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第五話 三歳から始める座学入門。歴史・現代篇。

 

 かつて様々な過程を経て、常世列島に発生した四つの国と四つの文明は、中世の時代に『空教』が伝来したことから二つの国が併合し、三つの国と四つの文明へと纏まり、常世列島は島内に三ヶ国が鼎立した状態になる。


 さて、それから三百年前までは仮にも常世列島の文明圏は三国でまとまり、この三国間で戦争のやり取りが行われていたが、現在の常世列島は実体は三ヶ国どころか、内部で国がぐちゃぐちゃに分裂した戦乱状態になっている。


 その後、『空教』伝来後の常世列島の歴史と、三百年前から始まった戦乱までの歴史を語る。



★☆★☆★☆★☆



『空教』の伝来によって日高国と日向国は統合し日子国が建国され、瑪瑙文明と鉄火文明は共存する形で続くことになるが、その後の歴史はおおよそ日本と似た様な歴史をたどることになる。


 まぁ七千年も続いた歴史だし、そこから先は大きな所では直接俺の生きる時代には関係無いから、そこら辺はサクッと説明するが、単純に言えば武士による政権である『幕府』が作られ、その後、豊田家によって運営されていた『端午幕府』はおよそ千年ほど続いた後に滅亡し、新たに『七夕幕府』が作られ、これもまた千年ほどして滅亡。


 こんな事が何回か続き、今から三百年前には、最後の幕府である『九曜幕府』が滅亡する。


 しかし、現在、この『九曜幕府』に代わる新たな幕府は誕生していない。


 この事が、現在、日子国のみならず、常世列島全域における重大にして深刻な社会問題、すなわち常世列島の戦国時代を招くことになったのだ。


 ただ、この『九曜幕府』の滅亡は、何故に起こったのか説明するのが難しい。

 ここら辺は、前世日本で言う所の応仁の乱に似ている。


 一言で言えば、滅茶苦茶グダグダして滅びた。としか言いようがない。


 この『九曜幕府』の滅亡を語る為には、前提として『九曜幕府』の歴史を語る必要があるので、『九曜幕府』の歴史の概略を書く。


『九曜幕府』は元々、先代の幕府である『六曜幕府』の後継組織として発生した幕府なのだが、この『六曜幕府』というのは、総評して穏健的な幕府であった。


 基本的には、『五星大陸』との貿易や、鉱山開発・農業政策などを重点的に政策を行い、主に文化の興隆と経済力の強化に力を入れた、イケイケな感じの幕府であった。

 その反面、軍事的には消極的な姿勢が目立つ、簡単に言えばヘタレな幕府であった。


 オノゴロ国と高千穂国の間に生じた外交問題は、全て金で解決する事に終始し、金で解決できない場合は『六曜幕府』側が折れるということを繰り返していた。

 これは、よく言えば昔かたぎな、悪く言えば血の気の多いキレやすい連中からしたら不満の種であり、時おり、こういう外交問題が理由で謀反が起こったが、それも全て金での示談交渉で解決していた。

 ただそれも、国に金があるうちは成立していたが、国に金が無くなればそれもできなくなる。


 という訳で、国が金を稼げなくなり、経済がどん詰まりを迎えた頃に革命が起こり、『六曜幕府』は滅亡し、『九曜幕府』が成立した。


『九曜幕府』は先代の『六曜幕府』による経済政策の反動か、異常なまでに軍事力や武力に拘り、日子国の歴史上最大の軍事規模を誇るようになった。

 

 手始めに常備軍の設置と強化を行い、各地には守護大名を置き大名配下の藩兵を私兵として使用することを認め、その代わりに国防の重責を担わせた。

 今までの経済成長に重点を置いた政策は、全て軍備増強に当てられ、常に『六曜幕府』の常備軍の数倍の兵力を確保した。

 尚武の気風を徹底的に高め、死に狂いの戦いや、士道不覚悟での切腹など、死を賭した玉砕の精神を至上とし、領土問題や国境問題には常に断固とした態度で、つまりは戦争によって決着をつけた。


 つまりは簡単に言えば、『九曜幕府』は歴代の幕府の中で一番の武闘派だったのだが、それが遠因となってグダグダした滅亡を迎えることになる。


 さて、『九曜幕府』はこうして軍事力に拘ることで繁栄したわけだが、その末期、つまりは三百年前にとある一つの事件が起こる。


 それは、ある有力大名の後継者問題であった。


 単純に有力大名の当主が死んで、次期当主が当主の弟になるか、当主の嫡男になるのかという問題であったが、なんてことはない。


 法的にも伝統的にも、この時の正当性は息子側にある。


 息子が家を継いで終わるはずであった。


 ところが、これに異議を申し立てた当主の弟は、軍隊を率いて当主の座を無理矢理に奪い取り、嫡男はこの叔父の態度に対して幕府に異議申し立てを行ったのだ。


 此処まで暴れたら、流石に幕府としても黙ってはいられない。

 実力行使に出て、叔父の方を討伐し、正式に嫡男を後継者として守護大名に据えることになる。




 普通ならば。




 ところが、当時の幕府の棟梁はとんでもない腰抜けで、強そうな方に、もっと正確に言えば、勝ちそうな方に着く、典型的な腰ぎんちゃくのごますり野郎で、幕府に泣きついて来た嫡男の意見を黙殺し、法的に不当な叔父の方を正式な守護大名として認めてしまったのだ。


 だが、これにキレたのが嫡男側のしゅうと、つまりは嫁の父だった。


 娘が不当な理由で路頭に迷う羽目になったのだ。

 幕府の重鎮でもあり、歴戦の猛将でもあったその舅は、こんなことが許されるものかと幕府に抗議に出かけ、当時の有力大名のその言葉に武家の棟梁は折れた。

 

 叔父側が違法行為を働いたとして、嫡男の方を正当な大名として認めたのだ。


 嫡男側はこれを喜んだが、叔父の方にしてみればたまったものではない。

 一度は大名として認めておきながら、あっさりと掌を返されたらそりゃ誰だってキレる。


 これを知った知り合いの有力大名と連合を組んで揃って抗議に出向く。

 一方の嫡男側も、叔父と白黒をつけるべく舅と共に有力大名との同盟を組んで棟梁の元に出向いた。


 こうして叔父側の連合軍と嫡男側の同盟軍に、揃って抗議に出向かれた当時の棟梁は、どちらにとっても都合のいいことをほざいて火に油を注ぎ、遂には叔父と嫡男に揃って「そろそろどっちの味方につくかはっきりしねえとぶっ殺すぞ!」と脅され、その翌日には逃げた。


 もう、こうなると結着のつけ方は戦争しかない。


 二人はお互いに軍隊を率いて、当時の日子国の首都であった『平穏京』で戦い、街に多数の被害を出した。


 これには、他の大名たちも黙ってはいられない。


 当時の日子国の首都には、他の大名たちの邸宅や領地が存在しており、それが戦火に巻き込まれることになるのだ。 


 流石にこの戦争を治めようと、多くの大名が自分の領地を守るために首都での戦いに参戦しつつも、二人の間に仲介に入ったのだが、それが事態を深刻化させる。


 ほかの大名たちにしてみれば、正しいのは嫡男だが、当時の棟梁が認めたのは叔父である。


 結局のところ、どちらの味方をしていいのか分からず、逃げ出した幕府の棟梁を探し出してどちらが正しいのかを問いただしたのだが、その結果、幕府の棟梁はとんでもない行動に出る。


 棟梁の地位を弟に投げ出してしまったのだ。


 こうして弟が棟梁の地位に就いたわけだが、そこでさらに厄介な問題が起こる。


 棟梁の妻が男子を出産したのだ。


 そして、棟梁は棟梁を辞める前に、元々、生まれる前から妻が産む子供を棟梁の後継者候補として認めており、もしも男子が生まれたらその子にすぐに家督を譲るという宣言をしており、それは法的にその当時から既に有効だった。


 つまり生まれた男児は、この段階で既に棟梁となっていたわけである。


 そうなると、有力大名の後継者問題に絡んで、幕府の棟梁の後継者問題まで発生する。


 どちらが正しいのかに加えて、そもそもどちらの人間を棟梁として認めればよいのかも分からず、大名の間では意見が右往左往するばかり。

 肝心の棟梁の方は、自分はもう政治とは関係ないと趣味の芸術に没頭し、我関せずを決め込むばかり。


 そして、この間にも首都での戦争は続いている。


 こうして、日子国が無意味で不毛な戦いを繰り広げて居る頃、日子国の仮想敵国であるオノゴロ国と高千穂国では、これを好機として日子国を侵略しようとする過激派とそれを止める穏健派に分かれていた。


 過激派は主に今までの鬱憤を晴らすべきだという理由からだが、穏健派は主に『空教』による秩序と調和を守ることを理由としていた。


 こうして二つの派閥に分かれた二国は内乱が起こり、戦国時代に突入した。


 ここら辺の事はザックリとしかわかんねえな。やっぱり生きている島は同じでも、違う国ってことなのかね。

 まあ、その内オイオイわかるだろう。別に知らなくたって死なねえしな。


 さて、一方の日子国であるが、オノゴロ国と高千穂国の二国が内乱に悩んでいる時も、無意味な戦いが続いていた。

 この不毛な争いに終止符を打ったのが、当時の棟梁の妻だった。


 棟梁の妻は棟梁の弟に金を渡すことで正式に棟梁の座から退位させると、関係の無い大名たちには国元に帰らせ、関係のある大名たちは全て示談と交渉で片を付け、嫡男が正式に守護大名の座に就いた。

 一方で、叔父の方は形勢不利とみて逃げ出し、伝手のある大名の家臣になって暮らしたという。


 こうして、無意味で不毛な戦いを唯々続けた結果、首都は荒れはてた上に、碌に法を守れず大名たちの手綱を取れなかった幕府は統治能力を失った。

 


 その後、辺境で巨大な反乱が二つ起こったことが切欠で、幕府の統治能力は完全に失われ、下剋上と群雄割拠の時代が日子国に訪れることになる。




★☆★☆★☆★☆



 さて、長かった歴史の解説もこれで終わりである。


 とりあえず、この歴史の中で俺が知るべき情報は数多く、とても役に立つ反面、これから生きる将来に不安は増したな。


 具体的には、魔術師が存在し、それが高い地位を得ていることは分った。

 うちの両親は二人とも魔術が使えるからな。これから魔術を鍛えたら、もしかしたら将来スゲーいい暮らしができるかもしれない。

 ただ二人とも、息を吸う様に人を殺し、アリを踏み殺す様に犯罪を行うからな。育ちがいいとは思えん。

 二人が使っている魔術が強いのか弱いのかは分からん。多少魔術が使えているだけで、イキッているだけなのか、本当に強い魔術士が何らかの理由で職にあぶれてヤバい奴になったのか。


 兎に角、そこらへんは相も変わらずにネックだな。


 しかしあれだな。やたらと続いている戦争に、絡み合った国際情勢。それに加えて俺は盗賊の子供だ。


 …………今世の俺の人生、ハードモードすぎない?


 まあいい。


 やることは変わらん。とにかくまずは強く成る。強く成って、この場所を出る。


 それ以外にやることは変わらん。クソ!!






 


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