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兄の部屋にて

 広々としたエントランスの天井にはシャンデリアが輝き、来客用の広々ゆったりしたスペースもあった。

 それだけでも驚きなのに、デパートの案内窓口みたいにコンシェルジュが座る受付がある。


「ホテルよか凄くないですか?」


「言うな。お前はここに住むが俺は自宅に帰らなきゃな身分なんだ。凄いぞ?ここ出た後に自分家に帰るの。凄く惨めな気持ちになれるぞ?」


 虹河は一緒にデパート、高級百貨店と言い切った方が良い、凄い場所で買い物をするうちに完全に俺にくだけ切り、俺を完全に近所の小学生でしかない扱いをするようになった。

 しかし俺はそんな振る舞いを受けることこそ嬉しく感じ、フフフと笑いながら彼と繋いでいる手を強く握りしめた。


 うわ!俺の頭は虹河に撫でられた!


 顔を上げれば虹河は俺に微笑んでいて、眉には皺もよっていないし、藪にらみな眼つきだってしていない。

 そしてそんな良い顔を俺に見せた男本人は、凄く失敗したような表情に変えると、俺から顔を背けて俺達の次の行動を口にした。


「さっさと王子様がお待ちの宮殿に行くぞ。」


 殊の外早口にもなっている。

 照れやすい人?

 俺は彼にはいと答えて、彼に連れていかれるに任せたが、その数分後、俺は部屋の玄関で動けなくなった。

 大理石?とにかく高級そうな床はどこまでも続き、通常の玄関しか知らない俺はどこまで靴を履いていていいのか分からないという状態だ。


「靴はどこで脱いだらいいのですか?」


「俺はお前にいつまでもそのままでいて欲しいと思うよ。」


 虹河は俺の不安やら疑問を全てわかっていたらしく、嬉々としてこの広々した馬鹿広い玄関の上がり方を教えてくれた。


「マットが敷いてある辺りで靴を脱いで、その辺りに置いてあるスリッパを履けばいい。」


「はい。確かに解りやすく絨毯とスリッパが置いてありましたね。」


「ハハハ。初見は緊張しすぎて気付かないんだよな。」


 そうしてようやく部屋に上がりこめたのだが、虹河が俺の手を引いて崇継がいるリビングに連れて行ってくれたそこで、俺は再び借りてきた猫の気持ちを痛いくらいに感じる事となった。

 そこは小学校の狭い体育館並みの広さがあるフロアで、壁一面がガラス張りの展望台みたいになっているという、個人宅とは思えない場所だったのだ。

 そして、当の崇継は、王様の為にあつらえたかのような大きなソファにゆったりと座り、せっかくの大窓なんて無関心な様子で何かの報告書を読んでいた。


 な、何か、声を掛けなきゃ。


 もごもごしているうちに、崇継こそが俺に気が付いてくれた。

 彼は書類から顔を上げ、俺に微笑んでくれた。


「おかえり。」


「た、ただいまです!」


 恥ずかしいぐらいに裏返った大声が出てしまったが、崇継がそれを笑うのはわかるが、虹河こそ大きく吹き出すのはどういうことだ。

 彼は強面では無かったのか。


「君に弟を頼んで良かったよ。」


「どういたしまして。家具の手配は明日の昼頃には、……もう設置等を済ましてしまったのですか?」


 俺は虹河が目を向けた方角を見て、俺は断ったのに虹河こそ買えと無理矢理に選ばせたゲーム機本体が大きなモニターに繋がれていて、虹河が勝手に選んだゲームソフト等が専用の場所を作られた上に片付けられているという状況を目にする事になった。


「君達が品を選んだそこで持って来させた。それから、勉強机は僕が選んでしまったよ?英が欲しい型のものは英には小さすぎる。」


 俺はびくりとして崇継を見返した。

 高級百貨店では売っていないからと、あとで虹河が手配してくれると約束してくれた勉強机だ。


 高級百貨店で見せて貰った勉強机はどれも大きくてしっかりした造りだけれど、高さを変える事が出来ないという仕様だった。

 そこで俺は高さが変えられる机が良いと虹河に言い、虹河は俺が欲しい机がどんなものかすぐに解り、彼の家の近くの店にはあったからと、そこで買って送ってくれると約束してくれたのだ。


「でも、小さくても良いんです!」


 俺はこともあろうに、崇継に対して大声を上げていた。

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