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  作者: 知美
赤い糸‐オレンジデー‐夏伊side
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2.プロポーズ

 決心をしてから迎えた今年のオレンジデー。毎年、同じ場所だ。そこは桜がキレイに咲き誇る場所。今年もキレイに桜が咲いてくれている。その場所にオレンジ色の花束を持って、行くと、すでに愛美がいて桜を眺めていた。


(あぁ……抱き締めたい……!)


 そう思いながら、少しの間愛美を見つめる夏伊。きっと人目がなければ絶対、抱き締めてる。でも、ここは外だから我慢をして、愛美に近づき、声をかける。


「あっ、……夏伊君」


 愛美の嬉しそうな声を聞き、夏伊は嬉しくなる。そして、赤い糸から伝わってくる想い。


(はやく逢いたかった。一緒に桜を見たい)


 その素直な想いに、少しテレる夏伊。きっと、愛美にも伝わっているハズだ。夏伊の気持ちも。でも、愛美には言葉より、感情が伝わっているハズだ。

 まだ、愛美とは深い関係にはなっていないから。


「今年もキレイに咲いたな……、桜」

「……うん」


 しばらく、無言のまま桜を見る夏伊と愛美。その沈黙を破ったのは愛美だった。


「あの、ね……夏伊君」


 名前を呼ばれた。初めてではないけど、名前を呼ばれると、赤い糸からドキドキしている気持ちが伝わってくる。それを心地よく感じながら、夏伊が「何?」と言うと、愛美が夏伊の服の裾を掴み上目づかいで見つめてくる。


「あのね……今年はこれにしたの」


 そう言って渡されたのはオレンジ色のネクタイピンだった。


「ありがとう、愛美」


 それを受け取り、夏伊は手にしているオレンジ色の花束を愛美の前に差し出す。そして、こうつけ加えた。


「愛美、……オレの、花嫁になってください」


 そう言って、頭を下げる夏伊。だから、愛美がどんな表情をしているかはわからない。だが、オレンジ色の花束は受け取ってくれたようだ。そして、赤い糸から伝わってくる想いはこうだった。


(嬉しい……)


 それ以外の想いは言葉に変換されるよりも感情のまま受け取った方が速かった。そして、夏伊が顔を上げると、愛美は花束を抱き締め、涙を流していた。


「返事……、教えてくれる?」

「……わかってる、くせに……」


 愛美の言葉にニッコリと頬笑む夏伊。


「はい……夏伊君。よろしくお願いします」


 その声を、返事を聞けて幸せな夏伊。その想いが愛美にも伝わったようで、愛美が頬笑む。

 そして、夏伊は愛美をオレンジ色の花束ごと抱き締め、愛美の耳元でこう言った。


「よろしくね、オレの花嫁さん」

「はい」


 そして、見つめあい、初めてキスをした。そして、夏伊はこうつけ加えた。


「これから、覚悟してね。愛美」


 そう言って、もう一度キスをする。

 その時、風が吹き、桜の花びらが舞う。それはまるで、桜に祝福されているかのようだ。

読んで頂いてありがとうございます。

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