うつうつおばけ4.5~五月~
私は雨に打たれながら、椅子に座っている。
いつもと同じ夢。繰り返す悪夢。
その内、ゆらゆらとやって来るだろう、うつうつおばけを待つだけの時間。嗚呼、うんざりする。
うつうつおばけを目にしたくないため、蹲って立て籠る私。
また始まる、また始まる、また始まる――私が甚振られる、この瞬間が……
――私が君と友達になるわけがない。烏滸がましい人ね。
えっ、なんで……
――僕が君に好意なんて持つはずがないだろう。君こそ、鏡を見なよ。
嘘だ、嘘だ、嘘だ……
顔を上げて、私を見つめる。そう、狐の嫁入りのように、雨に降られながらも光の中で立っている私を見る。
見れた? 立っている私を見れた。
今の私は座っている私。
ならば、なぜ? なぜ? 彼女はいる。彼はいる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。聞きたくない、そんな言葉は聞きたくない。
――友達ってのは、損得勘定でなるものじゃないの。君って、高校生にもなって、そんなことも分からないの? これだから親友がいない人は困るのよ。周りにどれだけ人を集めても、誰も君のことなんて気にしない。誰も君を大切にしないし、いてもいなくても、どうでもいいと思っている。残念。頭数を揃えても、友達に中身がないから、どうしようもないのよ。嗚呼、君と一緒ね。私と違って才能も夢も無いし――本当に可哀想ね。
――君って中学の時、僕が好きだったんだね。なのに、何故、今の僕の姿が分からなかったんだい? どうせ、多人数が僕を好きと言ったから、君も真似して同調したんだろう? 軽い、なんて軽い気持ちなんだ。それって本当の『好き』だったの? 違うよね。君の『好き』は偽物。流行の好き。飽きたら、手軽に捨てる好き。君の『好き』って、そういう安っぽくて薄っぺらいもので作られる『好き』なんだよ――本当に下らないね。
やめて、やめて、やめて。本当のことを言わないで!!
辛く、辛く、悲しく、顔を両手で覆い隠す。
――まぁ、君は好きな人を他人の評価で決めるの? 信じられない。
――へぇ、君って友達を優劣で決めるの? 言葉が出ない。
うつうつおばけの強い意思が、私の心に深く突き刺さる。
失望された。拒絶された。落胆された。
違う、違う、違う。
それを思ったのは、昔の私。現在の私じゃない。今の私は、そんな酷い考え方をしていない。
知人だって、友達だって、幼馴染だって大切にしている。
好きな人だって、ちゃんと自分自身の気持ちで決めている。
過去の私を使って、今の私を決め付けないで。
だから、会いたくなかったのに、話したくなかったのに……こんな私を誰にも見られたくなかったのに。
メチャクチャでグチャグチャになった、心の中が。
きつくて、痛くて、仕方がない。
――彼と私は永遠に離れられない恋人同士。だから、君なんてお呼びじゃないの。
醒めて、醒めて、醒めろ!
早く、早く、早く!
続く言葉なんて、知りたくないし! 聞きたくないっ!!
「……○○、魘されていたけど、大丈夫?」
どうやら、ソファで転た寝していた私を、母は揺さぶって起こしてくれたようだ。
「……はーー、ふーー、はーー……多分、大丈夫。ありがと」
目覚めさせてくれたお母さんに感謝。助かる。
あぁ、気分は最悪。まさか、うつうつおばけがやって来るなんて思わなかった。
「テーブルにノートが置いてあるけど、それ、学校の宿題?」
帰宅した母は、ソフトクリームを片手に持って、私に尋ねる。
そうだ、SNSの情報をノートに書き写していたんだった。テーブルに視線をやる。
テーブルの上の大学ノートは、ページが開いた状態であった。そして、無造作に置かれたスマートフォンが近くにある。ブラックアウトになった画面には、疲れた様子の私がうっすらと映っていた。
ノートをそっと閉じて、スマホを回収する。
母がノートに興味を持つのは困る。話を逸らそう。
「違う。それより、そのアイスって買ってきたの?」
「そうなのよ。この前、☆☆ちゃんが食べながら歩いているのを見て、お母さんも食べたくなったの。あんたも食べるなら、冷凍庫にあるわよ~」
「……うん、食べる!」
冷たくて甘いもので、ずたぼろに傷付いた精神を癒そう。
私は、よろよろと立ち上がり、台所に向かう。