩なら売ってやるよ。表にでろ」
不敵な笑顔でドレスをひるがえし、令嬢がホールからテラスを越えて庭に降りる。床に落ちた手袋を踏みつけ僕もそれに続いて庭に出ると、余りのことに固まっていたサントウスが慌てて追いかけてきた。
「さあ、そっち木偶の坊からかかってきな」
素晴らしく整えられた庭園のほどよく開けた場所で、令嬢が振り返る。
「手袋が当たったのは僕だ。僕が買い取ろう」
「へ~?ただの高飛車ボンボンかと思ったのに。いいじゃん、部下の粗相は上司が始末つけないとねぇ」
「リロイ様、なりません!私がヤツの相手を、」
「暴言は、時と場所をわきまえてしなよね~。アンタのせいでご主人様が恥をかくよ。まあ、そのご主人様もセンス無さすぎの衣装で、似た者主従で良かったね。ぷぷ~」
貴族社会では見られない下世話な表情で笑う令嬢に、とうとうサントウスが飛びかかった。
いくら腹が立っても相手は一応女だぞ!と叫ぼうとした瞬間、サントウスの体が宙に舞った。
「ぐはっ!」
ドスンという音とともにサントウスが芝に叩きつけられた。
目の前の事なのに、何が起きたか解らなかった。
「兄貴たちもコレくらい吹っ飛べば、こっちも気持ちいいのになー」
成金令嬢が何やら呟くが、サントウスの加減をみるのに聞いてなかった。
「サントウス!サントウス!しっかりしろ!」
ううぅ、と唸る彼に一安心し、怪我がないか触る。
「怪我なんかさせないわよ。他人ん家で血を流したら、何を言われるか・・・おぉ、こわ。まあ、たんこぶ、アオタンくらいは覚悟しなよ」
まだ子供とはいえ、男を一人投げ飛ばしたのに、令嬢はケロリとしている。
「」
この後、なんやかんやと王子が娘の商会で修行する予定でした。
…プレデビューって何?(;´∀`)