Ⅰ 変化は突然に
「ねーねーあのジェットコースター乗ろうよー」
「え...ジェットコースター怖い...」
「え~もしかして怖がりなの~」
「いや、別にそんなことないって。乗ろう!」
「これ持ってれば大丈夫だから!」
そう言って水城祐菜が差し出したのは、タンポポだった。
「タンポポ?」
「そう!私の願いが詰まったお守り!」
「ありがとう!」
そう言って僕、八城浩はそのタンポポを受け取った。
今、僕は愛人、水城祐菜とデートに来ていた。
場所は遊園地。デートするところとしては無難なところだ。
そして、ジェットコースター乗り場。僕は緊張していた。
「顔が強ばってる~可愛い~」
「そ、そんなことないよ!」
「私があげたタンポポ、持ってる?」
「もちろん。」
「あれ?祐菜じゃん!奇遇だね!」
「深幸!久しぶり~元気してた?」
「おかげさまでね。」
「あれ、もしかして彼氏~?」
「そうそう。デートよ。そういうあなたもね~」
「私はもうここ何回も来てるから、あなたより色んなこと知ってるわよ。」
祐菜が話しているのは、樋本深幸。
大学からの親友らしい。
僕も祐菜とは大学からの付き合いだが、そんな人見たことない。
だけど、相手は僕の名前を知っている。
「あれ?その八城さんが持っている物なに?」
「あ、これは...」
いきなり話を振られ、戸惑っていると...
「これは私があげたタンポポ!浩がジェットコースター怖いっていうから、お守りとしてあげたの!」
「そうなんだ~いいね、彼女優しくて。あなたの感謝しなさいよ。八城さん。」
「は、はい。」
「ちょっとそのタンポポ見せて。」
「ん?あ、はい。」
「きれいね。私大学では生物の研究してたからね、こういうの興味あるの。」
「そ、そうなんですか。」
そう言って深幸さんは僕に花を返す。
「じゃあね~また降りたら会えるかもだけど。」
「うん!そちらこそ楽しんでね~」
そんな他愛もない会話。
これが平和と言うことなのだろう。
そんなことを考えていると、ジェットコースターが到着した。
「マジヤバかったわ~」
「ほんと怖かった。」
そんな会話を聞き、また緊張が戻る。
そうして僕らは、ジェットコースターに乗り込んだ。