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1話-1
「…う…」
(…………)
「……こ……」
(…む?)
「……こう」
(…あ)
「…コウ…」
(…!)
「琥烏-コウ-!」
『うわっ!』
「…やっと、起きたか」
…彼女は半袖のセーラー服を揺らしながら、左の拳を腰に置き、右の人差し指を立てながら諭すように喋り出した
「もう、琥烏君
今日から新学期なんですから
寝坊しちゃ、駄目ですよ」
『はいはい、わかりましたよ
…璃乃-リノ-』
「ありゃ、バレた?」
『…姉さんの振りしたつもりか?
それで』
「む…やっぱり、"コレ"なんとかしなきゃ…」
璃乃はそう言うと前髪の分け目からぴょこと伸びてる毛…俗に言うアホ毛をいじり出した
彼女の寝癖でかなり頑固だ
半分伝説に近い逸話があるのだが、
まぁ、問題はそこじゃないと言うか、
俺が彼女を"見分けられる"のは別にそれが原因じゃないのだ
『…はぁ
じゃ、着替えるから』
「あ、うん
…でも、制服下だよ?」
『ん?
あるじゃねぇか』
俺は学ランを取った
「それ冬服でしょ
半袖の開襟シャツが下に…」
『…ああ、そうか』
別に着たっていいじゃないか
そんな言葉が浮かんだが、璃乃が正しい事を知っている俺は口にしなかった