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妹の変化

シンシアが変わってしまったきっかけ……それは一体何だったのか、今でもわからない。

とりあえず謝ってみても、機嫌を取ろうとしてみてもダメだった。

シンシアに直接聞いてみても、理由は教えてはくれないまま……。


あれから数日後、あの日と同じように妹はまた突然私の元へやってきた。

無言で部屋へ入ってきたかと思うと、妹は何を思ったのか、私を()った。

あまりに突拍子な出来事で、一瞬何が起こったのかわからなかったわ。

チリチリと痛みを感じ、唖然とする。

恐る恐るに顔を上げシンシアへ視線を向けると、今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。


どうして殴った妹がそんな顔をするの、なぜこんな事をするの……?

私は痛みを堪えながら、妹を刺激しないよう笑みを浮かべてみせると宥めてみる。

けれどその様が気に入らなかったようで、妹は涙を堪えながら私を強く睨みつけた。


「……ッッ、なんで……どうして怒らないの……?やっぱり……」


やっぱり?

そう震える声で呟くと、ひどく傷ついた表情を浮かべ、逃げるように部屋から出て行った。


それから妹はどんどん変わっていったわ。

私が声をかけるとあからさまに無視をしたり、突然部屋にやってきたかと思えば室内を荒らしたりと……嫌がらせの数々。

そしてその度に、怒らないのかと問いかけてくる。


妹の望み通り、怒った振りをしようかと、考えたこともあったけれど……自然な怒りがよくわからない。

大人の世界で育って怒る人はたくさんみてきたわ。

でもその人たちは、周りから敬遠されたり爪弾きにされたり……。

それにね、何をされても怒りなんて感じないの、むしろ……恐怖と煩わしさが入り混じる。

とりあえずなぜ怒らせたいのか、皆目見当もつかないけれど、妹は躍起になっていった。


そんな妹がある日私の元へやってくると、ネックレスが欲しいとそう言った。

そのネックレスは母からお城に上がった記念にと、頂いた水晶のネックレス。

キラキラと半透明に光る水晶が美しく、子供の私にはまだ似合わない。

だから大人になるまで、と大事にしまってあったのだけれども……妹はいつ見つけたのかしら?


渡したくない、そう思ったが……先日まで仲が良かった私たちの変化に、母がとても心配していた。

これ以上いらぬ気苦労をかけるわけにはいかない、だから私は大事なそのネックレスをあげたの。

だけど妹は納得できないとの表情をみせながらも、ネックレスを奪い取った。

そして暫くすると、妹はネックレスに興味をなくしたのか……部屋の隅に乱雑に置いたまま見向きもしない。

そんな妹に何とも言えぬ感情が芽生える。

怒りではない、悲しみ……恐怖……?

私は改善する兆しはない姿に深く息を吐き出すと、遠くからじっとシンシアの姿を眺めていた。


そうして暫くすると、妹はまた私のところへやってきて、私のメイドが欲しいとそう言った。

次から次へと、私の物を欲しがる妹に頭が痛い。

もちろん妹にも専属のメイドが付いている、試しに諭してみるが、私のも欲しいのだとごねはじめる。

そんな妹に両親も困り果てて、壊れものを扱うように接しているわ。


私付きのメイドは、幼いころからずっと世話をしてくれた、第二の母のような存在。

勉強面でも強くてね、彼女にはとても世話になったわ。

だけど私は寂しさをグッと堪えると、両親の様子を覗いながら笑みを浮かべ、いいわよ、とシンシアに差し出した。


御付きのメイドが居なくなったことで、日替わりにメイドがやってくる。

だけど何だかしっくりこないから、何でも自分でするようになったわ。

普通ならすぐに新たな御付きのメイドをつけるのだが、また妹が欲しがれば同じこと。

だから私は御付きのメイドはいらないと、断っているの。

そんな私を気に入らないのか……シンシアは不貞腐れた様子で私を見つめたかと思うと、頬を膨らませプィッとそっぽを向いた。


妹が何を考え、何が望みなのかさっぱりわからない。

最初は構ってほしいのかと思ったけれど、どうも違うようだ。

関りを減らし放っておけば、直に戻るだろう……と安直に考えていたけれど、その気配もない。

外では友人が沢山いて、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべて遊んでいるみたいなんだけどね……。

私の前だけ笑ってくれなくなってしまった。


楽しく話もしなくなってしまった。

妹のあの屈託ない笑顔が懐かしいわ。

もう見れないのだと思うと、とても悲しいの。

だけどどうすれば元に戻るかなんてわからない。


間違いなく、原因は私にあるのだろう。

両親や友達、私以外の人間には、あんな可笑しな態度は見せないもの。

だけどその理由について、全く見当がつかないのよね。

だってあぁなる前日まで、仲良くおしゃべりして笑いあっていたのよ。

まぁ……どうにしろ、手を打つことも出来ないのなら、諦めるほうがいい。

それは大人たちの世界で学んできたこと。

性格が気に食わない、態度が気に食わない、そんな理由ならなおさらどうすることも出来ないのだから。


両親も親族も、城の人間も、私というイメージが出来上がっている

突然豹変すれば、両親の心配事を増やすだけになってしまうだろう。

だから笑って受け流すのが一番いいのでしょう。

私は妹へ対する感情を胸の奥へ奥へと閉じ込めると、ニッコリと笑みを浮かべてみせた。

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