第二章 第四話 史上最強のジジイ、暴走。
若干ダレ期に入ってしまい、あんまりいい感じの文章が書けなかったので、これから書き直すかもしれませんが、取り敢えず書き上げられたので上げます。
作品に満足行かなかったらすみません。
「俺はお前を殺しに来たんだよ」
和尚のその言葉を聞いた時、不思議と納得した。
何となく、気にはなっていた。
剛僧何て物騒な人間が山の中に入るなんてこと、早々あるわけじゃない。
戦うことが目的の僧侶である以上、此処には敵を求めて入って来たのは当然じゃないか。
そして、この山の中で剛僧を頼るほど敵になり得る存在と言えば、俺と、俺のペットと、俺の両親くらいのものだ。
なるほどなあ。つまりはあの時にククノチとか言う女神が言っていたのはこういう事かよ。なるほどなるほど。これは確かに生きているのが辛いわ。そもそも生まれたからって理由なだけでここまで馬鹿にされなきゃならない上に、命まで狙われるのかよ?
今更ながら神様相手に大見得を切って適当なことを言っていた自分がばかに思えるな。こんなことなら、あの時素直にあの女神の手下にでもなっておくんだった。そもそもこういう事情があるんだったら、俺が目につく人間を皆殺しにしても誰も文句は言わねえんじゃねえかって思うが、でもまあ、過ぎたことはどうでもいいさ。これからどうしようか。
死にたくはないが、生きていて碌な目に遭わない。だったら、早いうちに終わらせた方がいい。
「…………そうか。分かった。じゃあ、俺が眠るまでは待ってくれよ。もう少ししたら、勝手にそこらへんで寝るから、その時に頭でもかち割ればいいよ」
俺は自分でもわかるほどに渇いた笑い声を上げてそのまま地面に寝っ転がると、わざとらしく寝返りを打って和尚から顔を背けた。
もう、何もかもが面倒だ。どうでもいいし、馬鹿馬鹿しい。此処から立ち上がる気力を振り絞る事さえも億劫で、何よりも疲れた。このままここで静かに寝息を立てて、そのまま何も感じることなく静かに自分の息の根を止めたい。
心の底からそう思った。
だが、そんな俺に和尚は静かに声をかける。
「…………そうか、分った。なら、その命、俺に預けろ」
「……なんだそりゃ」
出し抜けにかけられた休庵和尚の言葉に、俺は思わず鼻で笑いながら返事した。
正直、自分でも余りに態度が悪いとは思ったが、元々俺の命を狙って来たくせに今更になって命を預けろとか意味わかんねえことを言うジジイに、これ以上、表面上でも敬意を見せるのは面倒だった。
だが和尚は、そんな俺の心情を知ってか知らずか。というよりも、端から俺の心中には全く眼中にない様に、俺の背中に向かって矢継ぎ早に語り掛けた
「どうせ死ぬって決めたんだろう?俺に殺されるって決めたんだろう?なら、その死がもう少し先に伸びてもいいじゃねえか。暫くの間、俺にその命を預けて置け。お前が今此処にいるまでにいろいろあった様に、俺も此処に来るまでいろいろあったんだ。この件に関しちゃ、ケリをつけなきゃならんことが多すぎる。だから、結着がつくまでお前が死ぬのは待ってくれ」
まるでこっちの迷惑なんざ何も考えていないような、自分の都合だけを並べたような言葉に、俺は不貞腐れたガキの様に投げやりに返事する。いや、そもそも今の俺はガキか。
「なんでだよ、別に今ここで俺が死んだところで何も問題はねえだろ。あんたは俺を殺す為に来た。俺はあんたに殺される。それで何もかも終わりだ。あんたがけりを付けたいことがあるんだったら、その後にどうとでもすればいいさ」
「いいや、あるさ問題。俺が嫌だ」
何もかもどうでもよくなった俺が適当に返事をすると、それに対して和尚はあっさりと言い切った。
「お前を殺してハイ終わり。って、そんな形の結着は、俺が嫌だ。俺が納得しねえ。だからお前も生きろ。こいつは命令な。お前が拒否する事は許さん」
「許さんって。何でお前みたいなジジイがそんなことを言うんだよ?俺に何の関係もねえだろ!元々俺を殺す気で俺の前に現れたくせに、いきなり嫌になったからやめるとか!なんだよそりゃ!!お前等の方こそ俺を何だと思っているんだ!
俺にだって気持ちってあるんだよ!俺にだって心ってあるんだよ!俺だって生きてんだよ!命があるんだよ!テメエらの勝手な都合で振り回されて笑って済ませられるかよ!そこまでして殺したいんだったら殺せばいいだろ!」
いい加減、勝手な理屈を押し付けてくる和尚が苛立たしくなり、俺は思わず起き上がりざまに吐き捨てる様に食って掛かった。
もういい加減にしろよクソ野郎ども!
こっちは好きで死んだわけでもないのに、いきなり死んで訳も分からんところに転生されて、その上、転生先では滅茶苦茶な理由で騙されて、殴られて、殺されかけて、最後には本当に殺しましょうとか言っておきながら、今度はやっぱ辞めます?ふざけんなよ!俺の命は虫けらかなんか!
「そこまで死んでほしいんだから死んでやるんだよ!その代わり覚えてろよ!全員呪ってやるからな!この山に住む奴らも、この村に住む奴らも、全員皆殺しにして地獄の底で苦しみ続けるまで呪い続けてやるからな!今まで俺に関わった奴らは死ぬまで許さねえ!死んでも許さねえ!死んだら生き返らせてでもぶっ殺してやる!二度と!二度と!!二度と!!!二度と!!!!生まれて来たくなるくらいに絶望させてやるよ!」
ああ。今ほど人を殺したいと思ったことはない。目につく人間は全員殺してやりたい。前世を合わせても尚、未だかつて味わったことのない感情だ。正直、自分でも何を喚き散らしてるのかもわからねえ。
俺自身に分かることは、もう何もかもが憎いってことだけだ。
俺の憎しみに呼応するように、身体中から『闘気』が湧き上がるのを感じる。
ああ、ああ。もう、何もかもぶっ壊れて死んじまえ。
そんなことを思いながら和尚の胸倉に殴り掛かった俺は、次の瞬間、和尚に頬を思いっきりひっぱたかれて勢いよくその場を弾き飛ばされた。
一瞬、何が起こったのか理解できなかったが、次第にその頬にじわじわと染み渡る熱い痛みが、何が起こったかを理解させてくる。
やがて俺は自分に何が起こったのかを理解すると同時に、和尚に対して怒りと憎しみが煮え滾って来る。野郎!ふざけやがってこのジジイ!そこまでやるんだったら、徹底的にやってヤル!まずは手始めにてめえをぶっ殺してやる!
だが、そんな激情を滾らせる俺の前で和尚は驚くほど大きな音を立てて膝を叩くと、今までに聞いたことも無い様な腹の据わった大声を上げた。
「一々喧しいんだクソガキい!んなもン知るか!俺は休庵宗修だ!その俺がそう決めたんだ!それ以上の理由なんざ入らねえ!とにかくお前が死ぬのは許さん!以上!」
鼻息を盛大にならして、理屈になっていない理屈を怒鳴る和尚の姿に、俺は呆気にとられて口を開けることしかできない。
「取りあえず、まずはお前の家に俺を連れていけ。話はそこでしようじゃないか」




