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ジョーク好きの中隊長

舞台は第二次世界大戦…

王立陸軍の戦車兵の物語である

(時代考証、戦車等の考証について不十分です。予めご了承ください)

「長旅ご苦労様、ゆっくり休みたまえ。それで、アフリカはどうだったかね?」

少し腹が出た中年の大隊長が窓の外を見ながら聞く

「アフリカではまるで歯が立ちませんでした。恐ろしく優秀な敵ばかりでして」

グレアム・ジョーンズ軍曹は数ヶ月前を思い出しながら答えた


敵は神出鬼没で、いつの間にか現れては砲撃を浴びせかけ、すぐに撤退した

追っていくと、待ち伏せした敵の十字砲火であっという間に丸焦げだ

恐ろしく優秀な指揮官が、優秀な車両と優秀な戦車兵を率いていた

こちらの指揮官も優秀で、戦車兵の質もまあ負けてはいなかった

何度「巡航戦車」を恨んだかわからない

主砲はいささか火力不足、敵の主砲の前では無いも同然の装甲

唯一の長所の機動力を生かそうにもエンジンが故障多発

同期には補充品リストに敵軍戦車の名前を書いて送った者もいたと聞く

さらに決定的だったのは、数が足りなかったことだ


「ここの敵もなかなか手強いからな、頑張ってくれ」

大隊長から配属関係の書類を受け取り、中隊本部に向かう


今度の車両は装甲が厚くて火力がありますように、と祈る

特に装甲は大切だ



中隊長は、部屋に入ってすぐ質問を飛ばしてきた


「君はどんな戦車を希望するかね?」

「豆鉄砲と紙装甲はもう懲り懲りです」

グレアムは即答した

「そうか、そんな君にいいニュースと悪いニュースがある」

中隊長はもったいぶった前置きをした

「まずはいいニュースからだ。君が乗組む車両は17ポンド砲を搭載している」

グレアムは素直に喜んだ

やっと上層部はまともな火力の戦車を寄越したか、と

と同時に嫌な予感がした

恐る恐る訊ねる

「それで、悪いニュースというのは?」

「そうだな、その砲を載せている車体はM4shamanだ

経験豊富な君には期待してるよ」

中隊長はニヤニヤしながら答えた



グレアムはその後、兵舎の自室に戻ってベットに倒れこんだ

あまりのショックで8時間ほどしか眠れなかった



次の朝、グレアムは食堂でモソモソと朝食を摂っていた

「昼食や夕食もこう美味しいといいんですがね」

トレーを持った中年と若い男2人がグレアムの周りに座る

同じ戦車に乗組むクルー達だ

「私は操縦手のエリック・ペイリン上等兵です

昔は整備兵をやってました。よろしく」

中年の男から自己紹介を始めた

「僕はジョン・チャップマン一等兵です。砲手をやります」

若い男の背の低い方が続く

「私は装填手兼通信手、テリー・クリーズ一等兵です

無線機の扱いには自信があります」

若い男の背の高い方が言う


17ポンド砲の砲弾は並々ならぬ重さである

無線はともかくそちらは大丈夫だろうか


「私はグレアム・ジョーンズ軍曹。車長としてはまだまだだがよろしく頼む」

みんなで握手を交わしあった


朝食を終えて整備兵に車庫まで案内される

「シャーマン・ファイアフライです。

上層部が17ポンド砲を戦車に載せようと色々頑張った結果、

どれも開発に失敗して、結局アメリカ製になりました」

整備兵が説明する


そんなのはどうでも良かった

グレアムは一番重要な事を質問する

「それで、そいつは車内で紅茶を楽しめるのですか?」

整備兵は残念そうにノーと言う

もともと少し無理矢理砲を乗せたのに加えて、

車体のあちこちに弾薬があり、そんなスペースは無いそうだ

「なんとか搭載できないか考えておきます」

と整備兵は奥に引っ込んでいった


車両の整備をしなくてはならない

クルーはまず車両の迷彩塗装から取り掛かった

車体は一般的な王立陸軍戦車と同じ…だが砲身だけ違った

17ポンド砲だとバレると敵の集中砲火を受けるため、

砲身の途中から色を変えて、さも短い砲身かのように偽装する

「こんなもので敵をごまかせるんですか?」

ジョンが訝しげに聞く

「わからない。でも、こういう小さな工夫が生死を分けるんだ」

グレアムはそう説明する

事実、アフリカでもそうだった

毎回の出撃で生き残る者はそんな些細な工夫にも手間を惜しまなかった

もっとも、そんな工夫も役に立たない時もあったが


「師団長ですか?第二次世界大戦の時は戦車兵だったと聞いています。

西部戦線で戦車中隊を率いていたと。その頃のことをよく話してくれます。

ユーモアがあって面白い方ですよ。部下思いで、優しいけど厳しいですね。

でも、上司が彼でよかったと思います。

彼のような上司の下でなら、働きがいがあるってもんですよ」

王立陸軍 第2機甲師団 戦車大隊長 某少佐談

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