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  作者: 知美
赤い糸‐オレンジデー‐夏伊side
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1.夏伊の本当の気持ち

大学生の時のお話です。

 最近、愛美を見ていると、抱き締めたくなる。だからといって、そう簡単に抱き締めるわけにいかない理由が夏伊にはあった。


 高校生の時は普通に抱き締めていた。抱き締めていても、好きな愛美を“抱き締めているだけ”だった。でも、愛美に“好き”という気持ちを込めた飴を渡してからは、今までみたいに抱き締めることを戸惑う様になっていた。


(我慢できるかな?)


 夏伊には赤い糸が見える。それは誰にも言えないこと。だけど、赤い糸が繋がっている愛美は、夏伊が作るお菓子を食べることで赤い糸が見えるようになっている。だから、夏伊の秘密を知る一人だ。そして、赤い糸が繋がっているが故に、お互いの好きという気持ちが赤い糸を通して伝わってくる。だから、愛美を抱き締める度に、愛美に“好き”という気持ちを行動で伝えたくなってしまう。だからといって、その思いや感情に任せて、行動するわけにいかない。

 だから、夏伊は大学生になってからというもの、あまり愛美を抱き締めることをしなくなっていた。だが、それとは反対に、愛美はよく抱きついてくる。しかも頬を少し赤くし「大好き」と小さな声で言いながら。

 それをされると夏伊は自分の我慢が効かなくなりそうになる。


(はぁー……、どうしよう……)


 夏伊だって、大好きな愛美には触れたいし、好きという気持ちを行動で表現したい。でも、それをしたら、抑えが効かなくなりそうで怖い。


(だからといって……)


 ふと、カレンダーを見るともう四月十四日──オレンジデーが近くなっていた。

 愛美と付き合うようになってから、その日はオレンジ色の物を贈りあっていた。


(今年は何を渡そうか……)


 毎年、オレンジ色の花束を渡しているが、今回も同じもので良いのか、悩んでしまう。愛美はオレンジ色の小物を毎年、夏伊にくれる。

 夏伊は自室のベッドに寝転がり天井を見上げた。


(愛美……)


 ふと愛美の事を思い出す。それだけで胸の奥が小さな音を立てる。それを感じようと夏伊はまぶたを閉じた。


(会いたい……、いや、ずっと一緒にいたい)


 その想いに気がついた夏伊は勢い良く身体を起こす。


「よし……!」


 今年のオレンジデーはいつもと同じ様にオレンジ色の花束を渡す。そして、自身の想いをキチンと伝えようと決心した。

読んで頂いてありがとうございます。

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