12.5
読み飛ばし可
サトルは真っ白な世界にいた。
すぐにこれが夢だと理解する。
意識は無いはずだが、眠っている自分にかけられているだろう声が聞こえていた。
ごめんなさいや、あきらめないで、助けるから、絶対に死んではいけない、そう繰り返す少女の声。
今度はちゃんと話を聞きたいという少女の言葉に、サトルは、自分もまた彼女の話を、なぜアニスはジスタの神を信じるのかを、聞いてみたいと思った。
ぼんやりと真っ白な空間で胡坐をかくサトルの傍に、巨大な蛇が、小さなライオンが、真っ白な兎が寄り添う。
「死んだら、ごめん」
「本当にね、せっかく仲良くなれたと思ったのよ?」
ウワバミが苦笑いすると、レオがグルグルと唸る。
「アスパラベーコン食べたかった!」
「うん……俺もレオに食べさせたかった」
手元に寄ってきたベルナルドを撫でながらサトルが答えると、レオナルドは立ち上がりサトルの胸に前足を押し付け顔をのぞき込む。
「サトルは無茶するの駄目だ! 怒るぞ!」
「ごめん……無茶をしているつもりはなかった」
ただ必死だったのだ。
言い訳をするサトルの背後に、また誰か一人立った。
サトルの背に凭れる小さな体。
視界の端に金色の巻き毛が見えた。
「君は、キンちゃん?」
キンちゃんは応えない。ただ淡々とサトルを責めるように囁く。
「他の人を見捨てたら、あなただけは助けられた」
「それは絶対に嫌だったんだよ」
分かってるとキンちゃんは答える。
「そんなあなただから私は頼ったの」
でもこんなことになるなんて思わなかったと、涙声だ。
「……あのね、みんな、あなたのこと、ちゃんと好きになってくれてるよ」
無茶をしなくても、無理をしなくても、必ずしも結果が出なくても、今サトルの周囲にいる人間たちは、皆サトルを好きになってくれていると、キンちゃんは断言する。
しかしサトルはその言葉に首を振る。
「知ってる……俺が、頼りない俺を好きになれないだけ」
誰かを助けられなかった過去の自分を、どうやっても許容できない。
誰かを助けられる自分でなくてはと、サトルはきつく唇を噛む。
「自分を大事にして」
「うん……ごめんな、キンちゃん」
それが上辺だけの謝罪で、結局サトルは自分自身を好きに等なっていないことは、精霊たちにも、キンちゃんにもわかっていた。
「死んじゃだめだよ、サトル……」