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11話-6
刃は璃乃に向いていた
俺は璃乃を庇うようにして体を男と璃乃の間に押し込んだ
『ぐぅッ!!』
歯を食いしばり、全身に力を入れる事によって身体を固くする
それは、萎縮に近かったが
偶然にもそれが、肉体へのダメージを若干だが和らげた
だが、その腹部への衝撃によって俺の意識は一瞬、暗転した
-ガタンッ-
床に倒れた衝撃で俺は意識を取り戻した
身体が痺れて動かない
脱力したかのように身体がいうことを聞かず、
それと、同時にそれまで経験した事の無い
熱いような
鋭く激しい痛みが俺を襲った
悲鳴をあげそうなくらいの痛みだと言うのに
喉から呻き声のような物しか出なかった
その激しい痛みの中で俺が抱いた感情は憎悪だった
意識が少しずつかすれていく
璃乃と璃優の安否を気遣う余裕はなかったが、包丁は俺が抱えていたから
多分、大丈夫だなんて無責任な事を無意識に思っていた
そして、
(死ぬのか?…俺は)
なんて、きっとこんな場面ではありきたりな事を思いながら
俺の意識は世界を呪いながら深い場所へ沈んでいった
第11話 Close Memory〜閉じた記憶の中で




