not ・・・ sweet
first encounter
「最近の女の子はスゴイぞ。」
と、前の職場の同僚が息巻いていたのはずいぶん前のことだったか。
いつと比較しての最近なのかはわからなかったが、その時はただ聞き流していた。
未来は想像つかないものだ。
僕は4人の奔放な女のコたちと出会ってしまったことで、ふとその会話を思い出し納得したものだ。
きっかけはなんだったか。
そうそう、会社を辞めてとりあえず派遣で食いつなごうと応募した派遣先で乃杏を見つけた。
清楚な感じでかわいらしく、年も近かったことですぐに仲良くなった。
映画の話や、TVの話題に共通点が多く、このコに惚れるかもしれない、そうなってもいいなと思ったこともあったっけ。
時々、ランチに誘ってもニコニコついてきてくれるから、ひょっとして・・・なんて思ったのは一度や二度ではない。
でもね、世の中そんなに甘くないんだよ。
あれこれあって告白にもいたらなかった。
ある日の土曜日、僕はわずかかどうかは微妙な下心も添えて乃杏をバーに誘った。
「えー、行く行くぅー」と可愛らしく応じてくれた。
商店街を抜け、オシャレなBARのひしめく夜の街。若者やギャルで賑わっていた。
特に理由はないが、ビリヤードやダーツのある、どちらかとゆうと外国人客の多いBARを選んだ。
彼女のお酒のペースは速く、手をあげては
「はい、先生!お酒がたりません!」とおねだりする仕草がその時はかわいいと思ったものだ。
ハイピッチで飲む彼女の頬は次第にピンク色に染まり、年齢以上の色気すら感じた。
僕はこの後の展開を期待していたこともあり、じわりじわりと飲み進めていた。
数時間後、当然のごとく彼女は激酔いとなる。
こうなってくると、お持ち帰りはあきらめて連れて帰らねば、と思った矢先、
突然、彼女が手をあげた。
「はい、先生!お酒がたりません!」
ああ、またか、こりゃダメだ。と思ったら続きがあった。
「はい、告白しまーす。」
「へっ?」
「私には、好きなひとがぁ、2人いまーす。」
「はっ!?」
えっ、まさか俺はそのひとりってこと?
乃杏はふんふんと楽しそうに揺れている。
「1人目は太陽ってゆう・・・大切なひとぉ」
あ、1番目じゃないんだ、、、
「2人目はぁ、ゆうたってゆう、私のぉ、初恋のひとぉ」
2番目でもないんかい!
動作を作ったような深呼吸で大きく息を吐いたあと、告白は続いた。
「3人目はぁ、こうちゃんてゆう、学校のおともだちぃ」
えっ、2人ゆうてたやん。
「4人目はぁ、ひでさんってゆう、夜のお店のひとぉ、やあーーー」
彼女は天井を見上げて叫ぶなり、発表を満足したかのように両手をぱちぱちしていた。
もはやツッコミすら入れれない。
だが、そこで終わりじゃなかった。
テキーラを軽くあおってから揺れながら発表が続いた。
「ピーエスぅ、のりさんとりょうさんがぁ、私の生活費を出してくれるオジサンでーす。」
「私はぁ、そのオジサン2人のおかげでぇ、今ぁ、生活できていまーーす、よいしょー」
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち・・・
満足感たっぷりの告白。
よいしょーじゃないだろ。
はぁ、、、このコ、、、巷で噂?のビッチじゃねえか。
職場の清楚感はどこいった。
4位+αにすら入れてなかったし、いったい僕って何者?
なんだか急に酔いが回ってきたと言い訳し、その日は解散するしかなかった。
翌日・・・何事もなかったかのように業務に励む彼女を盗み見るかぎりはやっぱり清楚だ。
ギャップ萌えとゆう言葉があるが、この場合、あかん方のギャップだ。どっちが本性かなんて考えるまでもなく、彼女はビッチでしかない。と判断するしかなかった。
でも、しらふの人間性は悪くない。だから僕は友達であり続け、その後もダメな方のギャップに巻き込まれ続けるのだ。
乃杏は清楚ギャップビッチだが、派遣で働きながら保母さんになるために専門学校に通っている。
母子家庭で育ってきたため、あまり裕福ではない環境だったようだ。当然、仕送りも望めないため学費も生活費も自分で稼ぐしかない。「オジサンたちと身体の関係はないよ」とはゆう、真偽どうこうは置いておくとして、心は苦しんでるのかな?とも思ってしまう。そうゆう方法しか自身で見出せなかったのかもしれない。きっと平気なはずはないんだ。だから、ほっとけないんだ。きっと名前の挙がった名前の中にもそんな感じで彼女に向き合ってる人もいるのかもしれない。いないかもだが。
彼女の本心なんてわからないし、きっと僕には見せてくれはしないだろうね。
でも、彼女は彼女の価値観で彼女なりに頑張ってるんだよ、きっと。
だから僕は、この先も乃杏と仲良くしていくだろう。
これはほんの序章の序章、、、