第1話 念願の転生
「先輩!好きな女の子のタイプ教えてくださいよ!」
「ん~?大人っぽくて芯がある人かな」
そんな会話が後ろから聞こえてくる。クソが、ラブコメしてんじゃねぇよ。
てか、大人っぽくて芯があるってまんま生徒会長みたいな人が好きなんだな。
俺は目線を地面から、目の前を歩いている黒髪でストレートロングの女子に向ける。
まぁどうでもいいや。トイッター見よーっと。
俺は制服のポケットからスマホを取り出し、トイッターのアイコンをタップする。
【高校生四人が行方不明!同様の手口、同一犯による犯行か】
物騒だな。俺も高校生だから気を付けるか...って俺なんか誰も狙わないか!
.......自分で思っといて悲しくなる。
大体、こんな物騒なことなんてこんな地方じゃあるわけが―「先輩!?」
驚いて声がした方を振り向く。
「先輩!どうしたんですか!?大丈夫ですか!?」
そこには先輩と思われる男子がうつ伏せで倒れていて、うつ伏せの体を揺らす女子が居た。
「と、とにかく!救急車!救急車に―
そう言い放ちながら、後輩と思われる女子は倒れた。
「ねぇ、何が起きてるの!?」
前方を歩いていた生徒会長がこちらに詰め寄る。
「いや、俺にも何が何だか...」
トイッターのニュースを思い出す。
行方不明ってまさか.....
「生徒会長!これ...」
そう言いかけた時、俺の意識は無くなってしまった。
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というのが、異世界転生する直前の記憶だ。
で、異世界に転生した俺は―
「ネル様。招集のお時間です」
そう言って、彼女は手を差し出す。少し不満だが時間なら仕方ない。
その手に触れると視界が白く輝き.......
目を開けると、円形の机を囲むように四つの椅子がある部屋へと転移をしていた。
その内の三つは既に埋まっており、それぞれの背もたれの後ろに部下と思われる者が立っている。
「ネル様。こちらに」
彼女が椅子を引きながら言った。俺がそこに座ると、背もたれの後ろに彼女が立った。
「そろったな」
声の方を俺を含め全員が向く。そこには浮遊する目があった。
それには口は無い。だが、恐怖すら覚えるような声色の声は確実にそれから発せられている。
「ヴェルナよ、ユギロが勇者にやられたのは本当か」
「はい、魔王様。左様でございます。そして、ギルの魔石も勇者の手に渡ってしまったと考えられます」
椅子に座っていた角と翼の生えた女性が答える。
『ギルの魔石ってなんだっけ?』
『ネル様。ギルの魔石とは過去に魔王様を封印した勇者ギルの魔力が込められた宝石でございます。つまり、ギルの魔石が勇者の手に渡ってしまったという事は魔王様を封印することが可能なまでの魔力を手に入れたという事でございます。というか、こんなにも重大な事を忘れられるようでは困ります』
『いつもありがとう。セレス』
「ネルよ。お前に命を与える。勇者と接触し、ギルの魔石を奪え」
目がこちらを捉える。
「お前は他の四天王と違って正体は一切不明だ....だからこそ、できるだろう....?」
「はい。魔王様。必ずやご期待に沿って見せます」
「あぁ、楽しみにしているぞ」
その声と共に目が覚めると元の部屋へと戻っていた。
「ネル様。準備の為、休息を取った方がよろしいかと」
「分かった。そうさせてもらう」
「はい。それでは失礼します」
そう言って彼女は部屋から出ていった。
セレスの言った通り休むか...
俺はそのままベッドに倒れこみ、寝てしまった。