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最高の相棒

Sherman Fireflyを受領した4人は、大規模戦闘で奮闘したようです

Sherman Fireflyがいかに素晴らしい戦車かを広く知ってもらうために書いています

つまらない上時代・兵器考証も詰めが甘いですが予めご了承ください

「被弾、炎上中!」

テリーが消火器を取り出し、消化活動を行う

幸い弾薬庫の扉は閉じており、誘爆するまでは猶予がある

エリックがもう一つ消火器を取り出し加勢する

大ごとになる前になんとか、燃え盛っていた炎は消えた

しかし、規定によると完全に鎮火したと確認できるまでは弾薬庫の操作は行えない

やることがないので、自車の被害状況を確認する

「エンジンが動かんぞ…」

エリックが絶望的な表情でそう告げる

皆が黙った

走れない戦車など鉄の棺桶も同然だ

ジョンはもはやこれまでか…と覚悟を決めた


正面の装甲板を叩く音が少しずつ大きくなっていく

いくら増加装甲で補強していたとしても、貫通されるのは時間の問題だろう

エリックが外を覗くと、光の筋がいくつも見えた

と、金属が割れる音がして、覗き窓が塞がれる

「こりゃあ追加の装甲板が剥がれ落ちたな。撃破されるのも時間の問題だ。

どうやら神様は外の景色を見ながら逝くことも許してくれないらしい。

紅茶を飲もうにもエンジンがやられてりゃ湯が沸かせねえしな…」

エリックが首を振る


突然、グレアムがハッチを閉じて車内に入った

「火災はなんとか消火しましたが、エンジンがやられたみたいです」

悲痛な顔でテリーが報告する

「そうか。ここまでよく耐えた。ここからは私たちの手番だ」

グレアムの言葉に皆が絶句した

5対1で包囲され、その場から動くことができない

ついでに砲塔旋回は手動である

鉄の棺桶と化したこの車両で、何ができると言うのだろう?

敵弾が装甲を叩き、車体が大きく揺れる

いつの間にか敵の砲弾は必中とも言える精度になっていた

金属音がするたび、次こそは貫通するんじゃないか…

とクルーは恐怖に包まれていた


「しかし車長、この有様では…」

テリーが反論する

車両からの脱出さえ選択肢に入るのではないかと聞いた

「無線を聞いたか?」

質問には答えず、グレアムが言う

「いえ…ですが」

「じゃあ、聞いてみろ」


バッテリーの電源でしばらく無線は使える

テリーはヘッドホンを装着する

グレアムがある周波数につまみを合わせた

「お言葉ですが、それは陸軍の周波数ではなく、くうg

「いいから聞いてみろ」


声が聞こえてきた

『こちらstorm5。これより友軍戦車の援護に移る。爆風、衝撃に注意せよ。オーバー』

テリーは気づいた

「救援要請が通ったのか!CASだ!友軍機が!」

CAS…近接航空支援は、対地攻撃機を使用して陸上目標に攻撃を加えることだ

戦車の装甲が最も薄い上部からの攻撃ができる

いかなる戦車でも防ぎきるのは困難だ

航空機は現在でも戦車に対する有効な打撃力である


一瞬、爆弾の風切り音がした

クルーは反射的に対衝撃姿勢をとる

それとほぼ同時に、大きな爆発音が聞こえた

ジョンが外を覗くと、敵の別働隊の2両が

原型をとどめないほどに破壊されていた

空にはタイフーンの翼がきらめいている

タイフーンはそのまま上空で旋回し、正面の3両に方角を定めた


ジョンはハッと我に帰った

戦わなければならない。生きようと足掻かなければならない

「装填!次弾装填頼む!」

テリーも急いで装填を始めた

タイフーンが機関砲で射撃したのと、17ポンド砲が弾丸を送り出したのはほぼ同時だった

着弾地点は土煙と煙幕で敵戦車の様子が見えない

しかし上空のパイロットからの報告で敵車両が撤退を始めたことを知った



1日後―

「こりゃあ酷えや…何発撃たれたんだ?」

整備兵が傷んだ装甲板を見ながら顔をしかめる

数えると34箇所の非貫通痕と2箇所の貫通痕があった

貫通したうち1発はエンジンを、もう1発は燃料タンクを破壊していた

クルーに被害がなかったのは奇跡だろう


正面は、増加装甲が剥がれ落ちていた

「溶接部分が砕け散ってるな…おや?これは?」

整備兵が詳しく見ていくと、奇妙なことが起きていたのに気づいた

増加装甲は剥がれ落ちた後も敵弾を防いでいたのだ

「エリック、女神様の起こした奇跡に感謝することだな。

装甲板が剥がれてなきゃお陀仏になってたに違いないぞ」

操縦手用の覗き窓のあたりに着弾した弾丸を、

剥がれ落ちた装甲板が受け止めていた

「奇跡って本当に起きるもんなんだなぁ」

整備兵がしみじみと呟いた


修理と整備は夜通し行われた

クルーも手伝い、朝方までに作業は全て終わった

月明かりに戦車が照らされ、光っていた

「整備ってのはいいですよ?乗り手がどんな人たちなのか、すぐわかりますからね。

あの人たちは面白かったですよ。車両を丁寧に扱うんですけどね、

結局被弾してボロボロになるんです。

メンテナンスにもこだわってましたね。必ず自分たちで確認するんだって。

そうそう、あとは紅茶もこだわってたな。

どうしてもって言うから頑張って湯沸かし器を積んだんだった」

ロンドン市内 某工業系大学教授談

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