スラム街の健気な少女に妖精が聖なる力を与えたら国が滅亡した
ここは精霊宮殿。きらびやかな装飾に彩られた、神々の住まう聖なる地だ。
巨大な神殿は聖なる光で満ち溢れ、どこからか女神が奏でているであろうハープの音色が聞こえてくる。
そしてその中でも一番の聖地とされるのがこの王の間だ。王座の後ろからは後光が差し、眩しさで顔の見えない巨大な精霊王がそこに座っていた。
そこに一人の妖精が精霊王に謁見していた。
土下座。
そう、土下座である。最大限に自己の過ちを謝るときにするあの屈辱的な行為を、その妖精はしていた。
「えーと。それでお前さんはその子に加護を与えたと?」
「はい! 本当にすみませんでした!」
問いかけたのは他でもない精霊王その人である。
「いや、話を聞いている限りだと全く問題ないんじゃがな・・・」
「はい。この話には続きがありまして・・・そこからです。問題が起こったのは」
そう言ってから土下座をしていた妖精はことの顛末を話し始めた。
ーーー
私は、この荒れた時勢を正す使徒を探すために人間の国に行きました。
初めはそんなのすぐに見つかるだろと思っていたのですが、いえいえ、チョロそうだとは思ってなかったですよ。想定より時間がかかりそうだと危惧しておりました。ええ、そうです。
それというのも、街を歩く人々全てが欲望に満ち溢れていたからです。純粋な気持ちをもつ人間がいませんでした。ろくな人間がいなかったのです。
そこで、私はターゲットを子供に絞りました。
町の子供を探そうと移動し始めたとき、私は気づきました。私はいつのまにかスラム街の中にいたのです。ああ、なるほどだから道端に立つ女性の露出が多かったのか、と納得しまして、いえいえ、そんなんじゃないですよ。真面目に探しておりました。
いやいや、本当に。本当ですから。
本当ですから!
そう! そこで! なんと!
私は路地裏で今にも襲われそうな少女に出会ったのです。少女は涙を流しておりましたが、彼女の感情は、疑問や諦観、幸福への渇望なとなど、純粋な幸せを願うものであったので、私は彼女を使徒に選ぶことに決めました。
そして、彼女を襲おうとしていた男どもを追い払い、彼女と契約を交わしました。
ここまではいいのです。
ーーー
「ありがとうね。妖精さん。私を聖女にしてくれて」
「いえいえ、良いのです。あなたならこの世界を、変えられると思っただけですから。この世界がもっと幸せで満ち溢れたら、私達精霊もうれしいのです」
「んふふ。ありがと」
そう言って彼女は笑った。一輪の花がパッと咲いたようだった。
彼女はスラム街にいて薄汚れていたときにはわからなかったが、透き通るようなきめ細かい金髪と、エメラルドのような澄んだ緑の目をもっていた。そして顔はあどけなさを残しながらも、すでに大人の色気を感じさせるような、整った顔立ちをしていた。
一言で言うならば、聖女、萌え。
ここは人間の王国にある王城の一室だ。明日、彼女は王に聖女に任命される任命式に出席する。
「かわええ・・・こりゃ正解だったな。かわいい聖女とか何だよ、十四歳とか何だよ。ただただ無敵でしょ」
「ん? 妖精さん何か言った?」
「いえいえ、何も。いや、明日の式が良いものになればよいと願っただけですよ」
「そう? ・・・そうだね」
「んふふ・・・きっと、明日の式は良いものになるよ。妖精さん、楽しみにしていてね」
「はい! 」
また可憐な一輪の花が咲いた。
「かわええ」
ポツリとまた妖精が彼女に聞こえないくらいの声で呟いた。
そうして任命式前日の夜はふけていった。
ーーー
どこかで赤ん坊の鳴き声が聞こえる。他の方向からは複数人の男が怒鳴りあう声が聞こえる。近くの家からは娼婦の喘ぎ声が聞こえる。
世界はざんこくだ。
そのことを一番初めに教えてくれたのは、他でもない私のお父さんだった。
ある日お酒くささを漂わせて帰ってきたお父さんが私をみた。そして二チャリと音がつきそうな顔で笑った。まるで獣のような目だった。
その日を境にお父さんは事あるごとに私に暴力を振るうようになった。性的暴力。レイプだ。
やめて、と泣いても、叫び声をあげても、お父さんは私を執拗に、丁寧に、獣のように犯してくれた。私は毎回、私の中の何かがすり減っていくのを感じていた。
それで、お父さんを殺したのはいつだっけ? 背中に隠したナイフで滅多刺しにしたんだっけ? まず目を刺して、そしてのどぶえを掻き切ったんだった。
驚くほど血が出て、あったかくて、気持ち良かった。
私の中で今まで私を縛りつけていた鎖が壊れた音がした。
がしゃん。
そして、私は一人になった。スラム街で一人になるのは絶対にいけないものだが、私は一人になるしかなかった。人が信じられないからだ。
人をたくさん殺さなければならなかったし、腐ったものだろうと得体の知れない虫だろうと、喜んで食べなければならなかった。
それでも、私は体を売ることだけはしなかった。それだけはもう嫌だったのだ。なぜなら、お父さんのおかげで男という生き物には恐怖を感じるようになってしまったからだ。
また、人を殺したほうが気持ち良いからだ。
殺し方が悲惨であればあるほど、私の未来は明るくなる。
ナイフでかき混ぜればかき混ぜるほどに、私にもいつかくる死が相対的に苦しいものではなくなる。
私はだんだんと強くなっていった。
しかし、いつの世も女子供は弱いもので、簡単に他者に喰らわれる。それは私が許せない唯一のことだった。
だから今にもレイプされそうな女がいれば、レイプしようとしている男が複数でも、自分の身を危険に晒してでも殺しに行った。
悪を裁く、それだけがこんなクズな私の唯一の誇りだった。
だから、もし私がスラム街で生き残って、今よりもずっと強くなったら、この世界を変えよう。弱者が蹂躙されないように、食い散らかされないように。
優しい世界を作ってやろうと、夢を見るように思っていた。
その夢はある日突然に、現実味を帯びた。
ある日の午後、とある仕事を終えた私は家路についた。そこで、男どもに囲まれた。その男達は、全員お父さんのような二チャリとした笑顔を浮かべていた。
お父さんは、殺さなきゃ。
そう思い、私は男の一人にナイフで飛びかかったが、何かで殴られて吹き飛ばされてしまった。私は背後から心臓を突き刺すのは得意だが、タイマンや他対一になるとリーチの差で不利なのだ。
私はあっという間に取り押さえられた。抵抗してもビクともしない筋肉が何本も私の細い手足を拘束した。
終わった。ただそう思った。
私は殺されるだろう。ボロ雑巾のようになるまで使われて、あとはポイだ。
死ぬ。無残に。
・・・
・・・・・・なんで?
なんで? なんで私が死ななければならないのか。なぜ? ただ生きてきただけなのに、その道に落ちていたウンコを道の端に蹴り飛ばしたりはしたけど、悪いことはなにもしてないのに。正しいのに。
なぜ、なぜ? 私が女だからか? 女だったら犯されても文句を言わず生きなければならないからか?
なぜ? 人を殺してはいけない、から?
嘘をつけ。殺さなければ死ぬだけだった。残酷に使い捨てられるだけだった。
なら、なぜ?
いやだ。
死にたくない。
私は私で生きていたい。
・・・
そのとき、風が吹いた。一人の男の耳が切り飛んだ。
わたしの両の手にちょこんと乗るくらい小さな妖精さんの仕業だった。
彼の魔法で私は間一髪助かったのだった。
そして彼は私に加護を与えるから世界を良くしてくれ、と言った。
私は聖女になることにした。
ーーー
おはよう、ウンコみたいな世界。
私は信じられないほど柔らかい王城のベッドで、朝のまぶしい日差しを受けて目をさました。窓の外ではチュンチュンと小鳥がないている。
今日私はこの王国を滅ぼす。
カチャカチャと準備をしていると、妖精さんがなにか口を出してきた。
「あ、あの・・・聖女さま? なんでナイフを服の下に忍ばせているのですか? あとどこでそんな数のナイフを? 」
「妖精さん、おはよう。昨晩はよく眠れたかしら?」
「お、おはようございます。あ、あの。あれ?」
「わたしはとてもよく眠れたわよ。ワクワクしすぎて眠れないと思っていたのに。あまりにも気持ちいいベッドだったから」
「あれ? なんで? ちょっと動けないんですけど・・・」
妖精さんは身をよじらせてなんとか拘束をとこうとしているが、無駄だ。なぜなら、わたし特製の聖なる力で縛りつけておいたからだ。彼は小さな体を包む白い光に戸惑っていた。
聖なる力は妖精さんと契約したときに得た力だ。精霊王から分け与えられた力だそうで、ほんとに何でもできる万能の力だ。
「わたし今日はものすごく調子が良いの。よく眠れたからね」
「こ、これは聖なる力!? なんでですか! 聖女さま!? あと、なんで火炎瓶まで・・・」
「んふふ・・・わたし世界を変えるの。だから妖精さんは邪魔しないでね」
「世界を変える? ・・・あなたまさか!!」
「静かにしていてね。じゃないと殺しちゃうから」
「こんなことはやめて下さい! 脅しても、いけないものはいけません!」
「ふーん。そんなこと言うんだ」
いけないだなんて頭ごなしに否定する妖精さんには少しおしおきが必要みたいだ。わたしは手のひらを上に向けて、その上に聖なる力を集め始めた。
シュインシュインと手のひらに白い光が集まっていく。
「あ、あの。聖女さま、それはなんですか? ちょっと見たことない術式なんですけど」
シュインシュイン。
「んふふ。わたし特製の魔法だよ」
「え、ちょっとそれはなんかヤバイ気が」
「起きてすぐのところで悪いけどちょっと眠っててね、妖精さん」
わたしは手のひらに集めた聖なる力を、妖精さんに向けてときはなった。
「や、やめ、ぎゃああぁあああ! 」
妖精さんの叫びが王城の一室に響いた。
ーーー
私は拘束されたまま聖女さまの服のポケットに突っ込まれ、そのまま式典が始まった。拘束のうえさらに喋れないように猿轡のようなものをかまされている。これも聖なる力だと彼女は言っていた。
王城では一番広い部屋にたくさんの貴族と王族と教会関係者が集まっていた。ひたすらに長いテーブルには真っ白のテーブルクロスがかかっていて、その上には見たこともないようなご馳走が並んでいるのだろう。
「では次に、聖女様からお言葉をいただきます」
式典の司会者が言う。
私をポケットに入れた聖女様は階段を登って舞台に立った。よく揺れたからたぶんそうだろう。舞台は周りよりも高いところにあるようだ。舞台にのぼった聖女様に様々な目が集まっていることが目にせずとも分かった。
また、精霊として期待する視線、品定めする視線を感知することができた。しかしそれら全ては欲望に染まっていることも私にはよく分かってしまった。
先ほど司会者が聖女様のお言葉と言ったが、あれは嘘だ。彼女は事前に渡された、ありがたい聖女様のお言葉が書かれた原稿を言うのだ。予定では。
親愛なる紳士淑女の皆様、本日より聖女を務めさせていただくサリーでございます、だったか。昨日彼女が渡された原稿の冒頭だ。そう言うはずだった。
広間を静寂が支配した。皆が聖者の声に耳をすませる。
「親愛なる紳士淑女の皆様、本日はとても良い日になることでしょう。世界が変わる、良い日に」
聖女様が話し始めた。今のところ皆は、違和感無く聞いているが、一部の王城関係者はざわつきはじめた。もしかして、原稿を忘れたのでは、と。
「ええ、そうです。良い日です。と言っても、これから死ななければならないあなた達にとっては都合の悪い日になりそうですけどね」
皆が頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。原稿を読んでないことに気づいていた王城関係者も、ポカンとしている。
「・・・聖女さま? なにを言って・・・」
司会者が問う。
「こういうことですよ」
急に彼女は走り始めた。向かう先はたぶん、王の座る玉座だ。
「お、おい! 止まれぇ!」
野太い声が叫んだ。たぶん兵士だろう。
「きゃあああぁああ!」
甲高い女性の叫び声が聞こえた。
そして、一瞬会場が静まりかえったかと思うと、彼女の服に血がふりかかった。出来の悪い噴水のような水音に、心臓が自ら血を体外に吹き出しているだろうことが分かった。
ビタビタと、こぼれおちる血の持ち主は他でもない。
ワンテンポ遅れて、会場が悲鳴に包まれた。
ぎゃああぁあああ! キャアアアアァ! うわぁああ! やめろ! ひぃいいいいいいいいぃ! ころせ! 逃がすな! うわぁああぁあ!
「んふふ・・・アハハハ・・・アッハッハッハッハッハ!」
ふいに聖女様が笑い出す。
「ほらほら、これがお前らの道理だ! 強いものが好き勝手しても良いっていうなあ!」
喋る間にも彼女は動き続け、逃げ惑う人々や立ち向かう兵士達を聖なる力で殺し続ける。
「やめ! 助けてくれぇ!」
「あんたはそう言って助かるとでも思っているのか? 馬鹿か? 死ねよ!」
また一つ命が消えた。いや、聖女様容赦なさすぎでしょ。
「どうか、命だけは!」
「貴様に命を散らす以外の価値はないわ! 大人しく死んでろ!」
命を散らす以外の価値ないってすっげー悪口じゃないか。この上ない殺し文句じゃん。
「い、いきができ、」
「聖なる力で窒息死しとけクズ!」
聖なる力ってそんなこともできるの!? あれ人の傷を治したり人を守れる盾を作れたりする能力だとおもってたけど、気道もふさげるの?しかも喋れるということは一方通行の弁のような構造で気道を塞いでいるということだ。なにそれ怖すぎる。
「お、俺はなにもしてな」
「この場にいるだけで罪なんだよ! 」
はい。容赦なーい。血も涙もなーい。
「どうか、子供だけは! 助け」
「ひぃいいいぃ!」
「うるせえ! 皆殺しだぁああ!」
やめてよ! 子供は見逃してあげげてよ! 薄々気づいてたけどやっぱり聖女じゃないでしょ! 君。なに? 子供一人で生き残るくらいならこの場で殺してやるとか? 復讐の連鎖を止めるとか? その発想は末恐ろしいわ!
うわああぁぁあー! しにたくないしにたくない死にたくない。助けてくれ! 金ならいくらでもやる! ギャアァァアーーー!
あれ。
聖女ってなんだっけ?
こんな感じだっけ? 鬼のような形相で、返り血で赤黒く染まっても白い歯と目だけはギラギラと光り輝く、たくさんの人を殺し回るものだったっけ?
音声だけでポケットの外ではどんな地獄が広がっているか想像できる。私は激しく彼女に加護を与えたことを後悔した。
こうなるのね。やべーよ。人間。
ーーー
聖女は爪を噛んでいた。多すぎる兵士と魔道士と戦ううちに、聖なる力が切れたのが原因だった。
彼女は今王城の一室に立てこもり、聖なる力が回復するのを待っていた。
「クソ、やっぱり調子にのって使いすぎたか」
いや、あなた誰? 昨日までんふふとかかわいらしく笑ってた子だよね!? 同一人物だよね?
私は聖女のポケットから出され、拘束も一部解除されている。
逃げるなら今のうちだろう。そそくさ。
「おい。待て」
「ひぃ! ななななんでしょう?」
「お前どこに行く気だ? 変な気おこしたらただじゃおかないぞ」
「いえ別に? 隙をついて転移魔法で逃げ出そうとかみじんも考えてないですけど?」
「は? おまえ・・・!」
そう言ったら聖女はゴゴゴと効果音がつきそうなほどに怖い顔でこちらを睨み、そして手をのばしてきた。
ひぃ! 殺される! 逃げる!
私はとっさに妖精の国にワープした。
ーーー
「と、いうのがことの顛末であります。本当にすみません!」
「はあ、まあしょうがないだろう」
と、妖精王はため息まじりにそう言った。
「本当ですか、許してくださるんですか? でしたら・・・」
「堕刑」
「ぎゃああぁあああ! 一番重い罪じゃないですか!」
「当たり前だろう。国を一つお前の失態で消したのだ。ほれ、早くでていきなさい」
「あの、本当にすみませんでした」
「起こってしまったのならしょうがない。しかし刑は受けてもらうぞ」
「本当に、本当に。すみませんでしたー! このとおりです!」
「いや、いくら謝っても変わらないものは変わらないから。そんなに嫌かのう? 堕刑も少しは楽しいと思うぞ」
「いえいえ、そんなことではなく、本当にすみませんでした」
「いやだから何回謝るんじゃ」
押し問答を続ける二人。それをさえぎったのは鈴のように可憐なあの聖女の声だった。
精霊王の動きが止まった。彼女に気付いたのだ。
彼女はいつの間にか精霊王の肩に立っていた。
そして震える精霊王に囁いた。
「力を、よこせ」
精霊王様、本当にすみませんでした。あの時転移魔法で一緒に連れてきてしまいました。
妖精は心なくわらった。
ーーー
革命は終わった。
王族を皆殺しにした聖女は、そのまま新しい国づくりを始めた。
本来ならば彼女のような幼い子供が一人で国を治めるなど不可能だろう。
しかし、それを可能にするほどの絶大な聖なる力が彼女にはあった。
少し国を見てみるとすぐに分かる。この国は今までに類を見ないほど治安の良い国だと。
まず、スラム街が無い。革命のとき、聖女は王族を皆殺しにした後すぐにスラム街を破壊した。いまでは瓦礫の山が残るばかりだ。
だとしたら、スラム街に住んでいた人々はどこに行ったのだろう? 実は、彼らはもう貧民とは呼ばれないほどの生活を行っている。
それというのも、聖女様が聖なる力で雇用も創造したからだ。
具体的には、建設業の需要を高めたり、サービス業を国を挙げて推奨した。前者は破壊という名の創造に過ぎなかったが、後者は申請すればサービス業は国から補助金がでるというものだ。各地から商人がこの国に集まり、市場は栄えるようになった。
これにより、この国では第三次産業が発展し、それに伴い林業や農業、運送業などの需要とその所得も高まっている。多少無理矢理な方法な気もするが、そこは聖なる力で乗り切った。
先ほど申請と言ったが、申請は街のあらゆる場所にある神聖板で行う。それは人の大きさほどの黒い大理石でできており、この国におけるあらゆる手続きをこなすことができる。
これは聖女様が聖なる力で作り上げたものである。よって、申請で嘘をついたものなどはたちまちのうちに死ぬ。
この国の特色でもうひとつ大きなものといえば、聖なるカケラだろう。それは、聖なる力で作られた人の頭ほどの丸く白い飛行物体である。
このボールが為すこと、それは強姦、強盗をするものがいたならばその場で処刑するということだ。聖女様はいつもあなたの悪行をみている、をキャッチコピーに街中に整備された。事実、犯罪は劇的に減少したとともに、おもに元スラム街の人間だが、たくさんの死人もでた。
そして今私は元王城にいた。窓をあけて頬杖をつきながら彼女の作り上げた国を見ていた。
ふいに後ろから鈴のような声で話しかけられる。
「あ、いたいた。妖精さん、こんなところにいたんだ。探したよー」
そして彼女は私の腕に彼女の腕を巻きつけてきた。
「んふふ。国の名前決めたよ」
「へえ。何にするんですか?」
「それはね、君のウトラっていう名前と、私のサリーを組み合わせてストラ大国にすることにしたよ」
「私は何もしてませんけどね」
「いやいや、力をくれたし。それに、結婚するじゃん」
「・・・まあそうですけど」
「んふふー。楽しみだなー結婚式」
あの日、精霊王の力を奪った聖女はその力を使って国を滅ぼし、その日のうちに新しい国家の樹立を宣言した。絶大な聖なる力でほかの権力を握りつぶして。
そして私は、妖精だった私は、人間になった。
堕刑とはそういうものだ。妖精は死ぬことが無いので死刑が効かない。だから重度の犯罪を、犯したときは人間に堕天させるという刑を下す。
「聖なる力もある、君もいる。私、なんでもできる気がする」
聖女、サリーはそう言った。そして輝く瞳で国を見下ろす。
彼女は私がスラム街で助けたときから私に恩義を感じていて、堕天したならば私の婿になれと言ってきたのだ。
かわええ。もう妖精じゃなくていいや。
あれもできるし。
と、こんなことを言うとサリーを崇める聖女教に消されてしまうので、言えないけど。
しかし、彼女は本当に美しい。
「綺麗だ・・・」
無意識に呟いてしまった。
「え? あ、ありがとう」
「照れてる顔もかわいいなあ」
「んふふ。やめてよ」
「かわいい! 好きだ、サリー」
「私もよ、ウトラ」
「結婚しよう!」
「もうしてる・・・んふふ」
あーもう! かわいすぎるだろ!無敵!
「よし、ベッドに行こうか」
キリッとした顔で彼女の腰に手を回す。
「あ? 今起きたばっかだろ。人間のクズかお前は」
「すみませんでした」
もちろん、私は尻にしかれることのほうが多い。
なにはともあれ、この国は今日も平和だ。
読んでくれてありがとうございます! これから小説を投稿してこうと考えている高コーラです。
小説書くのって難しいですね。いがいと書き始めてもなにも文章が浮かんでこないものなんですね! 書き終わってから気付く矛盾もあるし。まあそんな荒い文章でも読んでくれてありがとうございます。
感想、アドバイス受け付けてます! 罵詈雑言でもいいです! どうか僕を罵って下さい(極論)
これからも小説を書くのは大変だと思いますが精進していきます! どうか応援よろしくお願いします!