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第三話 三歳から始める座学入門。歴史・古代篇。


 三歳になった俺は、ある程度の読み書きができるようになり、洞窟の中にある本もそれなりに読み進めるようになった。


 そこで俺はある程度の知識を蓄えることになり、そしてそれ故に大変な壁にぶち当たっていることを知ってしまった。


 まず第一に、俺がいるこの国『日子ひこ国』は、常世とこよ列島と呼ばれる島の中に存在する島国だが、この常世列島の中には、日子国以外にも三つの国があった。


 それが、『高千穂たかちほ国』と『オノゴロ国』である。


 日子国と高千穂国、オノゴロ国の関係性を説明する前に、現在、俺が知り得る限りの地理と国際情勢を一つずつ紹介して行こう。


 まず、常世列島という島は、やや日本に似ている。


 本州に当たる『豊葦原とよあしはら島』、北海道に当たる『秋津あきつ島』、四国に当たる『千秋ちあき島』、九州に当たる『長五百秋ながいおあき島』という四つの巨大な島が存在し、それが海峡を挟んで隣在した状態になっている。

 本の記述からすれば、前世の日本よりも大分こっちの島の方が広いみたいだけど。

 そこは置いておこう。


 問題なのは、国際情勢の方である。

 こっちの方は、どうも前世の日本の時よりもはるかに複雑だ。

 

 まあ、同じ列島の中に三つも国がある状態が既に複雑な状況だが、それに加えてこの国は人族と呼ばれるいわゆるホモ・サピエンス的な人種を始めとして、龍族とか魔族とか、何か色々と様々な種族が存在している。

 そこにさらに厄介になって来るのが、この国には()()()()()()()()()()()()


 この文で首を傾げた方は正しい。

 もう一度言おう。

 常世列島という島の中には、()()()()()()()()()()()が、存在している。


 なんのこっちゃという話だが、極めて単純な話である。

 元々、四つの文明と四つの国が存在していたが、そのうちの二つの国がくっついて、各自の文明だけは残しつつも、国家だけが統合されたのだ。


 文明だけ残る。という意味が分からないだろうし、そもそも四つの文明が存在している。いう意味が分からないだろうから、それを説明するためにこの国の歴史の概要を説明する。



 ★☆★☆★☆★☆



 まず初めに、現在俺が知り得る限りでは、常世列島の歴史が始まるのは一万二千年前に遡る。


 この当時、何時から住み始めたのかは不明だが、最初に存在していたのは『オノゴロ国』の前身となる様々な種族が共存していた民族である、『まほろばの民』と呼ばれる人々であったとされる。


『まほろばの民』は、前世日本で言う所の縄文人と弥生人を足し合わせた様な生活をしており、基本的には狩猟採集を中心にしつつも、農耕も行う民族であったらしい。

 文献を読み解くところによると、主に北方からこの島に流れてきた民族であるらしく、その生活領域は北方に集中していたが、それでも分布に偏りはありながらも、常世列島全域に『まほろばの民』は暮らしていたらしい。

 

 そんな中、南方の島である『長五百秋ながいおあき島』に、常世列島の更に西に存在する中華的な大陸である『五星大陸』から、とある龍族の一団が流れ着く。


 此処から先は胡散臭い話になるが、その龍族の一団は山と大地の神である『大山津見オオヤマツミ神』とその神の娘である『此花咲耶姫コノハナサクヤヒメ』と結婚した『山幸彦ヤマサチヒコ』。

 そして、海と黄泉の国の神である『綿津見ワタツミ神』とその神の娘である『豊玉姫トヨタマヒメ』と結婚した『海幸彦ウミサチヒコ』。

 この二人の子孫である『天穂日命アメノホヒノミコト』こそが、その龍族の一団を率いた頭領であり、後に初代国王となる『ニニギノミコト』の祖父であるとされている。


 さて、長五百秋島に流れ着いた天穂日命達は、当時その土地に住んで居た『まほろばの民』と同化しつつも、『五星大陸』で使用されていた『易字』を初めとする文化をもたらして町を建設し、そこで初めて常世列島の最初の国家と文明が創り出された。

 その国は、最初に龍族が流れ着き町を作った土地の名前から、『高千穂国』と名付けられ、初代国王として『ニニギノミコト』が即位する。

 高千穂国の特徴として、高千穂国に置いて王とは、常世列島に存在するほかの国とは違い、『天穂日命』の直接の子孫として直接的に外敵と戦い民を守る者とされ、その衣服や武器、防具は前世日本で言う所の古墳時代のものに酷似している。

 また、高千穂国では宝石の翡翠が高い価値を持つことから、高千穂国にできた文明を『翡翠ヒスイ文明』と呼ぶ。


 彼ら高千穂国の住民は、その服装からも分かる通り、主に狩りをして暮らしていた『まほろばの民』とは違い、遊牧民族の様に主に牧畜に主軸を置いた農業をして生活を行っていた。


 こうして『長五百秋島』に『高千穂国』が建国されたことで、『高千穂国』はその支配領域を広げる為に北上を開始する。

 彼らにしてみれば当然の流れで合ったろう。


 牧畜であれ、農耕であれ、農業をする為には広大な土地がいる。

 特に牧畜には、家畜の飼料と家畜が暮らすための土地の二つの土地が必要である。

 その為、生活の為により広大な土地を求めるのは、必然的な事となる。


 だが、先住民である『まほろばの民』にとっては、それは当然では無かった。


 彼らにしてみれば、何処からともなくやってきたよそ者が勝手に南に住み込み、いきなり自分達の住む森を切り開いていくのである。

 森の動物や植物を勝手に切り倒し、土地を奪っていく彼らに、今まで何となくばらけて暮らしているに過ぎなかった『まほろばの民』は、段々と『高千穂国』に対する敵愾心を中心にまとまっていくようになる。


 その状況で頭角を現したのが、後に『オノゴロ国』の英雄となる『蝦夷エミシ阿弖流為アテルイ』であった。

 彼は、『高千穂国』に対抗するためには、当時部族ごとに分かれていた『まほろばの民』が、部族という垣根を越えて団結する必要があると考えていたが、その考えは当時の『まほろばの民』には斬新であり、到底受け入れがたい物であり、時に同じ部族の者にもつまはじきにされるようになっていた。

 その際に出会ったのが、『オノゴロ国』初代女王・『母禮モレ』である。


母禮モレ』は、食物をこの世に与えた神である『月読命ツクヨミノミコト』の子孫であるとされ、彼女は『月読命』へ祈りを捧げる事で『月読命』のお告げを聞き、その力を行使することができる『かんなぎ』の力を持っており、その力によって多くの『まほろばの民』を導いたとされる。


 それを知った阿弖流為は母禮を己の主と定め、母禮に仕えて多くの部族を時に戦争によって滅亡させて吸収し、時に『高千穂国』の国家運営法を勉強しつつ部族同士での連合を組み、遂には『まほろばの民』のほぼ全ての部族を団結させることに成功する。


『まほろばの民』は、狩人単独で魔物や魔獣を仕留める高い戦闘能力を持つ一方で、魔石を始めとする岩石類に対して高い加工技術を持ち、金属器に匹敵する強力な石器や狩りに適した服装や装飾を創り出していた。

 彼等『まほろばの民』は、『高千穂国』の住人とは違い、主に倒した獲物の角や牙に高い価値を見出した独自の文化から、彼等の文明は『骨牙こつが文明』と呼ばれるようになる


 こうして、新たに北部を中心に固まった『まほろばの民』によって、新たな文明である『骨牙文明』が新造され、同時に、常世列島に二番目の国家である『オノゴロ国』が建国される。


 常世列島はこうして北と南で二分割されるようになり、此処から『オノゴロ国』と『高千穂国』の戦乱が巻き起こるわけだが、此処からさらに常世列島の情勢を複雑化させることが起こる。


 それが、常世列島式の魔術理論である『陰陽道』の発明である。


 この魔術の最大の特徴が、武器や道具に魔術を組み込むことができる。という事である。


 それはつまり、今まで様々な事情から魔術を使うことのできなかった人間でも、魔術が使えるようになった。という事であり、その影響は社会の様々なところに波及したが、最大の影響は、『陰陽道』の完成により、常世列島に新たな武器である『刀』が誕生したことにある。


 折れず曲がらずよく切れて、そして何より頑丈さと美しさを兼ね合わせるこの刀剣の登場は、常世列島の歴史に大きく作用した。



 具体的に言うと、『陰陽道』によって魔術を発展させる『公卿くげ』と、『刀』を使用して武術を発展させる『武士ぶし』の二つの専門階級が誕生したのだ。



 公卿と武士は、初期の頃はオノゴロ国と高千穂国の双方の国に雇われて代理戦争を行う傭兵や、中央の管理が及ばず自衛のために武装や自警団を組織した土着の豪族がその主要な構成員であったが、後にその影響力は地方において、事実上の治外法権を築き上げる程になっていく。


 やがて、公卿は独自に『陰陽道』の研究を行い、それに伴って今まで存在していた『易字』を元に新たに文字を創り出したことを皮切りに、服飾や町の造りなど新たな文化と文明が形成されていくようになる。

 そして、太陽神である天照大神の子孫である女性『日神子ヒミコ』が初代天帝『神武帝ジンムテイ』として即位し、天照大神アマテラスオオミカミを奉りその祭事を執り行う神主となり、『豊葦原島』の中部から南部にかけてと『千秋島』を支配する新国家『日高ひだか国』が建国される。

 天照大御神は、神器として赤い瑪瑙で出来た『八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマ』を始めとする三種の神器を神武帝に下賜したことから、公卿は主に瑪瑙を宝物として珍重し、彼らの文明を『瑪瑙文明』と呼ぶようになった。


 一方、武士の方はと言うと、『刀』の発明により、武器さえ優れていれば誰でも魔術が使えるようになったことで、より強力な刀や、刀を超える武器の開発に注力してくようになる。

 更には、それらの武器の扱いに長けた技術者、即ち剣士や槍術士などの『武芸者』が重用され、彼らが動きやすい・戦いやすい服装や道具が重宝される文化が形成されていくようになる。

 公卿とは違い、『武器』と『武術』の研究の方に価値観の重きを置くようになっていった武士の文明は、鍛冶技術や戦闘技術に精神性を置いたことから、『鉄火文明』と呼ばれるようになる。

 やがてこの『鉄火文明』の中で頭角を現し、強大な勢力を誇るに用になったのが、豊田とよた大和麿やまとまろという武士が棟梁となった豊田家であった。

 豊田家はオノゴロ国の南部である豊葦原島の半分を武力で制圧し、その支配領域を確固たるものにすると、自らが王として君臨した『日向ひなた国』を建国する。


 こうして、本州の中央部には魔術によって戦う術士が支配階級となる『日高ひだか国』と、武術によって身を守る剣士が支配階級となる『日向ひなた国』が建国される。


 

   ★☆★☆★☆★☆



 さて、随分と長い事この国の歴史について語って来たが、これがこの国の前史となる。


 此処から、さらにこの国の政治情勢は複雑化し、選り混沌としていく状況になる。


 

 

 

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