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自死代行  作者: 久保谷充
第一章
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第五話 後編

「………駄目ね」


芽依子が走らせていたバイクが路肩に寄り、止まった。前が見えない真紘には何のことかわからず、状況を確認しようとバイクから降りヘルメットを外した。


「これは…」


逢己橋、芦川院の周辺にパトカーと消防車が止まり、立ち入り禁止のテープが張られている。近隣は住宅街ではないため野次馬はいないが、数人の一般人が警官から聴取を受けているのが見える。


「何があったか聞いてくる」


近づこうと歩き出す真紘を芽依子が止めた。


「青少年保護条例。補導される」


「でも…」


「多分、小火で通報があったんだわ。でも大丈夫、火事は起きてない。そのうち撤収するわ」


「だから、どうしてわかるの…」


あまりに情報に置いてけぼりをくらっているが、今はそれを追及するより大事なことがある。


「これじゃ、ここに帰蝶ちゃんはいないよね、さすがに。どうする?」


「………」


芽依子は考えこんでいる様子だが、ヘルメットを外さないので表情はわからない。


「…あんたならどうする?十年ぶりに再会する人と、どこで会う?」


「帰蝶ちゃんは人に会いに行ったの?誰かと一緒なら、ここまで心配しなくても」


「質問を変えるわ。人を殺すなら、どこを選ぶ?」


「………」


あまりに物騒すぎる質問に言葉を失う。帰蝶が人を殺すというのか。それとも、殺されるのか?

信じられないという思いとパニックになりそうな神経を何とか落ち着かせて、芽依子の言ったことを冷静に考える。


「まず、人目のつかないところ。だけどこんな町じゃ、人目につく場所の方が少ない」


「ここじゃないなら、一体どこだって言うの…」


ヘルメットごと頭を抱える芽依子に何か言おうとして、ふと、あることを思い出す。


「そういえば、帰蝶ちゃんの携帯から連絡してきたね。橘さんが今持ってるの?」


帰蝶が置いていったのよ、と芽依子がスマホを取り出す。真紘に連絡してきたということは、ロックがかかっていないのだろう。「貸して」と言ってスマホを受け取る。


「これで相手と連絡を取っていたってことはないと思うわ。SNSのやり取りすら、私の知ってる人しかいないもの」


「うん。でも、何か手がかりがあるかも」


心の中で謝りながらギャラリーを開くと、そこにはずらりと写真が並んでいる。それは真紘も見覚えのある景色だった。


「音楽室の、写真…」


日常の何気ない瞬間を切り取ったような写真だ。窓から見える青空、夕日が射した教室、書きかけの楽譜が散らばったピアノ…。

帰蝶の想いが伝わってくるようで泣きたくなるが、その思いを押し殺して写真をスライドさせていく。すると、奇妙な写真が並び始めた。


「写真の写真…?」


一枚ずつ丁寧に撮られた写真は、まるで証拠写真のようだ。拡大して見るが、どれも誰が写っているということもない普通の風景のように見える。


「これ、何かわかる?」


芽依子に見せようとして、彼女がまだヘルメットをしたままなことに気づく。


「よく見えないだろうから、外しなよ」


芽依子はやや躊躇ってから後ろを向いてヘルメットを外し、なぜか再びサングラスをかけた。


「コンビニでも思ったけど、何で夜なのにサングラス?写真を見て欲しいんだって」


「…ものもらい」


それは気の毒だが、緊急事態なのだ。真紘は心を鬼にした。


「俺は見ないから、サングラス外して見てみて。何か心当たりある?」


芽依子はスマホを受け取ると、真紘に背を向けて写真を確認し始めた。わずかに芽依子の肩が上がる。


「わからないけど…。昔、帰蝶が郵便物の消印について聞いてきたことがあって、送り主のわからない封筒を持ってたことがあった。多分、帰蝶が今会いに行こうとしてる人物からだと思う」


「その中身がこれかもしれない、か。でも、特に変わった写真じゃないよね。日本家屋に庭、雪景色…猫の写真もある。これはどこだろう、南国?東南アジアのどこかかな…。雪の写真だけ、やたら多いね」


真紘が芽依子の顔を見ないようにしてスマホを受け取り再度写真を確認するが、関連性が見つけられず、手がかりになりそうにない。ふりだしに戻らなければならなそうだ。


「橘さんは、まずどうして逢己橋だと思ったの」


「…私が、帰蝶が探してる相手を、ここで見かけたの。それを伝えたら、飛び出して行ってしまって。私のせいだわ」


「気をしっかり持って。でもそれなら、僕も真っ先にここに来ると思う。この小火騒ぎは何時頃から…」


話していると、警官たちが動き出した。どうやら引き上げ作業に入ったようだ。


「離れて少し待とう」


二人はバイクに乗ってしばらく移動し、パトカーをやり過ごす。二十分程してようやく、誰もいなくなった逢己橋に到着した。

しかし当然のように何もない。バイクのライトだけが光源で、暗闇に二人で立ち尽くす。


「………」


芽依子が崩折れるようにして橋の欄干に寄りかかる。落ちるのではないかとひやりとして、思わず彼女の身体を欄干から引き離そうとして、真紘は固まった。ヘルメットを外して携帯のライトをつける。


「橘さん。やっぱり帰蝶ちゃんも、ここに来てる」


芽依子が携帯のライトに照らされた欄干を見ると、そこには一枚の写真が貼り付けられている。どこか高い建物から町を見下ろすように撮られた景色がそこにあった。


「これ、佐鷺町だよね。これが病院で…。病院がこの方角に見えるってことは…高い建物…」


真紘はどこか既視感を覚えながら、どこからならこの写真が撮れるのかを計算する。計算しながら、予感が収まらない。自分はこの景色を知っている。

冬の晴れた日、寒くないのかと聞くと、日差しがあるから大丈夫だと言っていた。病院の方角を見つめる涼平の後姿、制服が汚れるからと、そこで寝転がるためだけにジャージに着替えていた帰蝶。

全てのピースがはまるように、真紘は確信した。


「学校の、屋上」


真紘が呟くと、芽依子が即座にバイクに跨った。


「でもどうやって」


「帰蝶なら可能よ。そして私も」


生き返ったように力を取り戻した芽依子が「乗って!」と叫ぶ。真紘が後ろに乗ると、バイクは音をたてて走り出した。

ありがとう、とかすかに聞こえた気がして、大丈夫だよ、と返した。聞こえてなくても構わない。

今はただ、通いなれた場所へ一秒でも早く辿り着きたかった。









寒い、と帰蝶は思った。冬のある日本に来ても、寒いと感じたことなんて一度もなかったのに。

初めて本物の雪を見たときでさえ。

まだ秋であるはずなのに凍てついてしまいそうに冷たい風に、白い髪とスカートがなびいている。

屋上の中心で、帰蝶は空を見上げた。星が見えない。少し前にもこんな夜があった気がして、しかしすぐにどうでもよくなる。星は見えないのに月だけが煌々と輝いて、街と帰蝶を照らしている。


「帰蝶」


懐かしい、忘れられない声がする。夢で何度も繰り返し聞いた声。そしてこれは、夢ではない。


帰蝶が空を見上げていた顔をフェンスの方に向けると、そこには月に照らされて白く輝く、雪のような男が立っていた。帰蝶と同じ白い髪が風に揺れて、男が微笑む。


「大きくなったね」


「……話をするつもりはない」


帰蝶が戦闘の構えをとると、男は腕を組んで背中をフェンスに預けるようにもたれかかった。


「なぜ?せっかくの再会なのに。僕に聞きたいことはないのかい」


ここは良い眺めだと言って、男は優しげに微笑んでいる。自分によく似た顔が、笑っている。


「もう全部、昔のこと。今はただ、大事なものを守るだけ」


「大事なもの、か。帰蝶は新しい家族と幸せそうだね。兄さんは寂しいよ。お前の母は、どう思っているだろうね」


「……黙れ」


兄さんという響きに全身の神経が逆立っていく。母の最期が脳裏をよぎる。


「迎えにきたよ、帰蝶。二人で、遠くへ行こうか」


帰蝶がコンクリートを蹴る。次の瞬間には男が寄りかかっていたフェンスを足で蹴り上げ吹き飛ばしていた。屋上から放り出されそうになる身体を空中で回転させて、まだ壊れていないフェンスの上に下りる。…男が見当たらない。


「おまえじゃ僕に勝てないよ」


声がして、男は貯水タンクの上に腰をかけていた。…目で、追えなかった。


「おまえの呪いはそもそも僕のものだし」


声と同時に身体が横に吹き飛んで、身体が落ちるより先に上からの衝撃で屋上のコンクリートへと叩きつけられた。受身が取れずすぐに起き上がれないところに、さらに頭に衝撃が走る。屋上の端まで身体が転がって、ようやく蹴られたのだと理解した。

髪を鷲掴まれて、身体を起こされる。


「悪いことを色々やっているようだから、てっきりもっと呪いが強くなっているかと思ったけれど…そうでもなさそうだね。せっかく回収に来たのに」


髪が引き千切られて、頭から鮮血が散った。痛みに顔が歪む。男の手が帰蝶の首を掴んで床へと押さえつけた。


「やっぱり白には赤が映える。この光景は懐かしいね。前は赤く染まる部分がなかったから首を折ったのだけど、今日はもう少し染まってもいいのかな」


あの女みたいにさ、と男の口が弧を描く。


「白装束を着てきてってお願いすれば良かったかな。帰蝶は白が好きだろう。兄さんと同じ色だからね」


首が絞まって何も出来ない。かつての光景がフラッシュバックする。

結局、何も変わらないのか。


「雪を見に行く約束だったね。…これからは、ずっと一緒だ」


視界が暗くなっていく。そして突然、意識がはっきりした。


世界が変わっている。目の前に、苦痛に歪む自分の顔がある。

「自分」が、帰蝶の首を絞めている。思わず手が緩みそうになったとき、声が響いた。


『緩めるな』


再び帰蝶の首を強く締め上げる。帰蝶の身体が抵抗するように、自分の腕を掻いた。

…これは。

よく知っている感覚に身体が震える。これは他人の身体だ。兄の身体の中に、帰蝶はいる。


「帰蝶」


声の方に顔を向けると、そこには涼平がいた。月に照らされた姿は凛としていて、黒い影は纏っていない。


「お前に出来ないなら、俺がやる。…どうする」


涼平が静かに語りかけてくる。帰蝶は泣き出しそうになって、それでも歯を食いしばって、「わたしがやる」と、何とか声を出した。その声は、兄のそれだった。


「…っ」


首を絞める手を離すと、帰蝶の身体に入った兄は飛び起きて距離を取った。


「君は…帰蝶の敵じゃないのか」


兄が涼平を睨みつける。涼平は静かに佇むだけで、何も言わない。


「元に戻してくれないか」


「丑三つ時がくれば元に戻ります。…あと二時間ありますが」


兄が動くより先に、涼平が『動くな』と囁いた。兄は動き出そうとした体勢のまま固まり、憎しみのあらん限りに涼平を見ていたが、急に帰蝶の方へ顔を向けた。途端に優しい表情を浮かべ、その変わり様にぞっとする。


「おまえは、兄さんと一緒にいたいだけだろう。昔も、今も」


「………」


「全部必要なことだったと、ちゃんと教えるよ。わかっているだろう。僕たちは、二人だけの兄妹なんだ」


帰蝶は自分の手を見る。それはかつて、焦がれに焦がれた兄の手で、これは間違いなく自分の兄の身体だった。本能が愛しいと叫ぶ。この人を、この人だけを想っていた記憶が走馬灯のように駆け巡る。

小さな箱庭の中で、帰蝶は幸せだった。兄が世界の全てだった。日本に来てからも、兄と銀世界を旅する夢を繰り返し見ては、そのたびに涙を流さずに泣いた。

ただただ、恋しい。


帰蝶は自分が壊したフェンスの方へと歩いていく。その足はとても軽く、これなら空が駆けられるのではないかと、馬鹿げたことを考える。


「帰蝶!やめろ!」


自分の声はこんな風に他人に聞こえているのか。涼平は悪くないと言うが、そんなに良い声じゃないな、と思う。


「帰蝶!」


金切り声が響く。


もっとちゃんと、兄の大人になった姿を見ておけば良かった。月明かりに輝く兄はやはり幻想的だった。

…あの日の夜のように。

もう二度と見ることが叶わなくとも、一生忘れないだろう。


屋上の崖っぷちに足を乗せて、後ろを振り返る。兄が食い入るようにこちらを見ていて、あの夜、兄の言った「醜いな」という言葉を、その通りだなと思った。


「…さようなら、兄さん。ずっと、ずっとあなたを待ってた。いつか地獄で、あなたの名前を教えて」


帰蝶は指で自分の首を掻き切って、吹き出る血の温かさに目が眩みながら、屋上からその身を投げた。

一瞬だけ月が見えて、今日は満月だったのかと思った。













「……もういないと思った」


帰蝶が身体を起こす。傍には涼平がいて、秋のぬるい風に吹かれている。月は陰って、もう見えなくなっていた。


「兄さん、何か言ってた?」


「何も。お前こそ、何も聞かないで良かったのか。ずっと探してたんだろ」


「うん。いつか冥土で聞くから、いい」


帰蝶が立ち上がると、涼平がぽつりと呟いた。


「帰蝶は、いつか地獄にいくのか」


帰蝶は目を丸くする。何と答えたらいいのか、少し迷う。


「…これだけ自殺しておいて、さすがに天国は無理。今日こそいよいよ、殺人だったし」


兄が人間だったかどうかはわからないけど、と言うと、そうか、とだけ返ってきた。涼平は帰蝶のよく知る涼平のままで、最近の出来事が嘘のように、帰蝶の隣に立っている。


「どうして来たの」


真正面から向かい合って、問いかける。涼平は目を逸らさずに、まっすぐに帰蝶を見た。


「約束しただろ」


「…………」


久しぶりに見る涼平の瞳は黒く澄んで、純粋な動物のようだ。

この瞳を、よく知っている。


「帰蝶に出来ないことは俺がやる。俺に出来ないことは帰蝶がやる。大事な人に呪いが還らないように。呪いが返されないように。今から俺たちは、互いに世界で一番親しい人間になる」


出会ったその年の冬、初雪が降った日。

私たちは約束をした。それぞれの呪いが還る先が、返される先が、互いになるように。自分たち以外、誰も傷つけないように。

自分たちの力の詳細はわからなくとも、呪いの仕組みは槙に教わる前から、最初からわかっていた。きっと呪いとは、そういう風に刻み込まれているのだ。


「忘れたのか?」


「…………覚えてる」


約束を果たしただけだ、と涼平は何てことのないように言った。学ランのポケットに手を入れて、何かを取り出す。


「ほら、失くすなよ」


それは白いスカーフだった。飛ばされたことも、忘れていた。

帰蝶はそれを受け取って、黒いセーラー服に通す。

いつも通りの姿になった。言葉はなく、ただ無言で互いの気配を感じていた。

もう少しこのままでいたい感情を振り切って、帰蝶は強く涼平を見つめる。


「私も、約束を果たす。涼平に出来ないことを、私がやる」


「…歌うことぐらいだったんだけどな」


涼平はふらりとフェンスの方へ歩き出す。帰蝶も半歩遅れてついていく。


「俺は、帰蝶に兄は殺せないと思った。だけど違った。…帰蝶は強いな」


「涼平は、何がしたくて、何が出来ないの」


涼平の口元が何かを呟くように動く。風が涼平の声をさらっていく。帰蝶の白い髪も、風にさらわれて飛んでいく。次々と長い髪がさらわれて、暗闇に溶けて消えていった。

風が止んで、二人の間にまた静寂が訪れる。


「…兄の呪いが還ってきたのか。短いのも、まあ悪くないんじゃないか」


帰蝶の髪は兄と同じ長さまで短くなっていた。顔周りは顎のラインまでで、襟足だけ、少し長い。

ずいぶんと軽くなった頭で、帰蝶は笑ってみせた。












「ピッキングの手際が良すぎて涙が出そう…」


「うるさい。集中出来ない」


芽依子がピッキングツールを口と両手に鍵をカチャカチャ言わしている。真紘は後ろから芽依子の手元をライトで照らしながら、夏の終わりに涼平が語ったことを思い出していた。


「冗談じゃなかったんじゃん…」


「開いた!」


屋上への扉が勢いよく開く。屋上には帰蝶がひとり、風に吹かれて佇んでいた。なぜかフェンスが一部盛大に壊れていて、見ているだけで怖い。


「帰蝶ちゃん!」


芽依子と真紘が帰蝶に駆け寄る。帰蝶が振り向いて、ようやく違和感に気づく。


「あれ、髪…?」


「失恋したから、切った」


帰蝶が苦笑する。見たことのない表情の帰蝶に、二人はたじろいだ。


「無事?なのよね?もう、やめてよ、心配させないで。スマホぐらい、ちゃんと携帯しなさい!」


芽依子が帰蝶に抱きつく。帰蝶は芽依子を抱きとめて、「ごめん。もう絶対にしない」と謝った。


「…芽依子にお願いがあるんだけど」


芽依子がぱっと帰蝶から離れる。真剣な眼差しで、「全部、いいのね?」と聞いた。


「うん、すべて。ごめん、手間かけて」


「そういう約束だもの。いいわ、任せて」


それだけ言うと、芽依子はすぐに屋上から出て行ってしまった。真紘はついていくべきか一瞬迷って、帰蝶を一人には出来ないと思い、その場に留まった。


「真紘。ここまで来てくれて、芽依子を助けてくれて、ありがとう」


「いやっそれはいいんだけどさ!ちょっと、本当に色々、心臓に悪いからさ、その…」


今までにない帰蝶の雰囲気にどきまぎとする一方で、しっかり怒ってやりたい感情もある。真紘は「あー」だの「えー」だのと迷って、結局大きく肩を落とした。


「…心配するのは、友達の特権だからさ。これからはちゃんと連絡して。言えない事と言いたくない事の区別を、しっかりお願いします」


はっきり伝えると、帰蝶は豆鉄砲を食らった鳩のようにぽかんとしてから、照れくさそうに視線を落として、「わかりました。ごめんなさい」と呟いた。


「謝んなくていいけど、照れるのはやめてよ…うつる…」


「照れさせる方が悪くない…?」


二人で顔を見合わせて少し笑う。普段の帰蝶らしさが戻ってきたようで、真紘はようやく人心地がついだ。何があったのかを聞くのは、また今度でいい。


「ところで、橘さんは何をしに行ったの?そろそろ帰らないと、この屋上もピッキングも大問題だよ」


「…あと、もう少しだけ」


「ちょっと帰蝶ちゃん、あまりフェンス寄らないで!怖いから!」


帰蝶がフェンスに手をかける。空は曇天で景色は良くない。どこからか、かすかに何か焼ける匂いがする。

うっすらと煙が一筋見えた気がして、それはすぐに見えなくなった。




細々続きます

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