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コウジマチサトルのダンジョン生活  作者: 森野熊三
第二話「コウジマチサトルダンジョンに落ちる」
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2.5・ガランガルダンジョン

読み飛ばし可。

 ルーは語る。

 一説によれば、ガランガルダンジョンが発見されたのは今から三百年近く前のこと。


 今あるガランガルダンジョン下町以前、町はもっと西のマートル湖という湖の傍にあった。

 そこからダンジョンの入り口が発見され、新しく町が造られる様になるまでには、また紆余曲折あったらしいが、伝説によれば、ダンジョンにより召喚されたとある人間の活躍があったとかなかったとか。

 この辺りの伝説は実はあいまいで、はっきりした文章での記録が無い。


 ただし、この後ダンジョンは様々な歴史の転換点で、何処とも知れない「遠い国」から、人を呼び寄せることがあった。


 何故ダンジョンが呼び寄せたと分かるのかといえば、呼び寄せられた者達が、その口で「何かに呼ばれた」と証言していたからだ。


 ちなみに、ガランガルダンジョン以外にも、世界にはダンジョンと呼ばれる場所がいくつか存在しているらしいが、どのこのダンジョンも「所有者」と言う者は、今の所存在していないとされている。


 ガランガルダンジョンでは所有権をめぐり、この周辺の領主に当たる一族、ガランガルダンジョン下町を築いた民衆、そして国教であるジスタ教教会が三つ巴の争いを繰り広げていた時期がある。

 しかしダンジョンは「まるで人間ごときが自分の所有者などと思い上がるな」とでもいうかのように、ダンジョン内に人間が入り込む事を許さない、罠やモンスターの増加現象を起こしたという。

 ダンジョンにより「遠い国」から人が召喚された事のある事件の一つがこれだ。


 ダンジョンの立ち入りが困難になった時、何処からともなく表れた人間が、ダンジョンの中に単身入り、竜の巣のある山脈頂上まで踏破した。

 その人物は竜を手懐け、人々の元に戻ってくると、ダンジョンには所有者はいない、それをこの竜たちが証明する、と宣言したのち、姿を消したとされている。


 この話はガランガルの英雄伝説の一つとされている。


 他にも、遠い国のダンジョンでは、国がダンジョンの所有を宣言し、数百の攻略部隊を編成し送り込んだところ、その編成部隊は即日中に全滅し、まるで見せつけるかのように、そのダンジョンの入り口は人骨で飾られるようになった。

 今でもそのダンジョンの入り口には、無数の髑髏が張り付いているので、この伝説のダンジョンは、死地の穴ダンジョンと呼ばれている。


 またガランガルダンジョンは、ある一定数以上の人間が集団でダンジョン攻略に臨もうとすると、途端にモンスターの出現率が上がったり、それまで踏破されていた場所の地図が使い物にならないほどに形状が変わることがある。

 この現象はたびたび記録として残っている。

 そのためガランガルダンジョンは、ダンジョン攻略のために侵入する場合、十二人までという人数制限がある。


 ダンジョン内で少人数の集団、パーティ同士が偶然合流しても、絶対に地形が変わらない人数が、十二人だった。

 それ以上多くなると、長時間行動を共にするほどに、ダンジョンが変形したり、モンスターが凶暴化することが確認されている。


 ダンジョンは常に変化する可能性を秘め、その変化にはダンジョンの意思が介在している可能性がある。

 その結論を出したのは、ルーの師の更に師だった「魔法使い」だ。


 ダンジョンに意思があるとする理由として、ガランガルダンジョンの変化は、そのダンジョンに侵入した人間たちが「どのような目的での侵入か」が大きく作用しているからだとしている。


 先のドラゴンを手懐けた人物は、ダンジョンの攻略を目的とせず、何故ダンジョンが人を拒むのか、を調べようとしてダンジョン内に入り、そしてドラゴンの元までたどり着いたとされている。

 また、ガランガルダンジョンでは、ダンジョン攻略や、ダンジョン内の生育植物の採取、ダンジョン内でのエネルギーにより結晶化した鉱石採取などの人間は、人数制限をしなければ、ダンジョンの変化を引き起こすのに対して、自然塩の採取には「一切の人数制限が必要なかった」という事が、特に大きな理由とされている。


 この自然塩が採掘できる範囲までに行くためには、ダンジョン内部を通るが、実は自然塩の採掘場所は、ダンジョンと目されている範囲外だという事も、すでに証明がされている。

 その証明が、キンちゃんが作り出した謎の物体。ダンジョン石と呼ばれる「有機物」の有無だ。


 ダンジョン石の無い部分に行くまでに、ダンジョンの中を通る事を、ダンジョンは許可している。また、塩を運び出すためのパイプも、ダンジョンは通すことを許可している。


 この塩を運び出すためのパイプは木材でできているが、これをパイプとして機能させず、木材の状態でダンジョン内に放置すると、ダンジョン石に置き換わり、更に放置すると、ダンジョンの壁に溶け込む。

 この事実を発見したのが、ルーの師匠だ。


 このことから人の「ダンジョンへの侵入の条件」の他に「道具を道具として認識」する意識、ないしはそれに準ずるものが、ダンジョンには存在しているはずだと。


 他にも動物を放置したり、金属を放置したりしたそうだが、動物の場合生きているうちはダンジョンに取り込まれず、ダンジョンの影響でモンスター化し、生存する場合はそのままモンスターとして生きる、悪素にやられてモンスター化し損ねた場合は死んでその日のうちに腐敗が始まり、溶けるようにしてダンジョン石に変化する。

 この腐敗した部分を切除してダンジョン外に出すと、ダンジョン石化は極端に遅くなる。が、それでもやはりダンジョン石化をする。

 外でさばいて肉にして持ち込んだ物は、人が所有している限りダンジョン石化はしない。

 などの様々な条件も、ルーの師により発見、明文化されている。

 それ以前はなんとなくでダンジョン内への侵入が多かったというのだから、いい加減なものだとサトルはあきれた。


 そしてルーは、その師匠の研究を発展させ、疑似ダンジョンを作る研究を任されていたという。

 しかしそれはもう過去の話。

 今は亡き師の最後の研究の引継ぎをし、師の研究の資料整理などが主な仕事になっていると、とても寂し気に語った。


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