1話-6
「なんだ、そうなのか」
『…玖竜
あまりこういう事言うべきじゃないのかも知れないけどさ
お前は…あんな事があったから
兄弟とかに理想を感じちまうんだよ』
「…そうかも…知れないな」
玖竜は怒るかと思ったが
少し哀しそうな顔をしただけだった
『…クロ?』
「…さて、始業式は終わったんだ
学校に留まる理由は無い
そろそろ帰るよ」
『なんだ?
そんなに急いで…』
「ちょっとね…
やる事出来たんだ」
『ふぅ…ん…』
玖竜はその言葉通り
すぐに出て行った
「…お話、終わったみたいだし、
あたし達も帰ろっか」
『あ、璃乃…』
「…理想的な妹じゃなくて悪かったね」
璃乃は嫌味ったらしい笑みを浮かべた
『なんだ、盗み聞きか?
悪趣味な』
「聞こえちゃったものは仕方ないでしょ?
耳を塞げって言うの?」
『…はいはい、わかったわかった』
「ごめんねー、理想的な女の子じゃ、な・く・て!」
…妹が女の子に変わってる
『…ふん、理想的じゃないとしたら、お互い様だろ?』
「いや、あたしは琥烏の事好きだよ」
『え?』
「別に嫌いじゃない
だから、好き」
ばつが悪くなった俺は首筋をぽりぽりと掻きながら、目をそらした
『…姉さんは何処に行った?』
「さぁ?
でも、すぐ戻ってくるんじゃない?」
『じゃあ、戻ってきたら三人で帰ろう』
第1話 三つ子