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努力家の戦車長

Sherman Fireflyを受領した4人は、車両整備をするようです

Sherman Fireflyがいかに素晴らしい戦車かを広く知ってもらうために書いています

つまらない上時代・兵器考証も詰めが甘いですが予めご了承ください

「クライスラー社の30気筒液冷ガソリンエンジンです。

クライスラーによるとその内12気筒が動かなくなっても戦車は動かせると」

整備兵がエンジンについての説明をする


本当かどうかは知らないが、生存性が上がるのはいい事だ

グレアムは喜んだ

しかし、この戦車は被弾するような運用方法は禁物のようだ

装甲はこれまで乗っていた戦車よりは厚くなってはいるものの、

敵の砲弾の貫通力を考えると明らかに足りない

なるべく、待ち伏せや奇襲で立ち向かっていくしかない

正面戦闘になれば圧倒的に不利になる


「予備の履帯は車体正面に貼り付けて、余ったやつは砲塔の側面に」

グレアムの指示でさらに予備の転輪やスコップ、丸太を積んでいく

車内にも消火器を始めとした装備品を搭載していく



整備兵は武装の説明をしてくれた

「主武装は皆さんご存知、我が国の誇る傑作砲…17ポンド砲です!」

装甲の厚い敵国戦車に対して、王立陸軍が出した最終回答だった

ただ、戦後は20ポンド砲や105mmに取って代わられるようになる


「同軸機銃は7.62mmのM1919重機関銃で、

観測用に3発に1発曳光焼夷弾を入れています」

弾丸は光の帯を引きながら飛翔し、着弾地点において機銃の弾丸が発火する

これにより、主砲弾の大体の着弾位置を予測する


「車長用のターレットには12.7mmのM2重機関銃を搭載していて、

これは取り外しも可能です」

M2重機関銃は現在でも使用されているロングセラーである

「こちらは曳光弾は入れて欲しくないとのことなので、

弾種は全て徹甲弾か榴弾になっています」

グレアムは自車の位置を晒すことになる曳光弾が嫌いだったので、

事前に入れないよう申請していた

ただし、曳光弾がないと弾丸の飛んで行く方向がわかりにくく、

当てるのは難しくなる


「これらの射撃方法は習っていますね?

マニュアルは工具と一緒にここに積んでおきます」

整備兵は百科事典のようなマニュアルを見せながら言った

「使うことがない事を祈りますが…個人用の武器はここにあります」

車両が撃破されたり、弾薬が切れた際の対歩兵用の自衛武器だ


「それと、朗報です」

紅茶用の湯沸かし器をなんとか搭載してくれたようだ

さらに、テリーの希望で無線機の出力を上げ、バッテリーの容量も増やした

「そのかわり、操縦手席が少し狭くなっています」

整備兵が申し訳なさそうに頭を下げる

とばっちりを食らったのは操縦手のエリックだった

「新兵の頃乗った菱形戦車よりはだいぶいいぞ」

機関室と戦闘室が分かれているだけでかなり違うらしい


食堂ー

「遅くまで付き合わせて悪かったな」

グレアム達は遅めの昼食を摂っていた

「いい加減この昼食はどうにかならないんですか」

ジョンは豆の煮物が嫌いなようだ

「たくさん食べたら好きになるかもしれない。私のを分けてあげよう」

テリーは自分の分をジョンに押し付ける

「なに、10年もすれば慣れて美味しく感じるようになるさ」

そんな事を言いつつも、エリックまでもが豆の煮物をジョンの方へよこす

ジョンはうんざりといった表情だ


「午後からはゆっくり休んでくれ。明日はどうも出撃になるらしい」

グレアムらを見かけた中隊長が話しかけてくる

「新型車両の火力がどんなものか…楽しみにしているよ」


食事を終え、それぞれが兵舎の自室に戻って行った

グレアムはすぐに昼寝をするために横になった


日高く昇っていた

戦闘はもう始まっている

グレアム達が到着した頃には味方の数は半分にまで減り、戦線も崩れかけていた

必死に応戦するが、ティーガーの厚い正面装甲を抜くすべはなかった

側面に回りこもうと車両を走らせた

そうしている間にも、また何両かの味方が撃破されていく

なだらかな丘を越えて敵車両の側面を捉える


突然轟音が聞こえた

そして自車のすぐ近くの地面がえぐられ砂埃が舞う

グレアムの頭に、自分たちの車両を撃破するには十分な威力があるあの砲が浮かぶ

発煙弾を発射し、すぐに操縦手に後退を指示する

さっきまで自車がいたところには、大量の砲弾が降り注いでいる

敵の罠だった


さらに、4両の4号戦車がこちらに向かってくるのが見えた

グレアムは攻撃を断念しさらに後退、中隊長車へ指示を仰いだ

隊長車からは、「基地へ帰投せよ」と指示があった

その日の夕方、基地で知ったのは、

中隊がほぼ全滅し生き残りは自車の他に数両だという事だった


「車長!ジョーンズ軍曹!夕食の時間です!」

ジョンの大きな声でグレアムは目を覚ました

「うなされているようでしたが…大丈夫ですか?」

「問題ない、少し夢を見ていただけだ」

グレアムは汗をぬぐいながら答えた

「それより、夕食のメニューはどんなもんだ?」

ジョンが心底うんざりしたような顔で言う

「また例の豆の煮物とジャガイモ、それから食後にスコーンです」

グレアムは驚いたように言う

「スコーンが出るのか!こりゃあ楽しみだ!」

グレアムは興奮のあまりいつもより早足になった

2人は食堂へ歩いていく

スコーンの匂いとそれをはるかに上回る例の煮物の強い匂いがしてきた


「前はアフリカ戦線で戦っていたんでしょう?」

2人が食事を持って席に座ると、ジョンが口を開いた

そうだ、とグレアムが頷く

「戦果は殆どないが…学んだことは多かった」

「アフリカかぁ…砂漠での戦車戦はどんなもんでした?」

2人は、しばらく戦車談義に花を咲かせた



その後、中隊長から明日の作戦についての全体説明があった

今回はあくまで強襲偵察で、相手の実力を測るのが目的らしい

敵の方も大した戦力ではないはずだ、とのことだった

グレアムはルートを地図に描き込み、地形や道の確認を行った

そして、早めの睡眠をとることにした

ベットに横になり、目を瞑る

不思議と、夢はみなかった

「教官は随分変わり者ですね…食の嗜好も随分変わってます。 なんでも食べますね…

でも、いい意味で他の教官とは全然違うんですよ。

講義内容がとても面白いんです。あと、教本がボロボロになるまで読み込んでいますね。

すごく努力をされる教官です。でも、学生のためならいつでも時間を作ってくれて…

こういう人が上官だったら安心ですね。

しかし、通信学校出身の彼が、なぜ戦車について教えているのでしょうか?」

王立陸軍 戦車士官学校 某学生談

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