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史上最強の龍鬼仙人-花咲・酒丸の異世界転生珍道中ー  作者: 九蓮 開花
第二章 酒丸の剣 超絶仕事人・休庵宗修篇
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第二章 第十一話 その童子、休庵上人と手合わせ行いたるのこと。

 投稿少し遅れ終いすみません。

 新年二度目の投稿です。本当はこの話で決着着けさせるつもりだったんですけど、まだ話続きます。


「斬閃!」


 その一言と同時に繰り出された剣戟は漆黒の波導となって形を成し、休庵和尚に向かって勢いよく襲い掛かり、水飛沫をあげる様に黒い波導が山の空気の中に舞い散る。


 当たった?


 そう思ったのもつかの間だった。


「ふむ。興味深いな」


 俺の斬閃が直撃した筈の休庵和尚は、舞い上がる土埃の中で肩を鳴らしながらそう言った。


「何しろ、初めて見る類の剣技だったから敢えて食らってみたが……。なるほどなぁ、圧縮した闘気を斬撃として放出するのか。理屈の上では使えるとは思っていたが、まさかこのよわいのガキが使えるとはな。目前の敵の実力を測り取れねぇとは、剛僧の名折れだなぁ、全く」


 まるでなんて事も無いように淡々と語る休庵のジジイの様子に、俺は戦慄した。

 ありえねぇだろ?!そこらの魔獣なら一撃で殺せる類の技だぞ?それも、当たりどころが良ければ魔獣を唐竹割りに真っ二つに出来ちまう程の。

 それを直撃しといて無傷所か、半歩も動かせないのかよ?!


 格が違う。


 今の一撃だけでも、そう思わずにはいられなかった。


 余りにも違い過ぎて、どう違うのかわからない程、格が違う。


 幾らなんでも、差があり過ぎる。

 骨の髄から指先が震え出した俺は、無意識のうちにその場を一歩後ろに下がってしまう。

 そんな俺を見て、休庵和尚はただ俺を見据えて静かに言った。


「おい、どうした?それで終いか?」


 肩に一丈燈籠という大太刀を担ぎあげながらそう言ったジジイは、面倒臭そうにただ軽く自分の首筋を小さく掻いており、言葉ほどに俺に対して興味を持っている様では無かった。


 普通に考えれば見え透いた挑発だろう。


 適当なことを言ってキレさせて、動揺したところを叩き斬る。使い古された古典的な戦法だ。


 だが、目の前のジジイが口にしたその言葉の意味は逆だ。

 そもそも、俺はジジイに隙を伺われるほどに強くはない。俺とジジイの間には、圧倒的な力の差がありすぎる。だから、この言葉の意味は。


 ――――『今ならまだ見逃してやろう』。


 それは言ってみれば聞き分けの無い子供を叱る好好爺の説教であり、同時に、目の前のジジイは俺に対して親身になって心配している事でもある。

 それが異常なまでに俺のプライドを傷つけてきた。


「…………およ」


「うん?何だ?小僧?」


「……舐め腐るのも、大概にしろよクソ爺…………」


 こんなことを言っても意味はない。

 だが、俺の意思とは裏腹に言葉は勝手に口から零れだし、知らず知らずのうちに、身体中から『闘気』が湧き上がるのを感じる。

 黒い流体が煙の様に周囲に漂い始め、時おり俺や俺の持っている木刀に纏わりつき、時おり火花とも冷気とも静電気ともつかぬ力を帯びて周囲で暴れる。


 ジジイの言葉は理解できる。ジジイの心情も理解できた。


 そりゃあそうだろう。生まれてまだ数年経っていない子供が自分に挑んで、それでも自分のとっておきの刀を抜いて本気で相手取ったんだ。

 普通だったらそれで十分だ。異常性癖の持ち主でもない限り、わざわざ子供を殺したいだのと思わねえよ。目の前のジジイが、いや、……休庵宗修という男は、中身はともかく見た目は自分の孫ほどに離れているガキを相手にして、本気で殺し合いをできるような、そんなクズじゃねえだろうよ。まだ会ってから一日も経っていないが、それだけは理解できる。

 抜身の刀を手にしながらも俺を気遣うジジイを見て、その心情が、痛いほど、理解できた。


 だが、同時に、怒りが湧き上がる。




 ふざけるのは、ギャグだけにしろよクソジジイ。俺も覚悟を決めてこの場に立っているんだよ。




 テメエの心情も何も関係ねえ。今この場で俺がジジイとの戦いから逃げ出したとして、それで何が変わる?何が終る?

 今までの逃げ隠れして山の中で怯えながら暮らす生活が待っているだけだ。


 いや。それよりひどい。


 今までは人里に降りた時だけ、人里に住む連中に絡まれるだけだった。


 時にクソガキどもに意味も無く石を投げつけられ、傷つけられた。


 時に村のチンピラどもに遊ぶ金欲しさに袋叩きにされ、身ぐるみはがされた。


 そして時に村の大人どもに簀巻きにされて川に投げ捨てられ、殺されかけた。


 それでも、それらは俺が村に降りた時だけだった。


 だが、今日のこの出来事は違う。麓の村のあいつらは、今度は明確に俺を殺しに来たんだ。


 ジジイに何をどう言って頼み込んだのか知らねえが、あいつらはこのジジイに俺を殺せと頼みやがったんだ。

 今までにこの山に攻め寄せてきた討伐軍やら、凄腕の剣士やら、名のある魔術士やらを散々返り討ちにしてきた俺の両親を此処まで圧倒的な力の差で叩きのめしたジジイを、俺に送り付けてきやがったんだ。

 もう、これは完全に駆除だ。 

 あいつらにとって、俺はもうとっくに野盗だとか悪人だとかそう言う、人間としての扱いの範疇を超えているんだ。


 完全に俺を気持ちの悪い虫ケラか、薄汚い野良犬にしか見ていないんだ。

 殺したくなったから殺す。それ以外の存在価値を見出していないんだ。


 此処で生き残って、そんな奴らの元で生きろって言うのか?

 今まで以上に媚びへつらって、頭下げ回って馬鹿にされて、それでも必死に生きてる俺を戯れに殺しに来るイカレ野郎どもの顔色を窺って、それでも生きていかなきゃならねえのか?



 冗談じゃねえ。


 

 お前の方こそ、俺の事を何も知らねえ癖に、勝手に情けかけてんじゃねえよ!

 テメエ勝手な都合に俺を巻き込んでおきながら、今度はテメェ勝手な正義感で俺を振り回してんじゃねえ。




 俺は、玩具じゃねえんだよ。

 



「…………いい加減、……吠え面かかせてやるよ……。クソジジい…………!!」




 俺は手にした木刀に全身から噴き出した漆黒の『闘気』を纏わせると同時に、その『闘気』で身体中を包み込む。

 元々、考えていた手段だ。刀を『闘気』で覆うことができるのならば、全身もまた『闘気』で覆うことができるんじゃないのか?そんな疑問の元で考案自体はしていた。

 ただ、実際にそれをすると、全身の筋肉が引き裂かれるような激痛や、骨が軋み上げるような苦痛が走り、戦い以前にその痛みの所為で動くこともできなくなるので、今までは使えなかった。


 だが、今は違う。


 苦痛?激痛?そんなことに構っちゃいられねえ。


 どうせこの戦いの後に残るのは、死だ。それが目の前のジジイにどう殺されるか、それとも村の奴らのクソどもに嬲り殺しにされるかの違いでしかない。



 同じ死ぬなら、戦って死んでやる。



 その瞬間、俺の全身には筋線維を一本ずつ千切りとる様な激痛と苦痛が走り、意識と視界が白く染まってその場に膝を尽き掛ける。

 だが、俺はそれを純粋な怒りの感情だけで押し殺して獣のような絶叫を上げると、無理矢理に踏み出した一歩でその場に何とか立ち続けると、喉の奥に張り付いた声を絞り出して俺の前に立つ休庵宗修を睨みつけた。



「……何が終いか?だ……始まってすらいねえよ……!!」







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