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8話-6b
俺は力なく滑り落ちるように階段にしゃがみ込んだ
不思議と怒りはなかった
ただ、虚無感…
それだけ
と、その時ポケットから財布が滑り落ちた
そして、偶然、小銭入れの部分を閉め忘れていた財布からは小銭が飛び散ってしまった
様々な音を発しながら小銭は階段の下へと転がって行く
俺はほぼ無反応のまま財布を見つめていた
多分、今の音で二人気付かれただろう
しかし、そんな事はどうでもよかった
小銭を拾うのが面倒臭い
そちらの感情のほうが強かった
俺はため息混じりに財布を拾い上げ小銭を拾う事にした
小銭を全て拾い上げ食卓のほうに向き直ると
二人は硬直していた
多分、小銭が飛び散って音を上げた瞬間からそうだっただろう
「に…兄さん…?」
『………』
「琥烏…君…?」
『………』
ただ、沈黙…
重苦しい雰囲気がその場を支配していた
「琥…」
『俺は…』
俺の言葉を発すると同時に彼女は口をつぐんだ
それがどちらだったかはその時にはわからなかった




