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自死代行  作者: 久保谷充
第一章
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黒夜

灯りのついていない暗い病室に、断続的な機械音だけが静かに空気を震わせている。機械に繋がれた少年が横たわるベッドの傍らに、暗闇よりも黒い少年が佇んでいた。


『起きてくれ』


囁くような、懇願するかのような声が響く。ベッドの少年がゆっくりと目蓋を開いた。


「………おそい。いやな、ゆめ、みた……むかしの…」


「うん。ごめん」


目を覚ました少年の声はかろうじて言葉になっているが、吹けば消えてしまう蝋燭の灯りのように弱々しい。傍らの少年がそっと身を屈める。


「呪い持ちに見つかった。帰蝶は降りた。……俺はもう、ここに来ない」


「……は」


告げられた少年は笑いたかったようだが、うまく音にならなかった。口元だけが僅かに弧をえがく。


「せいせい、する…」


「………」


黒尽くめの少年が横たわる少年の頭に覆い被さるようにベッドに肘をつき、その顔を覗きこむ。頬に、唇に、そっと触れるように伸ばされた指は、しかし触れずに離れていった。


「…いくじなし…」


どちらかの、あるいは二人共の笑う気配がする。二人の身体が離れていく。暗闇に青いワンピースが翻る。黒い学生服がゆらりふわりと舞う青を纏い、病室の外へ歩き出す。


「お前の呪いは俺が全部持っていく。いこう、アヤ」


病室には再び目蓋を閉じた少年と、心拍を刻む機械音だけが残った。






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