うつうつおばけ1~十二月~
記号の名前は仕様です。
うつうつおばけ うつおばけ
ぼくとわたしのおはなしを
みんながひろめてくれるから
きょうもきみのゆめへあそびにいけるよ
ことりのようにあつまっておしゃべり
ゆびをさして はなでわらう
たのしい たのしい
僕の通っている学校では、うつうつおばけという名前の怪談が流行っている。
このお化けは、よくある悪霊に首を絞められるとか、階段や踏切で背中を押されるといった、攻撃的な恐怖の心霊現象は――起きない。
また、幽霊が家に憑いていくとか、誰もいないのに視線を感じるといった、目に見えない恐怖の心霊現象も――起きない。
じゃあ、全然大したことじゃないじゃん。ショボお化け、雑魚お化け、君は馬鹿にするだろう。
うつうつおばけは夢の中。眠ることで君に恐怖を渡しに行く。
――美住優雅
登校したら、なんと一時間目の授業を潰して、学年集会が行われることになっていた。
まったく、冬の体育館は寒いんだから、さっさと始めてほしいんだけど。
「そういやー、うつうつおばけが昨日、いや今日? 俺の夢の中に出てきた」
「は? ちょっとその話、やめてよ! あたし、怖い話が本当にダメなんだから」
「別にいいじゃん、そんなにヤバい怪談じゃないっぽいし。で、実際どうだったの、おばけ?」
「……噂以上にヤバいわ、あれ。まじで心がベッコベコに凹む。テンションただ下がり、鬱になりそう」
「もうやだーっ、話すなんて、最低! 卑劣! 自分の中に留めておきなさいよ」
「うわっっ、マジかー、オレの夢には出てこないでほしいんだけど……」
となりのクラスの子が、うつうつおばけの話をしている。
うつうつおばけねぇ、本当にいるのやら……眉唾物なんだけど。
だってさー、普通の怪談物と違って、現実じゃなくて夢の中のみ現れるお化けなんて、偶々・気のせいの類いでしょう。
アホらしい、寝相が悪くて、悪夢でも見たんじゃないの。
「ねぇねぇ、〇〇ちゃん、〇〇ちゃん、聞いた~?」
後ろに並んでいる◇◇ちゃんが、私の肩を軽くトントン叩く。
振り向くと、好奇心いっぱいの顔が覗く。
「聞いたって、何が?」
「〇〇ちゃんは、まだ知らないんだ。あのねー……」
私は悴んだ手を摩りながら、◇◇ちゃんに疑問を投げ掛ける。
すると、彼女は小声で、それを教えてくれた。
「……うちの学年の✕✕さん、亡くなったんだって」
――黙祷から始まった緊急の学年集会は、亡くなった✕✕さんについての話だった。